60歳以降の雇用やジェンダー平等、組織拡大などの補強方針を確認/JEC連合定期大会

2022年7月22日 調査部

化学・エネルギー関連産業の組合でつくるJEC連合(酒向清会長、11万6,000人)は7月14、15の両日、横浜市でオンライン併用の定期大会を開き、昨年の大会で決めた「2022~2023年度運動方針」の補強内容を確認した。補強方針は、安全衛生面での具体的な対応や60歳以降の雇用に関する基本方針とジェンダー平等推進計画の浸透・推進、「加入者増」と「減少食い止め」の両面での組織拡大の取り組みなどのポイントを示している。

JEC連合は昨年の定期大会で、「公正」「包摂」「持続可能性」をキーワードに、① すべての働く仲間の立場に立った能動的運動 ②思いを共にする仲間と共に行動し仲間を増やす運動③それぞれの主体性を尊重した多様性のある組織 ④ 国内外の働く仲間と手を結び、社会から信頼される組織 ⑤ 社会と共存し持続可能で健全な産業の発展――の5項目を基本理念とする向こう2年間の運動方針を策定している。今年の大会では、この方針に今後1年間の取り組みについての具体的な補強内容を盛り込んだ。

60歳以降の雇用方針やジェンダー平等の取り組みを補強

すべての働く仲間の立場に立った能動的運動については、「労働組合の社会的役割と責任を常に考え、すべての働く仲間の立場に立った運動を能動的に展開し、自由、平等、公正、包摂的な社会の実現をはかる」として、安心して働き続けられる職場環境の構築や、60歳以降の雇用の安定、働きの価値にふさわしい処遇の実現、職場におけるジェンダー平等、ワーク・ライフ・バランスの取り組みなどを掲げている。

補強方針は、60歳以降の雇用について、今年1月の中央委員会で確認した「基本方針」の浸透・推進をはかるほか、加盟組合の定年延長の取り組み状況を調べる。ジェンダー平等についても、新たに策定した「ジェンダー平等推進計画」を加盟組合に周知。取り組み推進に繋げる機会として、女性のネットワーク形成を目的としたエンパワーメントセミナーやジェンダー平等フォーラムの開催を予定している。

酒向会長はあいさつで、60歳以降の雇用に関する基本方針について「60歳以降の働く仲間が、健康で安全に安心して働き続けることができるよう、働きの価値に見合った処遇の確保を目指し『65歳定年延長』に取り組む」と説明。「方針は策定することが目的ではなく、これにしっかりと魂を入れていくことが重要だ」と述べ、方針の浸透と実現に向けた取り組みの推進を呼びかけた。

「組織拡大には集団的労使関係の構築による『包摂』の役割が」(酒向会長)

共に行動し仲間を増やす運動では、「組織拡大を最重要課題の一つ」と位置付け、「業種別部会・地方連絡会・加盟組合の取り組みをJEC連合全体で支援しながら推進する」方針。具体的には、① 正社員を含む組織内の対象組合員を増やす ② 加盟組合の関連・関係企業の組織化③連合未加盟組織の組織化――等に取り組むとしている。

補強方針は、加盟組合がこうしたターゲットを踏まえた組織拡大の取り組みを進められるよう、事例や手順の共有を進めるほか、組織拡大の観点だけでなく、「『組合員減少の歯止め』についても取り組む」考えを示している。

酒向会長は、「組織拡大は、産別運営の財政基盤をしっかりと強化していく目的と、多くの働く仲間の集団的労使関係の構築による『包摂』の役割がある」ことを指摘したうえで、その意義を全体で共有して取り組みを進めていく姿勢を強調した。

各種調査の一元化や一体感を醸成する合同執行委員会のあり方を検討

方針は、産業別組織としての基本機能強化も提示。定期大会や中央委員会、討論集会等の従来の取り組みについて、アフターコロナを意識した組織運営に努めるほか、現場の組合員が「運動を知る」ことを意識した情報伝達や調査活動の充実などを掲げている。補強方針は、業種別部会ごとに実施している各種調査を「調査局で一元化できるよう検討する」ことを提起。賃金・労働条件実態調査を活用した賃金分析セミナーを開催することも言及している。

