世代を超えて社会の座標軸となるビジョンを策定/日本退職者連合

2022年7月27日 調査部

連合傘下の産業別労働組合の退職者組織でつくる日本退職者連合(人見一夫会長)はこのほど、目指すべき社会の在り方についてのビジョン「次の世代に継承すべき社会とは」をまとめた。結成30周年を迎え、「今一度、労働運動・社会運動の原点に返り、先人たちの取り組みと理念を、転換期の時代状況の中で再定義し、継承することが重要だ」として、「高齢者の歴史的使命として、若者が未来に希望が抱けるような日本社会の行く末を提示した」もの。「今の青年が高齢者となったときにも依然として社会の座標軸であり続けるような、世代を超えて継承されるビジョンとして構想した」としている。

人生の目標を自由に追求する機会が保障される社会を提起

ビジョンは、目指すべき社会の理念として、「すべての個人が自分の生き方を自由に選択でき、人生の目標を自由に追求する機会が保障される社会」を提起。それを実現するために、①自由で民主的な共生社会②差別も不条理もない平等社会③平和で幸福な安心社会④自然と共生した安定社会――の4つの目標を設定して、具体的な考え方を示している。

社会的弱者を積極的に包摂する社会投資が不可欠

「自由で民主的な共生社会」については、「超少子高齢化社会に備えた社会的投資の実現」を掲げ、「従来型の新自由主義的経済政策を継続すれば、格差や貧困の拡大など社会的危機が避けられない。貧困、とりわけ子供の貧困の撲滅と不平等の解消が必要。青年の未来に希望と安心を与えるためにも、高齢者も含めた社会的弱者を積極的に包摂するための、社会への投資が不可欠だ」と強調。そのような社会の実現のためには、「社会的な富が私的な余剰として蓄積されることなく、税を通じて公平・公正に分配されるシステムにしなければならない」としている。

「真のジェンダー平等」と「人間らしい働き方」の実現を

「差別も不条理もない平等社会」では、「ジェンダー平等の実現」と「人間らしい働き方」を具体的目標に掲げ、「真のジェンダー平等に向け、既存の男性中心の社会システムを転換して、社会に組み込まれた性別役割分担を解消する」「労働者が自らの労働生活を決定する権利『時間主権』を獲得することで、あるべき賃金を、あるべき労働時間で稼得できる、人間らしい働き方を実現する」としている。

欠かせない世界的な軍縮の推進と情報主権の確立

「平和で幸福な安心社会」については、「核兵器禁止、世界軍縮の推進」「デジタル化時代の人権と民主主義」を目標として、「世界全体の軍事支出総額は、必要な人道支援費用の約100倍。貧困に終止符を打ち、健康と教育を促進し、地球を保護するための取り組みに必要な支出がないがしろにされている。国連が進めるSDGsの実現も世界的な軍縮なくしては、ただの夢物語に終わってしまう」「デジタル全体主義とも言われる監視社会化を回避するには、個人情報を収集されない権利、利用されない権利を明確にする<情報主権の確立>が欠かせない」としている。

持続可能性にとって重要な地域分散型社会システムへの転換

「自然と共生した安定社会」は、目標に「地球環境に優しい社会システムの構築」「経済成長に依存しない幸福な社会」をあげ、「ヒト・モノ・カネが地域で循環するような地域分散型社会システムへの転換が、社会の持続可能性にとって重要」「持続可能な社会の豊かさは、経済成長を前提とする生産活動に基づくGDPのようなデータではなく、暮らしの質を図る指標で評価されるべき。人間を幸福にしない従来型の社会システムからのパラダイムシフトが求められている」と提起している。