給特法の廃止・抜本的見直しや業務削減・定数改善に向けた当面の方針を決定/日教組中央委員会

2022年9月16日 調査部

日教組(瀧本司委員長、21万2,000人)は13日、都内でオンライン併用の中央委員会を開催し、 ① 教育政策 ② 教育行財政政策 ③ 労働政策 ④ 福祉・社会保障政策 ⑤ 男女平等政策 ⑥ 組織政策――からなる当面の取り組み方針を確認した。長時間労働是正とワーク・ライフ・バランス実現の取り組みでは、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」の廃止・抜本的見直しや業務削減・定数改善に向けて、働き方改革推進の重要性をアピールするシンポジウムの開催や、保護者や地域、教育関係団体等を巻き込んだ社会的対話の実施による理解促進などの方策を打ち出している。

質と量の拡充をはじめとする良質な公共サービスの実現を

当面の取り組み方針のうち、労働政策では、① 公務員制度改革 ② 教職員等の賃金改善 ③ 長時間労働是正、ワーク・ライフ・バランスを実現する ④ 権利擁立、雇用・労働条件改善―の取り組みを列記している。

具体的には、公務員制度改革について質と量の拡充をはじめとする良質な公共サービスの実現に向けて取り組むほか、2022年の人事院勧告をふまえた公務員給与の取り扱いについても、「十分な交渉・協議、合意にもとづく対応を求める」考え。月例給・一時金の引き上げ等の賃金改善に向け、人事委員会・教育委員会・首長部局との交渉・協議に臨む。

学校の働き方改革実現に向けて社会的対話を推進

長時間労働是正とワーク・ライフ・バランスの実現に関しては、給特法の廃止・抜本的見直しや業務削減・定数改善に向けて、9月に学校の働き方改革推進の重要性をアピールするシンポジウムの開催と「日教組22Web調査」を実施。10月第1週を「日教組労働安全衛生週間」に設定して、長時間労働是正に取り組むことの重要性と現場の課題について職場の点検活動を行う。

単組・支部は、学校の働き方改革の推進と安全衛生管理体制の一層の充実を求めるとともに、公立学校の教職員の勤務時間制度等について学習会・教育委員会交渉に取り組む。単組はさらに、学校の働き方改革の実現に向けて学習会・シンポジウム等を開き、保護者や地域、教育関係団体等を巻き込んだ社会的対話を促進するとしている。

定年引き上げ実施のための環境整備を

雇用・労働条件改善では、23年度からの定年引き上げの実施に向けて、「引き続き関係条例・規則の早期改正」を求めている。あわせて、「長時間労働是正や教職員配置の拡充をはじめ、段階的引上げ期間中の継続的な新規採用、定年前再任用短時間勤務の職の確立、役職定年となった職員の具体的職務のあり方」など、定年引き上げの円滑な実施のための環境整備の取り組みを推進。そのうえで、「定年引上げ期間中は、雇用と年金の確実な接続の観点から、教職員の希望通りの再任用の確実な実施や高齢期の生活を支える賃金・労働条件の改善」を要求する。教職員配置についても、「年間を通じて、欠員が生じないよう文科省・教委に求める。特に、産休・育休・病気休暇等の代替教職員の確実な配置を求める」構え。このほか、臨時・非常勤教職員等の任用と勤務・労働条件のさらなる改善に向けて調査を行うことや、会計年度任用職員の処遇について年収ベースの賃金改善や適切な勤務時間管理などの実現、無期転換ルール適用者の無期転換の促進と雇い止めの防止、職場におけるあらゆるハラスメントの防止などについても明記している。

「給特法の廃止・抜本的な見直しに向けて、国会対策を引き続き強化」(瀧本委員長)

瀧本委員長はあいさつで、文科省が、臨時的任用教員等の確保ができず学校へ配置する教師の数に欠員が生じる「教師不足」の状況を調べた実態調査について、「結果に対して、学校現場からは実態との乖離が大きいとの指摘がある」などと述べたうえで、日教組が連合総研に委託した「日本における教職員の働き方・労働時間の実態に関する調査研究」の中間報告で、① 勤務日の在校等時間の平均が11時間21分で、1日の所定労働時間を4時間22分上回っていること ② 1カ月の労働時間が293時間46分で、123時間16分の時間外勤務になっていること―などの内容に触れ、今後、「文科省に対して業務の大幅削減や教職員の定数改善を求めていく」とともに、「無定量な長時間労働の元凶となっている給特法の廃止・抜本的な見直しに向け、(教職員出身の議員や子どもたちのためにより良い教育の推進をめざして活動する議員の集まりである)日政連国会議員とも連携し国会対策を引き続き強化していく」姿勢を強調した。

なお、中央委員会では、「ディーセント・ワーク、働きがいのある人間らしい仕事の実現をめざす特別決議」と「憲法改悪をゆるさず、平和憲法の理念の実現をめざす特別決議」を採択した。