主体性を尊重した多様性のある組織に関しては、JEC連合がネットワーク型組織として、① 石油 ② 化学 ③ セメント ④ 医薬化粧品 ⑤ 塗料 ⑥ 中小・一般――の6つの業種別部会を中心とした活動を展開していることを、「それぞれの立場を尊重し積極的に活動することが組織の強みだ」と指摘する一方で、「各業種別部会が、部会の垣根を越え、一体感をもって活動していくことも重要だ」として、加盟組合とのさらなる連携強化や6部会合同執行委員会の充実をはかるとしている。

この点について補強方針は、6部会合同執行委員会の開催時期の見直しや、さらなる一体感の醸成に向けて「新たに業種別部会2部会による合同執行委員会を開催する」ことを挙げている。

ヘルスケア関連の産業政策活動の進化と活動連携の深化を進める

社会から信頼される組織については、「新しい枠組みでの横断的業務の連携も含め、五産別(JEC連合、紙パ連合、フード連合、ゴム連合、セラミックス連合)と情報交換等を行い、連携強化(経営分析講座等)に向け協議を進める」とともに、「化学ならびに医薬化粧品産業の発展に向けた取り組み」も推進。「化学産業における課題解決や産業の発展には、より多くの働く者の声を社会に発信していかなければならない」として、UAゼンセン製造産業部門化学部会との間で、「産業政策を中心とした連携を継続し具体的な活動を進める」ほか、医薬化粧品産業についても、「医薬化粧品関連産業をはじめとするヘルスケア産業における産別横断的な組織」としてUAゼンセンと共同で設立した「ヘルスケア産業プラットフォーム」を通じて、ヘルスケア関連の産業政策実現活動の進化とさらなる活動連携の深化を進めるとしていた。

補強方針は、同プラットフォームに「2022年度から新たに設けた職種に特化した職種別委員会において、職種特有の課題共有や産業政策についての提言や情報交換を実施し、より密接な連携・交流をはかる」としている。

自主福祉活動の理念や内容を伝える取り組みを強化

このほか、運動方針は持続可能で健全な産業の発展についても、政策の実現に向けて「行政・政党・議員・業界団体・他組織への積極的な働きかけをおこなう」ことを強調するとともに、こくみん共済coop(全労済)、労働金庫、労福協などの労働福祉事業団体への事業活動に対する意見反映や活動の推進に取り組む姿勢を示している。

補強方針は、こくみん共済coopやろうきん運動に関する「組合役員の意識・加盟組合の取り組みに温度差があり、若年層の意識の低下も見られる」ことを指摘。「理念や運動内容を伝えるための取り組みを強化していく」ことをポイントにあげている。

賃上げ額は加重平均7,978円(2.52%)、年間一時金5.21カ月に

大会では、「2022春季生活闘争まとめ」も確認した。今春の賃上げ交渉の回答結果(5月末段階)をみると、回答を引き出したのは、昨年同時期より11組合多い141組合。そのうち、賃上げ分を獲得した組合は、前年同時期より28組合増えて79組合になった。回答額は、定期昇給相当分を含めた加重平均で7,978円(2.52%)、賃上げ・ベア額は同2,434円で、定昇込みでは前年を1,106円上回った一方、賃上げ・ベア分は213円下回った。年間一時金は、加重平均で181万1,868円(5.21カ月)で、こちらは額(9万3,846円増)、月数(0.04カ月増)とも昨年を上回っている。

こうした回答状況についてまとめは、賃上げについて「取り巻く情勢の変化(ウクライナ情勢や原材料価格の高騰等)もあり賃上げに慎重な動きもみられたが、昨年と比較すると賃上げ(ベア)を獲得した組合は大幅に増えた」と指摘。「賃上げの流れは継続でき、2023春闘へつながる回答を引き出すことができた」などと評価した。その一方で、「連合集計(6月3日公表)との比較では、賃上げ回答については全体では金額・率とも上回っているが、300人未満では金額・率とも下回っている」ことや、一時金水準が「1,000人以上と99人未満では年間金額で75万程度、夏季一時金金額で30万程度の格差がある」ことに着目。「特に中小組合では依然として続く人手不足による人材確保が難しいことなども報告されている」として、「賃金水準の引き上げの必要性が高まっている」ことを課題にあげている。

役員改選では、酒向会長が再任。白石稔彦事務局長は退任し、新事務局長には寺田正人氏(関西ペイント労組)が新たに選ばれた。