大手自動車メーカー7労組が賃上げで満額を獲得/自動車総連のヤマ場回答

2022年3月23日 調査部

自動車総連(金子晃浩会長)に加盟する大手自動車メーカー労組では、7組合が賃金引き上げについて要求満額を獲得した。一時金でも要求満額を獲得する組合が多く、金子会長は労使での「深い議論」が結実したと評価した。

トヨタでは社長が2月に満額回答を示唆

トヨタや日産など11の大手自動車メーカー労組に、日本発条労組を加えた「メーカー部会」の12組合では16日、賃上げについて、7組合が要求どおりの回答を経営側から受けた。要求どおりの回答となったのは、トヨタ、日産、本田技研、マツダ、三菱自工、SUBARU、ヤマハ発動機の各労組。

トヨタでは、平均賃金要求について、「事技職・医療職の指導職」で3,400円引き上げ、「業務職の業務職1級」で2,700円引き上げ、「技能職のEX級」で4,480円引き上げなどと、資格ごとに引き上げ要求を設定した(平均賃金の引き上げ額は非公開)。2月23日の第1回労使協議会のなかで早くも、豊田章男社長が組合側に対して「異例ではありますが、賃金・賞与について『会社と組合の間に認識の相違はない』ということを、このタイミングではっきりお伝えしたい」(トヨタイムズより)と述べて、満額回答を示唆。

さらに、3月9日に開かれた第3回労使協議会で、「コロナ禍に半導体不足が重なり、先が見通せない中でも、『自動車産業のため、日本のため、未来のために』、そんな想いで動き続けてくれた組合員の皆さまの頑張りに感謝し、賃金・賞与については、要求通りといたします」(トヨタイムズより)と組合側に正式に伝え、予定していた残り1回の協議会を開くことなく決着した。

日産、本田技研も賃金で満額を獲得

日産では、組合側が、昨年要求よりも1,000円多い「平均賃金改定原資8,000円」を要求していた。本田技研では、経営側が「平均賃金要求に加え人への投資3,000円相当分〔賃金改善分1,500円〕」と回答し、組合側の要求に応えた。

要求どおりとなったこれ以外のメーカー組合の要求額は、マツダが「人への投資の原資として総額7,000円」、三菱自工が「賃金改善分1,000円、SUBARUが「1人平均総額6,400円」で、ヤマハ発動機は組合側が「賃金改善分3,000円+諸手当改善分の原資」を要求して、回答が「賃金改善分1人平均3,000円+諸手当改善分1人平均100円」となった。

満額とはならなかったものの、スズキでは「昇給制度維持分に人への投資を加えた組合員一人平均7,100円」で決着。ダイハツは「総額6,700円」、いすゞは「賃金カーブ維持分+魅力ある職場に向けた人への投資一人平均1,000円相当」、日野は「総額4,250円」、日本発条は「総額6,700円」で交渉を終えた。

一時金で満額獲得は10組合

一時金の回答状況をみると、12組合中、10組合が要求満額を獲得。満額を獲得したのはトヨタ(6.9カ月)、日産(5.2カ月)、本田技研(6.0カ月)、マツダ(5.0カ月+3万円、3万円の配分は別途協議)、三菱自工(5.0カ月)、スズキ(5.4カ月)など。こうした回答状況を踏まえて、自動車総連は同日、「要求・回答の内容は各単組の状況により異なるものの、各単組の踏ん張りにより、それぞれにとっての『最大限の回答』を引き出すことができた」との談話を発表した。

先行決着のプラス波及も期待

16日に本部で会見した金子会長は、第1回目の交渉・協議が行われた2月後半の時点で「(メーカー組合の交渉では)総じて『人への投資』の必要性について、かなり労使の認識を共有することができた」と振り返るとともに、「例年以上に自社の取り巻く課題について労使で深い議論ができた」とコメント。そうした交渉・協議の結実が「今日時点での回答につながった」と評価した。

回答指定日前の決着や満額回答が相次ぐという異例の展開については、「後に交渉が続く仲間にも風を吹かしたい。自動車総連としてはプラスに波及してほしいと期待していた」と語った。