賃金引き上げ額は前年、前々年を上回る水準/UAゼンセンの3月末の妥結状況

2022年4月8日 調査部

UAゼンセン(松浦昭彦会長)は5日、記者会見を開き、2022労働条件闘争の3月末現在の妥結集約状況を公表した。ベアや賃金改善分などの賃金引き上げの妥結額の単純平均は2,195円と2,000円台に乗せており、前年および前々年の水準を上回っている。また、7年連続で、パートタイム組合員の賃上げ率が正社員を上回っている。

制度昇給含めた賃上げ妥結額は6,623円

集計は1日午前10時時点。正社員(フルタイム組合員)の妥結状況からみると、293組合についてまとめた制度昇給とベア・賃金改善分をあわせた全体の賃上げの妥結額は単純平均で6,623円(2.39%)となっており、前年同時期(5,262円)および前々年同時期(6,546円)を上回った。UAゼンセンによると、前年・前々年と比較できる組合の7割以上が、前年・前々年以上の妥結額となっているという。

ベア・賃金改善分など「賃金引き上げ分」が明確に分かる組合は妥結組合のなかで166組合あり、それらの組合の「賃金引き上げ分」の単純集計をみると2,195円(0.76%)となっており、こちらも前年同時期(1,149円)および前々年同時期(1,862円)を上回った。

すべての部門で制度昇給含めた賃上げ額は前年比増

部門別にみると、繊維、医薬品、化学・エネルギーなどの業種の組合が所属する「製造産業部門」では、127組合についての集計で、制度昇給とベア・賃金改善分をあわせた全体の賃上げの妥結額(単純平均)は6,348円(2.36%)。スーパーマーケットや百貨店、専門店などの組合が所属する「流通部門」では、105組合についての集計で同6,645円(2.36%)で、レジャー・サービスや食品、外食などが所属する「総合サービス部門」では61組合についての集計で同7,159円(2.50%)となった。

部門ごとの妥結額について、前年と比較できる組合でみると、「製造産業部門」では制度昇給とベア・賃金改善分をあわせた全体の賃上げ(単純平均)では前年差1,193円増(0.44ポイント増)。「流通部門」では同239円増(0.06ポイント増)、「総合サービス部門」では同1,124円増(0.35ポイント増)となっており、すべての部門で前年の妥結額を上回っている。「製造産業部門」では、前年同額以上を獲得している組合が、うち111組合と大半を占めている。

ベア・賃金改善分などの「賃金引き上げ分」でみると、「製造産業部門」では1,308円増(0.45ポイント増)、「流通部門」では295円増(0.09ポイント増)、「総合サービス部門」では1,087円増(0.37ポイント増)となっており、こちらもすべての部門で前年の妥結額を上回った。

前年比での増加額は「300人未満」が「300人以上」を上回る

前年と比較できる組合で、制度昇給とベア・賃金改善分をあわせた全体の賃上げの妥結額(単純平均)を組合規模別にみると、「300人以上」が7,014円(2.41%)、「300人未満」が6,133円(2.36%)で、額では300人以上が高いものの、前年差でみると「300人以上」が825円増、「300人未満」859円増と、300人未満のほうが増加幅が大きい。

「賃金引き上げ分」でみると、「300人未満」でも1,977円と、2,000円近い額を獲得している(「300人以上」は2,343円)。

7年連続でパートの賃上げ率が正社員を上回る

UAゼンセンでは、組合員の半数以上を短時間(パートタイム)組合員が占めている。短時間(パートタイム)組合員の妥結状況をみると、163組合の時間当たり賃金の妥結額(制度昇給およびベア・賃金改善分など)の単純平均は26.6円(2.58%)で、前々年(30.3円)は下回ったものの、前年(23.0円)は上回った。

組合員1人あたりの平均賃上げ率をあらわす加重平均でみると、55万6,946人についての集計で25.5円。率にすると2.50%で、正社員の加重平均での賃上げ率2.41%を上回った。パートの賃上げ率が正社員を上回るのはこれで7年連続。

契約社員組合員の妥結状況をみると、32組合の妥結額(制度昇給およびベア・賃金改善分など)の単純平均は5,927円(2.60%)で、前年と比較できる31組合での前年差は1,054円増(0.49ポイント増)となった。

「最初のヤマ場の流れを引き継ぐ」(松浦会長)

松浦会長は会見で、「おおむね最初のヤマ場(3月中旬)の流れを引き継ぎ、昨年を超える形で妥結できている」と評価。「足元は厳しさもあるが、格差是正も進めることができている」などと話した。

会見では各部門からも妥結状況についての報告があり、製造産業部門の吉山秀樹事務局長は「各組合しっかり労使で議論して回答を引き出している」と現状を評価。流通部門の波岸孝典事務局長は「(賃上げの幅が)昨年より若干マイナスとなっているが、継続した賃上げの流れが数字からみてとれる」とコメント。スーパーやホームセンターでは昨年より上積みができているとし、全国展開の家電量販店でも賃上げの継続性を維持できていると話した。総合サービス部門の原田光康事務局長は、「ポストコロナを見据え、人材確保の視点で訴え、人材面の課題を労使で共有できたことが賃上げに結びついた」とこれまでの交渉を振り返った。