製造業の回復などにより要求額は昨年を上回る/UAゼンセン先行組合の要求状況

2022年3月2日 調査部

[労使]

UAゼンセン(松浦昭彦会長、181万9,000人)では、2月24日9時時点で、238組合が正社員組合員の賃上げ要求を提出した。制度昇給を含めた賃上げ要求額の平均は8,855円で、昨年と比較できる組合で昨年と比べると、昨年を730円程度上回っている。製造産業部門の組合で要求水準が大きく回復した。パートタイム組合員の要求額の平均は37円。比較可能な組合で前年と比べると2円アップとなっている。

ベアなど「賃金引き上げ分」の昨年比は784円増

2月24日9時時点で、正社員(フルタイム)組合員について要求提出を終えたのは、今次闘争に参加している1,793組合のうちの238組合。これらの組合の「制度昇給」と、ベアなどの「賃金引き上げ分」を合わせた賃上げ全体の要求額の単純平均は8,855円(3.25%)で、うち、賃金体系維持分が明確な134組合の「賃金引き上げ分」の単純平均は4,079円(1.41%)となっている。

昨年と比較できる234組合の賃上げ全体の要求額の単純平均は8,883円で、昨年と比べると731円高い。率は3.26%で、前年を0.25ポイント上回った。

うち、賃金体系維持分が明確な130組合の「賃金引き上げ分」の単純平均は4,080円で、昨年より784円高くなっている。率は1.41%で、昨年を0.26ポイント上回っている。

全体ではまだ2020年闘争に及ばない状況

昨年の闘争はコロナ禍の真っ只中の状況にあったため、234組合について、参考までに2020年闘争の要求状況とも比較してみると、賃上げ全体の要求額では163円のマイナスで、率では0.11ポイントのマイナスと、2020年闘争の水準にはやや及ばない状況となっている。

賃金体系維持分が明確な組合の「賃金引き上げ分」ではマイナス40円で、率ではマイナス0.02ポイントとなっている。

製造産業部門で要求水準が昨年よりも大幅増

UAゼンセンでは、化学・医薬、繊維、衣料などの製造業労組で構成する「製造産業部門」、スーパーマーケット、百貨店、ドラッグストア、専門店などの労組で構成する「流通部門」、食品、外食、生活サービス、ホテル・レジャーなどの労組で構成する「総合サービス部門」の3部門に分かれて闘争を展開する。

昨年と比較できる組合で部門別にみると、製造産業部門(72組合)の賃上げ全体の要求額の単純平均は8,444円(3.29%)で、昨年比1,537円増(0.56ポイント増)と昨年から大きく回復した。流通部門(126組合)は9,094円(3.20%)と219円増(0.05ポイント増)。総合サービス部門(36組合)は9,024円(3.41%)と910円増(0.29ポイント増)となった。

賃金体系維持分が明確な組合の「賃金引き上げ分」については、製造産業部門(33組合)が3,538円(1.26%)で、昨年比1,684円増(0.56ポイント増)。流通部門(80組合)が4,402円(1.51%)で、同331円増(0.11ポイント増)、総合サービス部門(17組合)は3,616円(1.23%)で同1,170円増(0.40ポイント増)となっている。

パート組合員の引き上げ率は正社員を約0.4ポイント上回る

UAゼンセンに加盟する組合員の約60%は、短時間(パートタイム)組合員が占める。2月24日9時時点で短時間(パートタイム)組合員の要求額を確認できる100組合でみた、賃上げ全体の要求額の単純平均は37.0円で、率では3.69%。加重平均でみると(50万7,193人)、同額は40.6円で、率は4.00%となっている。引き上げ率は正社員組合員の引き上げ率(3.25%)よりも0.44ポイント高い水準となっている。

昨年と比較できる96組合について、昨年の要求状況と比較すると、賃上げ全体の要求額の単純平均は37.3円で昨年を2円上回った。率は3.74%で、前年を0.14ポイント上回っている。加重平均(49万8,418人)では、要求額は40.8円で2.5円増。率は4.02%で0.17ポイント増となっている。

参考までに2020年闘争時と比べると、単純平均では、額は3.3円下回り、率は0.44ポイント下回っている。加重平均では、額で3.4円下回り、率で0.44ポイント下回った。

賃金以外では労働時間短縮やカスハラなどで改善要求

賃金以外の労働条件改善の要求では、75組合が労働時間改善を要求。労働時間短縮を要求した51組合の平均短縮要求時間数は24.7時間減となっている。44組合が勤務間インターバル規制や連続勤務日の上限規制などを要求している。

定年制度では41組合が65歳定年制を要求し、10組合が70歳までの就業確保措置を要求した。20組合がハラスメント対策を要求し、うち12組合はカスタマーハラスメント対策を含む要求を行っている。外国人の就業環境の整備に向けた就業規則などの多言語化を2組合が要求。均等・処遇の取り組みについては、全組合が正社員との格差の点検に取り組んでおり、一時金や退職金、家族手当などについて要求している組合がある。

今年は化合繊の各組合は1%を統一要求

3月3日、UAゼンセンは記者会見を開き、各部門の要求状況についても報告した。製造産業部門では、昨年と同程度の743組合が闘争に参加し、要求・交渉を行う。すでに要求を終えた組合のベアなどの「賃金引き上げ分」はおおむね、2,700円~3,500円という状況だという。昨年は、業種別に共闘を組んで交渉する、旭化成や東レの労組など化合繊の組合が統一ベア要求を見送ったが、今年は揃って1%の要求を行っていることなどが、要求額の平均がアップしている要因だという。

流通部門では、要求額の全体的な傾向は昨年とほぼ同様だが、業績が好調な一定規模以上のスーパーマーケットでは8割を超える組合が昨年を超える要求を行っているという。また、家電の組合では、すべての組合で、部門で決められた基準以上の要求を組み立てており、賃金全体の要求額が1万円を超える状況となっている。

総合サービス部門では、医療・介護・福祉関連の組合では昨年よりも要求額をアップさせた組合もみられるが、コロナ禍により依然として業績が厳しい組合もあり、全体的には2020年の水準までは回復していないとの報告があった。