トヨタ労組は職種・職位に応じて賃上げ要求額を設定 電機の中闘組合は3,000円の改善を要求/自動車、電機の大手労組が要求提出

2022年2月25日 調査部

[労使]

トヨタ自動車労働組合など自動車総連に加盟する大手自動車メーカーの11労組は16日、賃上げなどに関する要求書を一斉に経営側に提出した。また、電機連合で産別統一闘争を展開する中央闘争組合は、17日までに経営側への要求提出を終えた。トヨタ労組は職種や職位に応じて12種類の資格ごとに、平均賃金での引き上げ要求額を設定した。パナソニック労連など電機連合の中闘組合は統一して、「開発・設計職基幹労働者」の個別ポイントで3,000円の水準改善を求めている。

トヨタ、中堅技能職の個別賃金では39万4,230円を目指す

自動車総連(金子晃浩会長)に加盟する各大手メーカー労組の要求内容をみると、トヨタ労組は、個別賃金水準では若手技能職で31万6,450円、中堅技能職で39万4,230円を掲げた。産別方針で示されている個別賃金の要求ポイントはこの2銘柄だけだが、独自に、「技能職EX級」という班長クラスのポイントでも水準を掲げ、42万1,330円への到達を求めた。

平均賃金要求では、今年から新たに、職種や職位に応じて、12種類の資格ごとに引き上げ額を設定する方式に変更。すべての具体的な引き上げ額は公表されていないが、例えば、事技職・医務職の指導職で3,400円、業務職の業務職1級で2,700円、技能職のEX級で4,480円などとなっている。

インターネット上でトヨタが情報発信する『トヨタイムズ』によると、西野勝義・トヨタ労組委員長は16日の申し入れで、今年の要求方式について「組合員一人ひとりの賃上げ要求額がいくらかをわかりやすい形で示すことで、個々の能力を最大限引き出しつつ、社会全体の格差是正に少しでも貢献していくことが今回の要求書式の変更の狙いだ」と説明した。

日産労組の要求額は昨年要求を1,000円上回る

日産労組は、平均賃金要求では昨年要求よりも1,000円多い「平均賃金改定原資8,000円」を掲げた。本田技研労組は個別賃金水準では、若手技能職で30万1,350円、中堅技能職で37万4,700円への到達を求めた。平均賃金要求では、「平均賃金要求に加え、人への投資1,500円(1人平均総額3,000円相当分)」を掲げた。

マツダ労組は平均賃金要求では、「人への投資の原資として総額7,000円」を要求。三菱自工労組は個別賃金水準では若手技能職で27万1,300円、中堅技能職で32万9,100円への到達を求め、平均賃金要求は「賃金改善分1,000円」とした。

このほかのメーカー労組の平均賃金要求をみると、スズキ労組が賃金制度維持(昇給制度維持)に人への投資を加えた賃金引き上げ総額として「組合員1人平均7,500円」、SUBARU労組が「1人平均総額6,400円相当」、ダイハツ労組が「人への投資として7,700円」、いすゞ労組が「賃金カーブ維持分+魅力ある職場に向けた人への投資1人平均1,500円」、日野労組が「賃金課題解決原資組合員一人あたり7,500円」、ヤマハ発動機労組が「賃金改善分3,000円+諸手当改善分の原資」を求めている。

ダイハツ労組を除くすべての組合が一時金要求を増額

一時金(年間月数)の要求内容をみると、トヨタ労組が昨年要求比0.9カ月増の6.9カ月、日産労組は同0.2カ月増の5.2カ月、本田技研労組が同0.7カ月増の「5.0+1.0カ月」、マツダ労組が「5.0カ月+3万円」(昨年要求は4.8カ月+3万円)、三菱自工労組が昨年要求比0.4カ月増の5.0カ月、スズキ労組が同0.1カ月増の5.4カ月などとなっており、ダイハツ労組(5.5カ月)以外は昨年要求を上回る水準を求めた。

自動車総連の方針では、春の労使交渉・協議期間に、働き方の改善についても経営側と協議するよう指示している。トヨタ労組では、ダイバーシティを考慮した制度・風土づくり(男性育休取得・不妊治療休暇など)などについて話し合い、日産労組では総労働時間短縮の取り組みや業務負荷の平準化・適正化などに関する協議を求める。本田技研労組では、リモートワークや多様性に関連する制度についてこれまでの議論を継続する。

各メーカー労組は次の交渉を3月2日(水)に予定している。

今年の中闘組合は12労組

電機連合は1月27日に「2022年総合労働条件改善闘争方針」を決定。スト権を立てて統一的に要求・交渉、回答引き出しに取り組む「産別統一闘争」を展開する中央闘争組合は17日までに、経営側に要求書を提出した。

今次交渉での中央闘争組合は、パナソニックグループ労連、日立グループ労連、全富士通労連、東芝グループ連合、三菱電機労連、NECグループ連合、シャープグループ労連、富士電機グループ連合、村田製作所グループ労連、OKIグループ連合、安川グループユニオン、明電舎――の12労組となっている。昨年、中闘組合だったパイオニア労連は、今年は拡大中闘組合に回る。

電機連合の方針では、今年も、産別統一闘争の対象とする取り組み項目を、「開発・設計職基幹労働者賃金(基本賃金)の水準引き上げ」、企業内最低賃金に相当する「産業別最低賃金(18歳見合い)」、「一時金」の3つに設定。

「開発・設計職基幹労働者賃金(基本賃金)の水準引き上げ」の要求基準は、「水準改善額(引き上げ額):3,000円以上」とし、昨年から改善額を1,000円引き上げた。中闘組合企業の営業利益(12社合計)の2021年度見通しが、新型コロナウイルス感染症流行前の2019年度の水準を超えるレベルにあることなどを踏まえた。

産業別最低賃金では現行水準を4,000円引き上げる要求

「産業別最低賃金(18歳見合い)」については、「18歳見合いの水準として16万8,500円に改善」とし、現行水準から4,000円引き上げることを求める。引き上げ要求幅は、昨年要求(2,000円引き上げ)と比べると2,000円多いが、電機連合ではその理由として、地域別最低賃金の引き上げが続いていることをあげる。

一時金については「平均で年間5カ月分を中心とし、『産別ミニマム基準』として年間4カ月分を確保する」とした。

今年は、2年に1度の労働協約の改定交渉年にあたる。労働協約の取り組み項目では、「男性の育児参画の促進につながる環境整備」などが柱。男性の育休取得については、特に出生後8週間は、育児目的休暇などを含め、休むことができる環境の整備に取り組む。同期間で休業・休暇を取得する際の所得については100%の保障を求める。

3月3日までにスト権を確立

2月21日には第1回中央闘争委員会を開催。神保政史・中央闘争委員長(電機連合委員長)は、今後の交渉に向けた方針を加盟組合に示した。中闘組合は3月3日(水)までにスト権を確立し、同日までにスト指令権を中闘委員会に委譲することなどを確認した。