鉄鋼大手で3年ぶりの賃金改善実施/基幹労連大手組合のヤマ場回答

2022年3月23日 調査部

基幹労連(神田健一委員長)では、日本製鉄など大手鉄鋼メーカーの各組合が「2022年度3,000円、2023年度2,000円」の賃金改善を獲得した。鉄鋼大手の賃金改善実施は3年ぶり。2022年度について単年度交渉した総合重工の各組合は、揃って1,500円の賃金改善で決着した。

2022年度の賃金改善は3,000円に乗せる

日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼の各大手鉄鋼メーカーでは、組合側の「2022年度3,500円、2023年度3,500円」の賃金改善の要求に対して、経営側は揃って「2022年度3,000円、2023年度2,000円」を回答した。2020年度・2021年度は組合側が賃金改善要求を断念したため、鉄鋼大手での賃金改善実施は3年ぶりのこととなる。

総合重工では、三菱重工、川崎重工、IHI、住友重機、三井E&S(マシナリー)、キャタピラー日本(製造)、日立造船の各労組は「2022年度3,500円」を要求していたが、すべて「2022年度1,500円」で決着した。2021年度は賃金改善を見送ったため、賃金改善の獲得は2年ぶり。

「2022年度3,500円」を要求していた非鉄総合では、三菱マテリアルが「2022年度1,000円」、三井金属が「2022年度1,887円」、DOWAが「2022年度7,300円」という回答結果となった。住友金属鉱山とJX金属では別途協議することになった。

三菱重工の一時金は5.8カ月

一時金については、鉄鋼3社では業績連動方式を採用している。総合重工では、三菱重工が5.80カ月、川崎重工が「業績連動+特別生産協力金6.5万円」、IHIが4.80カ月、住友重機が5.70カ月、三井E&S(マシナリー)が業績連動、キャタピラー日本(製造)が「季節手当などに織り込み済み」、日立造船が「29万円+4カ月」という回答結果となった。非鉄総合では住友金属鉱山だけが交渉方式を採用しており、260万円で折り合った。

「人への投資に経営側が一定の理解」(神田委員長)

これらの回答について神田委員長は、金属労協および連合・金属共闘連絡会議による16日のオンライン会見で「各加盟組合が、要求貫徹に向けて取り組んできた結果だ。また、企業基盤の維持に向けた組合員の協力・努力に報いており、人への投資の必要性について経営側が一定程度の理解を示したものと受け止める」と評価。

また、「回答額の高によらず、DXへの対応、カーボンニュートラルへの挑戦、形を変え激化するグローバル競争という大変革期のなかにあるが、各産業・企業で、幾度となく経験してきた構造改革・社会変革に、労使で力を合わせて今をつくってきた歴史がある。その原動力は働く者の活力と気合いであり、このことを個社の労使があらためて認識し合った結果だ」と語り、人材の確保・定着に向けた意義も強調した。