賃金改善分の平均要求額は昨年を上回る3,295円/金属労協加盟組合の要求状況

2022年3月9日 調査部

金属労協(JCM、金子晃浩議長、約202万人)は3日、今次闘争における加盟組合の要求状況を公表した。集中回答日に向けて回答引き出しを目指す大手組合の賃金改善分の要求額は3,295円で、昨年の最終集計を800円以上上回っている。JCM全体でみると、規模の小さい組合ほど高い要求額となっており、格差是正に向けた取り組みが継続している様子がうかがえる。

2020年の最終集計(3,118)も上回る

大手労組で構成し、交渉の牽引役となる「集計対象組合」(54組合)の3月1日現在の要求状況をみると、すでに賃金改善分の要求を行ったのは52組合で、同分の要求額の平均は3,295円となった。昨年の最終集計(2,452円)を800円以上上回っており、2020年の最終集計(3,118円)もわずかに上回った。

JCM全体の66.8%の組合がすでに要求を提出

地方の地場相場を牽引する役割を果たす中堅労組も含めた「速報対象組合」(143組合)の状況をみると、131組合が賃金についての要求を行っており、うち128組合が賃金改善分の要求を行っている。賃金改善分の要求を行った組合数は昨年の最終集計より22組合多いものの、2020年よりは7組合少ない。

JCM全体での状況をみると、3,150ある加盟組合のうち、2,103組合(66.8%)が賃金についての要求を行っており、うち、賃金要求組合の72.4%にあたる1,522組合が賃金改善分を要求。賃金改善分の要求額の平均は3,295円で、昨年同時期の2,933円を362円上回った。

「299人以下」の要求額が3,505円で最も高い

組合規模別にみると、「1,000人以上」が2,847円、「300~999人」が2,948円、「299人以下」が3,505円となっており、規模が小さい組合ほど高い要求額となっている。各要求額を昨年同時期と比べると、すべての規模で昨年を上回った。

こうした要求状況について、3日にオンライン会見を行った金子議長(自動車総連会長)は、「格差是正に積極的に取り組む動きが継続している」と評価。一方、足元の経済状況では、燃料費など物価の上昇などが懸念されるが、「ここで賃金上昇が伴わなければスタグフレーションも懸念される」とし、「人への投資に徹底的にこだわり、経営側には確かな成果配分を求めていきたい」などと話した。

JAMの大手では1万円を超える要求も

JCMがあわせて公表した各産別の大手組合の要求状況をみると、JAMの大手組合では、オークマが要求全体で1万2,308円(賃金構造維持分6,308円+賃上げ6,000円)、島津が同1万2,540円(賃金構造維持分5,610円+賃上げ6,930円)、NTNが賃上げ6,000円(賃金構造維持分除く、非正規社員の是正含む)、ヤンマーが賃上げ要求全体で1万,1087円(賃金構造維持分5,087円+賃上げ6,000円)などとなっている。

基幹労連では、日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼の鉄鋼総合の各組合が賃金構造維持分のほかに「2022年度3,500円、2023年度3,500円」を要求。三菱重工、川崎重工、IHIなどの総合重工の各組合は揃って「2022年度3,500円」を要求した。三菱マテリアルなど非鉄の大手組合も揃って「2022年度3,500円」を求めた。

全電線の大手組合では、古河電工と住友電工が賃金構造維持分のほかに賃上げ3,000円を要求。フジクラは同3,556円を要求した。

JCMは、大手の先行組合が一斉に回答を引き出す集中回答日について、今年は3月16日(水)に設定している。