小中学校の多くで勤務時間内の授業準備時間が確保できていない/全教調査

2022年3月30日 調査部

全教(全日本教職員組合、宮下直樹委員長、5万7,000人)は3月28日、「変えていこう働き方青年教職員アンケート2021」の結果を公表した。調査結果からは、義務教育現場での授業準備時間が確保できていない状況が目立ったほか、残業や睡眠不足で健康不安を懸念する若年層の教職員の実態が浮かび上がった。ICT機器の導入やオンライン化については、「よりよい授業のためになる」と感じている教職員が多い一方で、活用のあり方や負担などを指摘する声も少なくなかった。

調査は昨年5~7月、青年教職員の声を聴き、働き方の実態を可視化することを目的に実施。35都道府県、969人(男性491人、女性353人、その他125人)からの回答を集約した。回答者の50%が20歳代、45.1%が30歳代となっている。

小中学校で顕著な授業準備時間不足

調査結果によると、勤務時間内の授業準備時間は、全体の3分の1強が30分以下(「ない」と「30分以内」の合計)だった。特に小学校では30分以下が7割超、中学校も約6割となるなど、小中学校での授業準備の時間が確保できていない状況が明らかになっている。

そこで、よりよい授業を準備するにあたり、どのぐらいの時間が必要なのかを尋ねると、1回の授業に最低でも1時間以上を必要とする割合は、小学校で5割弱、中学校・高校・特別支援学校では約8割となった。

常態化する残業や睡眠不足で疲労が蓄積

では、残業時間はどのぐらいあるのか――。平日1日の平均残業時間(部活動、持ち帰り仕事等含む)を聞いたところ、中学校で1日5時間以上が19%、1日3~4時間も54%と突出している。1日3~4時間の残業は小学校(39%)や高校(47%)でも多く、1~2時間の残業をみると、小学校や特別支援学校といった部活動があまりない校種でも約半数を占めている。さらに1日の平均睡眠時間も全体で約7割の教職員が「6時間以下」と回答。全体の約6割は「過労により自分の健康や車の運転に不安を覚えたことがある」と答えている。残業の常態化や睡眠不足で疲労が蓄積し、健康不安につながっている状況がうかがえる結果となっている。

よりよい授業のためになる一方、課題も多いICT機器の導入

調査はICT危機の導入やオンライン化で感じること(複数選択可)についても尋ねている。全ての校種で「よりよい授業のためになる」との回答が最も高く、全体でも57%でトップだった。その一方、「効果的な活用ができない」(34%)や「子どもの自己負担が増える」(19%)などの課題を指摘する声も少なくなかった。

このほか、仕事で困ったと思うこと(同)は、全体では「授業のこと」が34%で最も高く、以下、「働き方」(32%)、「学級づくりや子どもとの関係」(27%)、「保護者との関係、対応」(23%)、「校務分掌」(21%)、「職場の人間関係」(19%)などの順。教職員の労働組合の取り組みに期待すること(同)は、どの校種も「職場環境の改善」が圧倒的に高かった。

労働条件・教育条件の速やかな整備を

調査を実施した全教青年部常任委員会は、今回の結果を受けて「子どもたちの学ぶ権利を保障していく条件整備こそ教育行政の役割だ」と指摘。「青年教職員がいきいきと教育活動にとりくむことができる労働条件と教育条件整備を速やかに行うことを行政に求めていく」などとしている。