6,000円を基準に「人への投資」を要求/JAMの2022年春季生活闘争方針
2022年1月21日 調査部
金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長、約36万6,000人)は18日、リモート方式を併用して中央委員会を開催し、2022年春季生活闘争方針を決定した。これまでどおり、賃金の格差是正などに向け、賃金水準にこだわった要求を追求しながら、ベア・賃金改善について6,000円を基準として「人への投資」を要求するなどとした。
「今次闘争におけるベアは必然」(安河内会長)
中央委員会冒頭であいさつした安河内会長は「JAMは、これまでも国際的に低い日本の賃金水準を指摘してきており、ベースアップを勝ち取っていこうと主張してきた。世の中がようやくこのことに気づき始めてきて、このままでは先進国から転落してしまうとも言われるようになった。今日、(経団連から)経労委報告が発表されたが、内容をみるとさらに熱意をもって賃上げに言及している。その意味からしても、今次闘争におけるベースアップは必然だ」と述べ、コロナ禍のまっただ中にあった昨年とは異なり、今年の交渉では強く賃上げを求めていくべきとの考えを鮮明にした。
所定内賃金で改善を行う
今次闘争の役割について方針は、「2014年からの賃上げの流れの継続に留まらず、回復基調の中、『誰一人取り残さない』社会の実現に向け、すべての単組がJAM方針に基づいた要求を提出し賃金改善をめざす」とし、要求段階で人手不足や賃金水準の低下、格差拡大など中長期的課題や春季生活闘争の役割などを職場討議で共有し、「賃金水準にこだわった要求」「同一価値労働同一賃金」「労働時間の原則(考え方)」の徹底を進めるとしている。
賃金については特に、残業代を含まない所定内賃金の改善を行うことを強調。そのうえで、「社会的水準の確保、『産業内・企業内』の格差是正に向けて、個別賃金要求方式の考え方を基本に、『賃金プロット図』を用いた賃金実態の把握に取り組むと共に、すべての単組において、30歳または35歳の一人前労働者、標準労働者の賃金水準開示が行われるように取り組む」とした。
6,000円以上の賃上げ要求水準は9年連続
賃金要求の考え方については、「すべての単組は、賃金の『底上げ』『底支え』『格差是正』に向け、賃金の絶対額を重視し、賃金水準にこだわった要求を追求する」と、これまでどおり水準を重視した個別要求方式の重要性を強調し、「自らの賃金水準のポジションを確認した上で、JAM一人前ミニマム基準・標準労働者要求基準に基づき、あるべき水準を設定し要求する」とした。
また、方針は、定期昇給相当分を含め4%程度の賃上げを目安とするとした今年の連合方針を踏まえ、「JAM構成単組は、あるべき水準との乖離を確認した上で、分配構造の転換を進める観点から『底上げ』『底支え』と『産業内及び企業内の格差是正』をめざし、賃金構造維持分を確保した上で、所定内賃金の引き上げを中心に、単組の課題を積み上げ、6,000円を基準とし『人への投資』を要求する」とし、9年連続で6,000円以上の賃上げを求めていく姿勢を示した。
若年層のミニマム基準は引き上げ
具体的な要求基準の内容をみると、絶対額の改善につながる個別賃金要求の基準では、各単組が最低でもクリアすべき一人前労働者の賃金カーブの参考とする「JAM一人前ミニマム基準」(所定内賃金)について、18歳:16万7,000円、20歳:17万9,000円、25歳:21万円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:29万5,000円、45歳:31万5,000円、50歳:33万5,000円とし、昨年方針から18歳を3,000円、20歳を2,000円、25歳を1,000円引き上げた。
到達基準的意味合いの標準労働者の要求基準については、高卒直入者の所定内賃金で30歳、35歳という2つの年齢ポイントを掲げているが、「全単組が到達すべき水準」である【到達基準】では、昨年同様、30歳を27万円、35歳を31万円とし、「到達基準に達している単組が目標とすべき水準」の【目標水準】についても昨年同様、30歳を29万円、35歳33万円と設定した。
年齢別最低水準は30歳19万2,000円など
年齢別最低賃金基準については、「有期雇用労働者の無期転換や中途採用者の採用時賃金の最低規制として整備が求められており、労働組合の個別賃金水準の一つとして協定化に取り組む」とし、35歳まで、各単組の年齢ポイントの一人前労働者賃金水準の80%を原則とし、高卒初任給を勘案して決定するとともに、これらの考えに基づく「年齢別最低賃金水準」について、18歳:16万7,000円、25歳:18万1,500円、30歳:19万2,000円、35歳を21万6,000円とした。
平均賃上げ要求基準については、「連合方針の賃金引き上げ目安を踏まえ、未組織労働者も含めた春闘相場の波及をめざし、平均賃上げ要求に取り組まざるを得ない単組の要求基準はJAMの賃金構造維持分平均4,500円に6,000円を加え、『人への投資』として1万500円以上とする」と、昨年方針と同じ文言とした。
協定締結割合では4割からの上積みを目指す
企業内最低賃金協定については、18歳以上企業内最低賃金協定を締結していない単組では協定締結に取り組み、年齢別協定を締結していない単組では標準労働者(一人前労働者)の賃金カーブを基にした年齢別最低賃金協定を締結するとしている。JAM加盟単組での締結率は約42%であり、他の金属労協加盟の産別に比べると低い状況にある。
さらに、有期・短時間・契約等労働者も対象とする全従業員の協定締結を目指す。また、法定最低賃金が年々引き上げられている状況を鑑み、「法定最低賃金と企業内最賃の差が50円に満たない場合は、直ちに引き上げを要求する」ことも明記した。
一時金については、昨年と同様、「① 年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする ② 最低到達基準として、年間4カ月または半期2カ月」とした。
統一要求日は2月22日
闘争体制の工夫では、今年も、地方で先行回答が引き出せる組合を「地方JAMリーディング組合」と設定して、地方での地域相場形成に努める。日程については、統一要求日を2月22日(火)とし、統一回答指定日は3月15日(火)および16日(水)とした。
春季生活闘争の取り組みとあわせて、今年も、取引の適正化などを目指す「価値を認め合う社会へ」の実現に向けた運動を展開する。各単組は職場チェックや会社側への「価値にふさわしい価格取引実現に向けた環境整備」の取り組みの要請などを実施する。
中央委員会ではこのほか、第49回衆議院議員総選挙の取り組みに関する総括を確認するとともに、基幹労連とともに組織をあげて支援する村田きょうこ氏の当選を目指す第26回参議院議員選挙必勝に向けた特別決議を行った。来賓あいさつした基幹労連の神田健一委員長は、村田氏の所属予定政党について、立憲民主党とする判断をしたと報告した。