保健所等で働く組合員の2割が過労死ラインの時間外労働を経験/自治労調査

2022年2月25日 調査部

[労使]

保健所等で働く組合員の2割が過労死ラインの時間外労働を経験している――全日本自治団体労働組合(自治労、川本淳委員長、75万2,000人)の専門組織として、病院、保健所などで働く組合員で構成されている衛生医療評議会は、「コロナ禍における保健所等職員の意識・影響調査結果」を発表。保健所や保健センター等で働く職員の労働環境やメンタルヘルスの実態を明らかにした。集計されたデータからは、新型コロナウイルス感染症に関する対応業務や時間外労働が増加し、組合員のメンタルヘルスに影響を及ぼしていることがうかがえる。自治労は、専門職だけでなく、事務職を含めた職場全体の人員や定数を増やすことが不可欠だと指摘している。

感染拡大のピークと連動して時間外労働も増加

調査は、自治労加盟の保健衛生施設(保健所、保健センター、地方衛生研究所等)で働く組合員を対象に、2021年11月24日~2022年1月21日にWEBアンケートを活用して実施。40都道府県、1,771人から回答を得た。

2021年1月から12月のうち、時間外労働が最も多かった月の時間外労働時間をみると、月40時間未満の割合が51%と約半数だった。その一方で、月40時間以上80時間未満の割合が26%となったほか、23%の組合員は過労死ラインと言われる月80時間を超える時間外労働を経験しており、月200時間を超える組合員も1%みられた。

また、同期間で時間外労働が最も多かった月がいつかを尋ねると、感染拡大のピークと連動して時間外労働が増加した傾向がみられ、特に第5波の感染拡大のピークとなった8月の回答割合が最も高くなった。この傾向を踏まえて、自治労の平山春樹・衛生医療局長は、同期間後の2022年1月から続く第6波について、「第5波を超えるような時間外労働が行われているのではないか」と推測している。

なお、コロナ感染拡大前後で増加した業務(3つまで選択)をみると、「電話対応」が最も増加。そのほか、「事務作業」、「積極的疫学的調査」、「ワクチン関連業務」、「関係機関との連絡調整業務」、「検査業務」、「相談記録」なども増加している。

3割以上がこの1年間でうつ的症状を経験

コロナ感染拡大の前後で知人や友人と過ごす時間に変化はあったかをみると、80%の組合員が「減った」と回答。「やや減った」(13%)とあわせて、9割超が「減った」と答えている。「減った」とする回答を性・年代別にみると、全体では男性が73%、女性が83%で、女性のほうが知人・友人と過ごす時間が減少したと感じており、そのうち最も割合が高い40代女性では、87%が減少したと感じている。

この1年間でうつ的症状があったかをみると、35.5%が「うつ的症状あり」と回答している。コロナ患者への対応の有無別でみると、コロナ患者への「対応有り」では37.0%、「対応無し」では33.4%と、大きな差はみられなかった。平山局長は「現場からは、コロナ患者に直接対応していなくても、クレームを受ける、電話対応や事務作業等で時間外労働が増加する、休暇が取れずリフレッシュできないといった状況を聞くので、そうしたことがストレスの原因になっているのではないか」と指摘した。

時間外労働とうつ的症状の関係をみると、「うつ的症状あり」の回答割合は、時間外労働が40時間未満の組合員で27%、40時間以上80時間未満の組合員で38%。一方、80時間以上の組合員では半数以上の52%が「うつ的症状あり」と回答しており、時間外労働が増加するほど、メンタルヘルスに不調を感じる組合員が増加する傾向があることがうかがえる。

専門職に限らず保健所全体の人員増加を求める

平山局長は、今回の調査結果を受けて「労働環境の早急な改善が必要」だと指摘。保健所の機能強化に向けて、「専門職だけでなく、事務職を含めた職場全体の人員増加が不可欠である」と訴えた。

人員増加に向けた課題としては、自治体の定数条例により職員の枠が決められている点について、この定数を増やしていくことや、採用後の教育・トレーニングの実施により教育する側にも一定の業務負担が発生することから、計画的に人員を増やすことなどが求められるとしている。