組織体制の現状把握などを運動方針に補強―ものづくり産別労組、JAMの定期大会

2022年8月31日 調査部

金属、機械関連の中小企業の労働組合を多く抱える産別労組、JAM(安河内賢弘会長、36万6,000人)は8月25日、オンライン方式を併用して定期大会を開催した。昨年の定期大会で決定した「2022・2023年度運動方針」にもとづく2023年度活動方針を確認。組織維持が困難となったり、組合としての必要性を感じないことを理由に脱退、解散する単組が後を絶たないことを重要視し、過半数に足していない組合数の把握など、現状の組織体制の把握を強化することなどを補強した。

この1年間で23組合が脱退・離脱

大会で報告された2022年度活動報告によると、2022年度の1年間だけで(7月の執行委員会報告分まで)、解散したり、脱退した組合は23組合に及んだ。そのうち、16組合が組織事情を理由にあげ、4組合は組織運営が困難であることを理由にあげた。前年度の2021年度も21組合の解散・脱退が出ている。こうしたなか、オブ加盟も含めたJAM加盟組合数の合計は、2015年大会での報告以降ずっと、前年比減が続いている。

そのため、2023年度活動方針では、現状の組織体制の把握を強化することを運動方針に加えた。方針は、「2022 年度組織脱退・解散理由として『組織維持困難のため解散』『労働組合の必要性を感じないため解散』が挙げられている。その背景には少数派組合であるが故に、労使の対等性を担保できず、組合不要論に進んでしまっていることが考えられる」と指摘。「特に過半数組合と過半数に達していない組合の数の把握や加盟組合ごとのパート等の未組織労働者数の把握は、少数派組織拡大ターゲットの選定にもつながり、また、過半数要件を満たしていない単組への警鐘を鳴らすことにもつながる」として、確実な現状把握を行うとしている。

組織変革プロジェクト作業委員会の最終報告を確認

組織人員の減少や組織基盤の脆弱化など、組織運営上のさまざまな課題が表出していることから、JAMでは、組織変革プロジェクトを起ち上げ、組合員の参加と対話を増やし、組織を活性化させるための方策について検討している。大会では、同プロジェクトの作業委員会による「最終報告」を提案し、確認した。次年度以降、当面焦点を当てるべき取り組みを5項目に整理して、提起している。

提起したのは、① 参加・対話型運動の構築 ② 組織拡大の強化策 ③ 人材育成④見える化・見せ方 ⑤ 地方JAM財政の再検討――の5つ。

参加・対話型運動の構築では、全体を巻き込んだ体制づくりが不可欠として、特に地協の活動のための環境整備や、オルガナイザーとの連携のあり方など問題点の検証と改善に取り組む必要があるとした。組織拡大の強化策では、新たな組織化手法の開発と体制づくりなど組織拡大のための強化策と実践を早急に展開することを提案。人材育成では、新たな環境変化への対応など単組役員・組合員の人材育成策と研修機会の提供、また、書記局員の人事制度・育成戦略の再検討が急務だと提言した。

JAMでは2025年8月の定期大会までに「『組合員39万人全員がJAMを知っている・理解している』と言ってもらい、身近な組織となること」を当面の目標とする。今後は、この5項目の実践に向けたプロジェクトを発足させ、2023年からアクションを起こしながら「段階的に目標に近づけていく」としている。

2022賃上げでは7年連続で中小の改善額が中堅・大手を上回る

2022年春季生活闘争総括を確認した。賃上げでは、賃金改善額、平均賃上げ額ともに、JAM結成以来の過去最高を記録。また、300人未満の中小労組の賃金改善額が、7年連続で中堅・大手労組(300人以上)を上回ることになった(※最終集計結果は、2022年6月1日付の本メールマガジン記事「『賃金改善額、平均賃上げ額ともに過去最高』とする2022春季生活闘争中間総括を確認/JAMの中央委員会」に詳報)。

総括は、「賃金改善の広がりも回復」「中小労組が健闘」と評価する一方、「依然、賃金水準の規模間格差は大きい」とした。水準にこだわった要求や個別賃金要求の取り組みについては、企業内、産業内の賃金格差を明確にしたことで「賃金改善分の獲得につながった」とした。共闘体制については「運動面の強化については検証していく必要がある」とした。

今後の課題では、個別賃金の取り組みについて、単組サポートなどの継続や賃金全数調査の強化などをあげるとともに、現在の物価上昇局面をふまえ、「2022年度の物価上昇とその後継続することも予想される物価上昇局面の賃金要求について議論する必要がある」と言及した。共闘体制の強化については、要求額を抑えたことで、要求額を超える回答が出されるケースがあったとして、「単組は、あるべき水準をめざす要求について十分議論していく必要がある」と記述した。

参院選では当選を果たしたが「大きな課題を残した」と中間総括

大会ではこのほか、さきの第26回参議院選挙の中間総括を確認。基幹労連が組織内候補として擁立した村田きょうこ氏(立憲民主党、比例)を「JAM代表と位置づけ」て、組織内候補と同様の取り組みで支援した結果、同氏は12万5,340票を得て当選した。中間総括は、村田氏の当選を果たせたものの、得票数が、過去の参議院選挙での組織内候補の得票数よりも少なかったことから、「大きな課題を残した」とした。来年1月に開催する中央委員会で最終総括を確認する予定。

選挙の関連ではまた、安河内会長が、3年後に行われる第27回参議院選挙に向け、来年5月の中央委員会で組織内候補予定者を発表したいと話した。

芳野友子連合会長がJAM副会長の在任中に連合会長となったことから、今大会で副会長を辞職し、了承された。代わりの副会長にはCKD労働組合の上野都砂子氏が選ばれた。