公共サービスに従事する人員の確保や格差是正の改善要求を/自治労中央委員会

2022年2月4日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、75万2,000人)は1月27、28の両日、都内でオンライン形式による中央委員会を開き、「2022春闘方針」を決めた。方針は、春闘を「1年のたたかいのスタート」とすることを明確化。「参加する春闘」を掲げ、重点課題として、 ① 賃金改善 ② 会計年度任用職員の処遇改善 ③ 定年引き上げにむけた取り組み ④ 職場からの働き方改革――を提示している。川本委員長は「コロナ禍だからこそ、労働組合の力をしっかり発揮して、その成果を広く波及させていくことが、労働組合への社会的要請、責任である」として、すべての組合が月例賃金の改善にこだわり、賃上げや格差是正の取り組みを強力に推し進める必要性を訴えた。

「1年のたたかいのスタートは春闘から」として取り組みを強化

地方自治体の職員の賃金改定は、人事院勧告を踏まえ、都道府県等に置かれている人事委員会の勧告などをもとに年度後半期に決められる。2021年は人事院が8月10日に、官民格差に基づき、一時金の支給額を0.15カ月引き下げる勧告を実施。その後、国の人勧取り扱いに関する閣議決定が遅れたことなどによって、12月一時金から引き下げるとした勧告どおりの給与法改正が間に合わないことから、国家公務員においては、一時金の引き下げ分の調整を2022年度に行うことが決定した。また、地方公務員についても、当初は人事委員会勧告にて、すべての都道府県での一時金の引き下げが勧告されていたが、一部で12月一時金での調整を行うことを除いて、多くの自治体では2022年度での引き下げ対応となる見込みとなった。

自治労では、「1年のたたかいのスタートは春闘から」として、傘下の単組に対し、自治労の方針に基づき、遅くとも2月末までに、全単組で要求書を当局側に提出することを求めている。ただし、実際には春闘時期に交渉が決着しないことも多く、人事院勧告や各団体の人事委員会勧告の内容が明らかになった秋以降、賃金確定闘争で再び要求提出を行い、最終的な回答引き出しに向けて当局側との交渉を追い込むことになる。

川本委員長はあいさつで、「コロナ禍で奮闘する組合員の期待に応えるためには、一時金の支給月数を維持することがベストだが、引き下げせざるを得ない場合は必ず賃金や労働条件改善、人員確保で取り返すという強い意識を持って、人勧確定期を見据えた春闘交渉に挑んで欲しい」と訴えた。

目標とする賃金の到達水準を確認し運用改善を要求する

方針は、 ① 賃金改善 ② 会計年度任用職員の処遇改善 ③ 定年引き上げにむけた取り組み ④ 職場からの働き方改革――を2022春闘の賃金・労働条件改善の主要課題に設定している。

賃金改善については、「すべての自治体単組が、春闘期には職員の給与実態を十分に把握、分析して、単組として目標とする賃金の到達水準の確認を行うとともに、その実現にむけた具体的な運用改善について、少なくとも『1単組・1要求』を行い、労使交渉に取り組む」考えを提示。また、今春闘においては、「最低賃金の引き上げがされたこと、また人材確保の観点から、初任給の改善を重点課題」として、引き続き見直していく必要性を示している。

具体的な賃金要求・運用改善については、単組ごとに賃金カーブの実態を明らかにする必要があるとして、「単組で組合員個々の賃金実態を把握」するとともに、「近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインと比較し、具体的な到達目標を設定するため、モデルラインを作成」することを強調した。

なお、自治労では、単組の到達目標として、 ① 30歳・24万8,775円 ② 35歳・29万3,807円 ③ 40歳・34万3,042円――の個別ポイント賃金を設定している。

また、初任給引き上げについては、国家公務員における初任給引き上げも見込み、「各自治体の現行の初任給基準の4号上位を目指す」をとしている。

期末手当の月数が常勤職員並びでない単組へは早急に是正

会計年度任用職員の処遇改善に関しては、2020年4月に導入されたものの、「常勤職員との均衡・権衡といった法改正の趣旨を十分に踏まえた処遇となっていない実態が見受けられる」と指摘。「2021春闘の集約においても、常勤職員との均衡に基づき制度が整備されている自治体は低位にとどまっている」として、最低でも、総務省が発表する「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」に示す内容へ到達する必要があるとしている。

そのうえで、2022春闘では「会計年度任用職員制度の整備状況チェックリスト」を活用し、労働条件全般の点検と、既に到達している単組に学んだ交渉・協議を実施することを強調。とりわけ、「期末手当の月数が常勤職員並びとなっていない単組は、早急に是正を求める」としている。

給与および諸手当については、自治労の自治体最低賃金 ① 月額16万5,900円以上 ② 日給8,300円以上 ③ 時給1,070円以上――を最低として、「常勤職員との均等・均衡を基本に支給を求める」考えだ。また、休暇制度については、「国の非常勤職員に有給で設けられている年次有給休暇、結婚休暇、夏季休暇等はもちろんのこと、無給とされている休暇についても同一自治体における常勤職員との権衡に基づき有給とすること」を求めている。

全単組で定年引き上げにむけた課題について協議・交渉を

定年引き上げにむけた取り組みについては、2023年に60歳となる職員への情報提供・意思確認を2022年度中に行う必要があることを受け、対象者への丁寧な情報提供・意思確認を実施するためにも、「2022春闘期ですべての単組が定年引き上げにむけた課題について協議・交渉を行い、妥結することを目指す」ことを提示した。

また、取り組むうえでのポイントとして、 ① 配置ポストや職務といった制度導入面 ② 給与 ③ 職場環境の整備――の3点を掲げ、これらに関連する細やかな課題の解決にもしっかり協議・交渉することを求めている。

長時間労働の是正にむけた労働時間管理体制の構築を提示

職場からの働き方改革では、まず、長時間労働の是正として、「実態について検証・点検を行い、職場での意見を踏まえた労使交渉・協議に取り組み、実態に合った人員確保の取り組みを全単組で春闘期から進める必要がある」と指摘。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」や、自治労本部が作成した「適正な労働時間管理のための職場チェックリスト」を踏まえ、交渉・協議と合意により、「すべての労働者の始業・終業時間や休日労働の正確な実態を把握できる労働時間管理体制を構築すること」を提示している。

また、人員確保については、職場オルグや人員配置の実態などの職場点検を実施するとともに、「職場議論を踏まえて、必要人員について所属長と交渉を行い、所属長から人事当局への人員確保の必要性について上申を求める」としている。

公共サービスを担う人員と財源の確保を訴える

中央委員会では、2021春闘に引き続き、「公共サービスにもっと投資を!」キャンペーンの展開を実施することも強調。「『エッセンシャルワーク』として広く認識されるようになった公共サービスと公共サービス労働者について、その重要性と存在価値をさらに社会一般に浸透するための取り組みを進める」としている。また、「参加する春闘」の一環として、アピール動画の作成などを通して、現場組合員への参加を呼びかけるとしている。

川本委員長は、「コロナ関連業務はこの先もしばらく続くものであり、今後も住民の生活に直結する公共サービスに求められる役割は増大していく」として、業務に見合った適切な人員と処遇の確保、公共サービスを担う人への投資をより強く求めることを指摘。6月の人員確保闘争に向けて、「春闘期から、すべての単組が当局に人員要求を行うとともに、キャンペーン行動を通じて、全国で公共サービスを守るための、人員と財源の確保を訴えるための取り組みをお願いしたい」と訴えた。