中小の賃上げ率が前回集計を上回り2%台へ/連合の第3回回答集計結果

2022年4月8日 調査部

連合(芳野友子会長)は5日、2022春季生活闘争の第3回回答集計結果(1日17時時点)を公表した。平均賃金方式での定期昇給相当込みの賃上げ額の加重平均は6,319円で、賃上げ率は2.11%と2%台を維持。300人未満の賃上げ率は、3月25日に公表した第2回回答集計結果では2%を割っていたが、2.06%に上昇した。

全体・中小とも2%超えは3年ぶり

7,806ある集計組合のうち、4,108組合が月例賃金の改善を要求し、約半数の2,065組合が妥結済み。そのうち賃金改善分を獲得したのは1,058組合で、要求組合に対する獲得割合は51.2%と半数を超える。

2,189組合について集計した平均賃金方式での定昇相当込みの賃上げ額は、加重平均で昨年同時期比856円増の6,319円。率は同0.29ポイント増の2.11%となっている。

組合規模別にみると、「300人未満」が額で昨年同時期比486円増の5,125円で、率が0.22ポイント増の2.06%。「300人以上」は、額が同882円増の6,413円で、率が0.30ポイント増の2.12%となっている。3月末時点の回答状況をあらわす第3回集計で、全体平均でも、また「300人未満」の組合の平均でも、賃上げ率が2%を超えるのは2019年闘争以来、3年ぶりだ。また、「300人未満」の賃上げ率は、第2回集計では1.96%と2割を切っていたが、2%台に反転して上昇した。

中小の賃上げ分は第1回から一貫して全体平均以上

ベアや賃金改善などの「賃上げ分」が明確に分かる組合は1,284組合あり、それらの組合の「賃上げ分」の加重平均は1,632円(0.53%)で、昨年同時期を43円(0.04ポイント)下回った。ただ、「300人未満」では1,781円(0.71%)と昨年同時期を484円(0.19ポイント)上回っている。

また、「300人未満」の「賃上げ分」の額・率は、3月18日に公表した第1回集計の全体平均(1,642円、0.50%)、第2回集計の全体平均(1,615円、0.50%)をともに上回っており、こうした状況は「賃上げ分」の集計を開始した2015闘争以降で初めてだ。

パート・有期の引き上げ率はフルタイム組合員を上回る

パートタイマーや有期契約社員など「有期・短時間労働者・契約等労働者」の賃上げの状況をみると、時給では、加重平均(55万9,453人についての集計)で25.52円で、昨年同時期を3.00円上回っている。月給は、加重平均(同1万1,884人)で5,584円となり、昨年同時期を1,092円上回った。引き上げ率をそれぞれ概算すると2.48%、2.55%となり、一般組合員の平均賃金方式での賃上げ率よりも高い水準となっている。

今回の春季生活闘争から、一時金についてはフルタイム組合員だけでなく、短時間労働者と契約社員それぞれについても集計を行っている。フルタイム組合員の年間月数の加重平均は4.94カ月(159万4,758円)で、昨年同時期を0.24カ月上回る。

短時間労働者は0.78カ月で、額にすると7万1,005円。契約社員は2.27カ月で、額で43万4,414円となっている。

「コロナ禍前に戻る手応え」(芳野会長)

5日に開かれた記者会見で芳野会長は、第3回集計での賃上げ結果から「コロナ禍前の水準に戻る手応えをつかんでいる」と評価した。

会見では、各共闘連絡会議の議長も出席し、各共闘での回答状況を報告した。金属の金子浩晃議長(自動車総連会長)は、平均で約1,700円の賃金改善を獲得しているとして、賃上げが復活した2014年以降では2016年を除いて最も高い水準だと報告した。

化学・食品・製造等の酒向清議長(JEC連合会長)は、定昇相当分込みの賃上げ額の平均が7,094円で、前年よりも約1,200円高い水準だと報告。賃上げ分を獲得した組合数が増えているのが特徴だとし、UAゼンセン、JEC連合、フード連合それぞれで獲得組合数が増えていると述べた。

流通・サービス・金融の松浦昭彦議長(UAゼンセン会長)は、外食産業の労組でも「大手ではしっかりとベアをとったところが出てきている」とし、生保の営業職員をめぐる交渉では、営業支援や賃金改善分を引き出していると報告。観光・レジャーなどをカバーするサービス連合では、3月下旬から回答引き出しが増え始め、ホテルや旅行関連でも昨年を上回る賃上げ水準となっているところが多いと話した。

インフラ・公益の安藤京一議長(情報労連委員長)は、賃上げ交渉では一部に「たいへん厳しい経営環境にある」組合があるなかで、多くで前進しているとし、人材確保の観点から初任給の改善を獲得している組合もあると報告した。

交通・運輸の難波淳介議長(運輸労連委員長)は、私鉄では246組合が統一闘争に参加し、215組合が回答を引き出したと報告。JRではすべてで定昇実施を確保したと話した。タクシーでは一部で賃上げなしとの回答が見られたとし、人材不足の状況にある物流では、大手の賃上げの動きが中小へも波及していると説明した。航空では、需要が減少しているが業務量が減らず、離職者が出ているなか、ANAでは賃金カットが3月31日をもって終了したと報告。JAL、ANAともに一時金は継続交渉となっていると明らかにした。