「労組が社会を動かす牽引役を果たした」と評価する2022春季生活闘争中間まとめを確認/連合の中央委員会

2022年6月3日 調査部

連合(芳野友子会長、687万8,000人)は1日、千葉県・浦安でオンライン方式を併用して中央委員会を開催し、2022春季生活闘争の中間まとめを確認した。平均賃金方式での賃上げ率が2.10%と昨年同時期を0.29ポイント上回り、中小組合の賃金改善分などの「賃上げ分」は額・率ともに、集計開始(2015闘争)以降で最高となっている。中間まとめは、「労働組合が社会を動かしていく『けん引役』として一定の役割を果たした」と評価した。

賃金改善分獲得は557組合増加の46.0%に

連合がまとめた2022春季生活闘争の5月6日時点の回答引き出し状況によると、月例賃金改善(定昇維持含む)を要求した4,655組合のうち、妥結済みの組合は昨年同時期よりも219組合多い3,330組合(71.5%)。このうち賃金改善分を獲得したのは昨年同時期よりも557組合多い1,532組合(46.0%)となっている。

平均賃金方式での回答額(定昇相当分込み)の加重平均(3,336組合について集計)は6,160円(2.10%)と、昨年同期を813円(0.29ポイント)上回った。

ベアや賃金改善分などの「賃上げ分」が明確に分かる1,795組合でみた、「賃上げ分」の加重平均は1,848円(0.62%)。300人未満の中小組合(1,058組合)の「賃上げ分」は1,757円(0.71%)となっており、率では中小が全体平均を上回る状況となった。

中長期的視点で「人への投資」と月例賃金にこだわって交渉した結果

こうした回答状況をふまえ、中間まとめは、全体の評価について、「産業による違いはあるものの、多くの組合で賃上げを獲得している。最終集計までには2018年闘争の賃金改善分獲得組合数を超え、2014、2015闘争に次ぐことが見込まれることは評価できる」とし、コロナ禍の影響やロシアのウクライナ侵攻、燃料・資材の高騰などがあったものの、「中長期的視点を持って『人への投資』と月例賃金にこだわり粘り強く交渉した結果であり、労働組合が社会を動かしていく『けん引役』として一定の役割を果たすことができたと受け止める」と総括した。

また中間報告は、今年の経団連の「経営労働政策特別委員会報告」が「人への投資」に一定の理解を示したこともあり、「個別の交渉においても足元および将来の人材の確保・定着が焦点となるなど、問題意識を共有し認識が深まった労使も少なくないと見られる」と分析。「20年以上にわたるデフレ経済から脱却し『働くことを軸とする安心社会』の実現に向け足掛かりをつくるとともに、集団的労使関係の深化・拡大につながる春季生活闘争となった」と今次闘争の特徴点を語った。

さらに、「『人への投資』の必要性などについて労使の認識を深めることができた組合もある。今次闘争を1つにステップとして、中期的に賃金引上げをめざす必要がある」と、今後も継続した賃上げの必要性を強調した。

中小組合の「賃上げ分」は2015年闘争以降で額・率ともに最高

中小組合による格差是正については、「賃上げ分を分離した集計を開始した2015闘争以降で額・率ともに最も高くなったこと、定昇込みの金額の分布でみても上方にシフトしていることなど、全体として健闘したといえる」と総括。

中小の回答結果について芳野会長は、「中小組合における『定昇相当込みの賃上げ』率が2%を超えたのは2018闘争以来、『賃上げ』分は集計を開始した2015闘争以降で最も高いなど、中小組合において『人への投資』と月例賃金にこだわり、賃金水準を意識した主体的な取り組みの成果がでているものと受け止める」と話し、中小組合の健闘をたたえた。

一方、有期・短時間・契約等労働者の賃上げは、時給で加重平均24.54円(昨年同期比2.66円増)、月給で加重平均5,076円・2.33%(同634円増、0.30ポイント増)といずれも昨年同時期をうわまわった。時給の加重平均の賃上げは2.39%(参考値)となったことから、中間まとめは、「有期・短時間・契約等労働者の賃上げは一般組合員を上回り、格差是正に向けて一歩前進した」と評価。引き続き、「働きの価値に見合った賃金水準」をめざして取り組む必要があると強調している。

実質賃金の長期低下を反転させる方針の実現を

今年の中間まとめでは、2021年度後半から物価が上昇していることから、実質賃金確保の点でも言及を行っている。

中間まとめは「2022年度の名目所定内賃金はプラスが見込まれるものの、物価を加味した実質賃金ではマイナスとなる恐れがある」ことから、「継続的な賃上げにより、『実質賃金の長期低下傾向を反転させる』ことをめざした方針の実現をはかる必要がある」とし、実質賃金を確保していくためにも、来年以降も賃上げを続けていくことの必要性を強調した。

来年の闘争に向けた課題としては、情勢の見極めなどをあげ、「2023春季生活闘争をとりまく情勢は、国際情勢やコロナ情勢の動向などによって大きく変化する可能性がある。情勢を冷静に見極めつつ、政労使で中期的・マクロ的な視点から問題意識を共有し、国民経済を安定的な成長軌道に乗せ、デフレ経済に後戻りさせない状況をつくり、定着させていかなければならない」と強調。中央委員会で中間まとめを提案した仁平章総合局長は、2023闘争に向け「構成組織と早めに意見交換したい」と話した。

「規模間格差の発生要因の共通認識を」とJAMが要望

このほか中間まとめは、今次闘争から打ち出した「未来づくり春闘」の継続に向け、「人への投資」とともに、「新しい技術の導入やカーボンニュートラルなど未来への投資および『公正な移行』にも取り組んでいく必要がある」と言及。今次闘争でも取り組んだ「サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配」については、「さらに強化し、中小企業や有期・短時間・契約等で働く者の賃金を『働きの価値に見合った水準』に引き上げることをめざす」とし、そのためには「自らの賃金実態の把握と社会的な比較指標の整備が不可欠」と指摘した。

中間まとめについての討議では、金属・機械の中小組合を多く抱えるJAMから発言があった。今次闘争では「かつてない賃金水準の引き上げという結果を引き出すことができた」ものの、「引き上げ額でみると、やはり中小は大手に劣る」と指摘。来年以降の闘争に向け、取引上の立場から中小が製品価格の値上げを要請しづらいことなど、規模間格差の発生要因の共通認識を連合内で形成する必要性を訴えるとともに、社会全体で価値を認め合う取り組みの継続の重要性を訴えた。また、特に中小が経済の基盤となっている地場において、中小の立場が確立されるような運動の強化を、連合本部に求めた。

このほか中央委員会では、現行で「本部会費」と「地方会費」に分かれている連合会費について、「中央会費」に一本化することなどを内容とする中央会費制度の導入について、作業部会を設置して準備期間をスタートさせ、2026年1月から移行期間に入ることなどを確認した。