業種別組合の格差改善の取り組み成果が表れていることを評価/基幹労連中間大会

2022年9月14日 調査部

鉄鋼、造船重機、非鉄関連などの労働組合で組織する基幹労連(神田健一委員長、約27万2,000人)は8、9の両日、広島県広島市でオンライン併用の定期中間大会を開き、向こう1年間の活動方針を決めた。昨年、一昨年の大会はWEB開催で、対面は3年ぶり。大会では今春闘の最終総括である「AP22春季取り組みの評価と課題」も確認した。「評価と課題」は、賃上げの平均獲得額が連合やJCMを上回ったことや規模別で1,000人未満の組合が1,000人以上の組合平均を上回ったことなどをあげて、「ここ数年、業種別組合の格差改善の取り組み成果が表れている」と評価する一方、「総合組合と業種別組合の賃金格差は依然として大きい実態にある」ことも指摘している。

基幹労連は、「働く人への投資で魅力ある労働条件をつくり上げることで、産業・企業の競争力強化との好循環を生み出す」との考え方の下、2006年の労使交渉から2年サイクルの労働条件改善(AP:アクションプラン)で統一要求を掲げる形をとっている。

2022春闘は、2022年度と23年度の2年分について賃上げ交渉する「総合改善年度」で、賃金や年間一時金、退職金、労働時間・休日・休暇、諸割増率、労災通災付加補償、65歳現役社会の実現等の労働条件全般の改善に取り組んだ。

22春闘の回答額は平均2,320円

取り組み方針は賃金改善について、「基幹労連が一体となって、2022年度・2023年度の中で2年分の賃金改善要求を行う」とし、要求額は「2022年度3,500円、2023年度3,500円以上を基本」とした。そのうえで、「具体的には部門・部会のまとまりを重視して要求を行う」ことも明記。産業・企業で業績にバラツキが見られるなか、2022年度の個別年度で部門・部会の判断ができるように柔軟性も持たせた。その結果、組織化した302組合の93.7%にあたる283組合が賃金改善を要求。鉄鋼部門は概ね2年分を要求し、造船・非鉄・建設部門では多くの組合が2022年度分の要求を行った。

回答状況をみると、前進回答を引き出したのは232組合で、回答額の平均は2,320円。(大手の)総合組合は、鉄鋼総合が2022年度3,000円、2023年度2,000円、総合重工は2022年度 1,500円、非鉄総合は1,000円~7,300円の回答で、総合組合の平均は2,370円となった。(大手以外の)業種別組合の平均は2,052円。規模別では、1,000人以上が2,003円だったのに対し、300~999人は2,339円、299人以下は2,357円となっている。

賃上げ額は1,000人未満の組合が1,000人以上の組合平均を上回る

こうした状況について「春季取り組みの評価と課題」は、① 全体として、平均獲得額が連合(1,864円)やJCM(1,820円)を大きく上回るとともに、過去との比較において前進回答率、平均獲得額が向上した ② 業種別組合は、満額回答を含め、総合組合の水準を上回る回答を引き出したことなどにより、平均獲得額が向上した ③ 規模別で1,000人未満の組合が1,000人以上の組合平均を上回った―ことをあげ、「各組合が交渉において、『人への投資』の必要性や企業力強化に向けた主張を展開し、会社の理解をはかることができた成果」などと評価した。そのうえで、「ここ数年、業種別組合の格差改善の取り組み成果が表れてはいるものの、総合組合と業種別組合の賃金格差は依然として大きい実態にある」ことを課題にあげている。

65歳定年制度の導入など72組合が前進回答引き出す

また、「65歳現役社会の実現」に向けては、「60歳以降就労に関する考え方」をふまえ、「まずは18~65歳までの一貫した雇用形態、かつ60歳以前から連続した処遇となる65歳定年の制度導入をめざして」取り組んだ。109組合が要求し、「65歳定年の制度導入」(7組合)に加え、「労使話し合いの場」(20組合)、「65歳定年の制度改善」(7組合)「再雇用制度の改善」(39組合)」等、72組合が前進回答を引き出した。

「評価と課題」は、「既に制度導入している組合に加え、定年年齢を65歳へ延長した組合や『労使話し合いの場』での議論をふまえ、会社提案を受ける組合があるなど、着実に前進がはかられている」と評価。その一方で、「経営状況の悪化や議論不足などによって2021年度からの制度導入が出来なかった組合が多々あるのも事実だ」として、2021年度の60歳到達者から年金支給開始年齢が65歳となっていることをふまえた早急な取り組みの必要性を強調している。

産業・労働政策中期ビジョンの見直しを

基幹労連は、時々の情勢変化に対応した方針とともに10年先を見据えた「産業・労働政策中期ビジョン」を策定しており、今は2017年に策定した「産業・労働政策中期ビジョン(2017年改)」のもとで産別運動を展開している。

大会では、「さまざまな環境条件が変化してきており、見直しの必要性がある」として、ビジョンの「基本的な考え方と見直しに向けた検討の方向性」を報告した。「国際情勢の悪化や、新型コロナウイルス感染症のまん延といった大きな変化に加え、引き続く超少子高齢・労働力人口減少社会のなかで、これまでと同様に製造業を『日本の屋台骨』と位置づけ、われわれ製造業が日本を支えるとの認識のもとで、具体的な検討を行う」考え。今後、プロジェクトを設置して議論を重ね、2023年2月の中央委員会での中間報告を経て、同年9月の定期大会で特別報告を行う。

「勝った時こそ冷静に・厳しく、次につなぐために総括する」(神田委員長)

大会で確認した活動方針は、① 安全衛生活動の取り組み ② 組織強化と組織拡大の取り組み ③ 労働政策の推進 ④ 産業政策、政策・制度、自然災害に関する政策の推進 ⑤ 持続可能な運動の推進と組織の発展―が柱となっている。

組織強化と組織拡大では、基幹労連の組織内候補として擁立した村田きょうこ氏の当選にも言及。「組織力の再強化をはかるため『組織力の再生戦略』にもとづいた活動・教育などに取り組み、第26回参議院議員選挙では『村田きょうこ』の当選を果たすことができた」と明記した。今後は、「次回の参議院議員選挙へつなげるべく今次取り組みの反省と評価をまとめ、アンケート結果もふまえた総括を行っていく」考えだ。

参議院議員選挙への対応について神田委員長は、「個別組織の抱える事情を互いに尊重しつつ、勝つための環境整備を整えながら、労働運動の組織強化活動として挑んできた」ことを強調。今後、「気を引き締め政策の実現に向け邁進していかなければならない」と述べるとともに、「勝った時こそ冷静に・厳しく、次につなぐためにしっかりと総括する。それなくして、3年後のJAMさんとの戦いに、6年後の戦いに勝つことはできない」などと訴えた。