保健所と自治体病院の「第5波」時の職場実態を調査/自治労連

2022年3月11日 調査部

自治労連(桜井眞吾委員長、12万9,000人)は2月28日、昨夏に発生した新型コロナウイルス感染症「第5波」の際の保健所と自治体病院の職場実態を聞いた調査の中間結果を発表した。保健所調査では、「人員が全く足りない」との回答が9割超を占め、すべての職員がストレスを感じながら働いていた。一方、自治体病院の職場では、患者からのクレームと感染不安が強いストレスになっていることなどがわかった。

92%で「人員が全く足りない」/保健所調査

全国29の保健所(支所含む)からの回答をまとめた「保健所職場実態調査」の中間結果をみると、通常時の保健所の人員について、「全く足りない」(56.0%)と「少し足りない」(36.0%)を合わせて92.0%が「足りない」と答えていた。これを昨年7~9月の新型コロナウイルス感染症の「第5波」のピーク時にどうだったか尋ねると、「全く足りない」が92.0%、「少し足りない」が8.0%となり、すべての保健所が人員不足を指摘している。

そこで人員不足を「どのように補った」(複数回答)を聞くと、「他部署からの応援」が86.2%でトップ。以下、「派遣」(75.9%)、「業務委託」(58.6%)が続き、新規に人を採用したのは17.2%(「正規」13.8%、「非正規」3.4%)にとどまった。

また、時間外労働については、過労死ラインの80時間を超えて時間外労働をしている人が、回答のあった22保健所で238人存在。昨年8月の常勤保健師の未払い残業も、「大幅にあった」(8.7%)と「少しあった」(56.5%)を合わせて65.2%が行っていた。

こうした状況について自治労連は、「『第1波』から保健所の人員増の必要性を訴えてきたが、何ら改善されていない」としたうえで、「人員を増やさずに一時の対応で済まそうとした自治体の姿勢が『第5波』での危機を深刻にしたことがうかがえる」などと指摘している。

すべての職員がストレスを感じながら働く

一方、調査は職員の仕事上の精神的ストレスに関しても尋ねている。それによると、「第5波」でのストレスについては、「強く感じた」が56.3%、「まあまあ感じた」は37.5%で、「感じていない」はゼロ。特にストレスを感じたことは、「長時間過重労働」(81.3%)、「仕事の量」(68.8%)、「住民などからのクレーム」(56.3%)、「仕事の質」(43.8%)などの順で多くなっている。

今後の対策では、「人員の拡充」(87.5%)が最も高く、次いで「業務量の削減」(68.8%)、「労働時間の短縮」(50.0%)、「人材育成」(31.1%)が続く。人員拡充を求める声が大きい結果を踏まえ、自治労連では「公的責任で住民のいのちを守る体制の拡充が必要であることが浮き彫りになった」と指摘し、「経験、スキルのある人材を日頃から育成し、緊急時に対応できる抜本的な改善が急務だ」などと訴えている。

9割弱で人員不足を「他部署からの応援」で補う/自治体病院調査

全国33の自治体病院の回答をまとめた「自治体病院職場実態調査」の中間結果をみると、通常時の病院の人員について、「全く足りない」(15.6%)と「少し足りない」(43.8%)を合わせて「足りない」との回答は59.4%だった。それが「第5波」では「全く足りない」が18.8%、「少し足りない」が46.9%と、いずれも上昇した。

人員不足を「どのように補った」(複数回答)に関しては、「他部署からの応援」が87.9%で突出して高く、新規に人を採用したのは30.4%(「正規」「非正規」ともに15.2%)だった。

最高夜勤回数は「16回」で、2日に1回以上の夜勤があった病院もみられた。未払い残業も「大幅にあった」(9.1%)と「少しあった」(42.4%)をあわせて、約5割の病院で行われていた。また、調査では、人員不足と夜勤回数の増加、未払い残業、感染拡大の不安などから2割の病院で離職者が増えていることもわかったという。

患者からのクレームと感染不安に強いストレスを

一方、仕事上の精神的ストレスを感じたかの問いには、「強く感じた」が54.8%、「まあまあ感じた」は35.5%で、「感じていない」は保健所調査と同様にゼロ回答。強くストレスを感じたこと(3つ選択)は、「患者などからのクレーム」(78.8%)と「感染に対する不安」(60.6%)が高かった。差別的対応の有無では、半数以上の病院が「ある」と回答。自由記述欄には、医療従事者の家族の仕事にも影響があったことが記されていたという。

今後の必要な対策は、「人員の拡充」(57.6%)が一番高く、二番目は「手当の拡充」(36.4%)だった。

両調査は、「第5波」における保健所・病院ごとの職場実態を把握する目的で、昨年12月1日~今年1月31日にかけて実施した。