連合方針である2%程度を意識して「底上げ」に取り組む/JEC連合闘争方針

2022年1月19日 調査部

[労使]

化学・エネルギー関連産業の労組でつくるJEC連合(酒向清会長、約11万6,000人)は1月13日、都内で中央委員会をWeb併用で開催し、2022春季生活闘争方針を決めた。闘争方針は、「賃上げの流れを継続・定着させ、連合方針である2%程度を意識し、『底上げ』に取り組む」などとしている。

「格差の解消と経済の自律的成長につながる取り組みを追求する」(酒向会長)

冒頭、酒向会長はあいさつで、交渉過程で新型コロナウイルス感染症の影響を受けた昨年の春闘について、「連合方針をもとに『賃金の絶対水準の追及』にこだわる方針を掲げてスタートしたが、交渉延期やWeb交渉などの影響を受けるなか、賃上げ要求組合は前年に比べ30組合減った87組合、賃上げを獲得した組合は前年より4組合増えて52組合という結果となった」などと振り返ったうえで、2022春闘でも格差の解消と経済の自律的成長につながる取り組みを追求する姿勢を強調。「企業にとって一番重要な経営資源は『人材』。自信と誇りを持って交渉のステージに立ち、『人への投資』を積極的に訴えるとともに、労使で社会全体や会社の『未来』について語り合い、将来につながる何らかの成果を得られるよう取り組んでいこう」と呼びかけた。

働き方を含めた労働諸条件の点検を実施し処遇改善に

方針は、2021春季生活闘争の考え方を、「産業独自の情勢やコロナ禍の影響を踏まえつつ、雇用の維持・確保を大前提に、『底支え』『格差是正』に重点を置きつつも、総体的には企業業績も改善傾向にあり、地域別最低賃金も大幅に上昇していることから、賃上げの流れを継続・定着させ、連合方針である2%程度を意識し、『底上げ』に取り組む」としたうえで、「全加盟組合は、組合員はもとより、企業内で働くすべての労働者を対象に、働き方を含めた労働諸条件の点検を実施し、処遇改善に取り組む」と整理した。

企業内最賃協定の締結と時給1,150円以上の水準クリアを

「底支え」については、「すべての労働者を対象とした企業内最低賃金協定の締結を行う」とし、締結水準は生活を賄う観点と初職に就く際の観点を重視し、時給1,150円以上をクリアするように取り組む。

「格差是正」の取り組みでは、加盟組合が関連・グループ会社も含めた企業の賃金を点検する。JEC連合は、25~55歳までの5歳刻みでの基本給の「年齢別目標水準」を示し、その到達に向けた賃金引き上げに取り組む考えを示している。具体的な基本給額は、25歳:21万円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:30万円、45歳:33万円、50歳:36万円、55歳:38万円――。点検の結果が、同水準を下回る場合には、格差是正に向けて目標水準に到達する要求を組む。

さらに、方針は「年齢別目標水準」を下回る加盟組合について、生活するうえでの最低限の暮らしを守る観点から、連合の最低到達水準額を参考に、同水準をクリアするよう取り組むことも提起。ジョブ型雇用制度を導入している加盟組合の対応について、「賃金カーブがない等のジョブ型雇用の性質を十分に理解したうえで、生活するうえでの最低限の暮らしを守るという観点から、連合の最低到達水準額を参考に、水準額を上回る職位になるよう、教育も含めて労使で検討する」方針を示した。

初任給の目標水準達成や男女間格差の改善も

関連・グループ会社も含めた初任給も点検する。各社の初任給が、① 高校(18歳):17万5,000円 ②大学 (22歳):21万5,000円 ③ 修士(24歳):23万5,000円――を下回る場合は、その到達を目指し、要求に取り組む。

男女間の格差是正に関しても、「改正女性活躍推進法にもとづく事業主行動計画策定指針に『男女の賃金の差異』の把握の重要性が明記されたことを踏まえ、職務や職種、さらには住宅手当や扶養手当等の属人手当の付与状況等も含めて、男女別の賃金実態の把握と分析を行うとともに、問題がある場合は、改善と格差是正に向けた取り組みを進める」としている。

定昇制度のない組合は1万1,000円を要求

方針は、年齢別目標水準に到達している組合に向けた「底上げ」の取り組みにも言及。「定期昇給相当分を確保し、社会全体の賃金を『底上げ』する観点から、連合方針である2%程度の賃上げを意識し取り組む」とした。その際、定期昇給制度を持たない加盟組合は、「平均定期昇給額の5,000円を定期昇給相当分、賃上げ要求額は平均所定内賃金の2%分にあたる6,000円の合計1万1,000円を要求し取り組む」こととする。

一方、雇用問題を抱える加盟組合は、「経営再建に向けた労使協議を行い、政府の雇用支援策や、これまで蓄えてきた内部留保についても協議の俎上に載せ、雇用の確保を最優先に全力で取り組む」とし、「最低でも2021年に更新された連合都道府県別リビングウェイジの最低賃金を下回らないように努める」としている。

一時金は、「生活に必要な年収確保の観点」から、ミニマム基準を年間4カ月に設定。一時金の固定部分を持つ加盟組合は、「安定年収確保の観点」から、固定部分を4カ月以上に引き上げることを目指す。業績連動型一時金制度が導入されている組合は、「企業業績や付加価値が適正に分配されている制度設計になっているか点検・検証し必要に応じて改善を求める」構えだ。

働きやすい職場実現に向けた取り組みも

方針は、働きやすい職場実現に向けた取り組みも明記。長時間労働の是正については、仕事と生活の調和の実現に向けて「年間所定内労働時間1,800時間」となるよう取り組む。年次有給休暇は初年度付与日数が15日以上となるよう取り組むとともに、「完全取得を目指し、1人当たり平均取得日数10日未満とならないよう」にする。あわせて、取得日数5日未満の従業員がいないことも確認する。

時間外労働割増率の引き上げでは、企業規模にかかわらず、すべての組合で、① 1カ月45時間未満の時間外割増率35% ② 特別条項付き協定の締結を前提に45時間超の時間外割増率50%  ③ 深夜および休日労働の割増率50%――などの実現に努める。

さらに、テレワーク導入・制度点検の取り組みについても触れ、① 実施の目的、対象者、実施の手続き、労働諸条件の変更等、労使協議を行い、労使協定を締結したうえで就業規則に規定する ② 情報セキュリティ対策や費用負担のルールなどについても明確に規定する ③ 労働基準関係法令が適用されることから、適正な労働時間の把握、長時間労働の未然防止策と厚生労働省作成のガイドラインを意識しながら、作業環境管理や健康管理を適切に行うための方策を労使で検討する ④ 感染リスク低減を目的とするテレワークを推奨する場合には、テレワーク導入に適さない業種や職種に従事する労働者について、感染リスクを回避した環境の整備、労働時間管理、健康確保措置など、啓発や適切な措置を講じる――ことを掲げた。

このほか、方針はジェンダー平等の推進に向けた取り組みや、安全衛生・労働災害補償の到達水準なども示している。

60歳以降の雇用に関する基本方針を確認

なお、中央委員会では、「60歳以降の雇用に関する基本方針」を確認した。基本方針は、60~65歳までの雇用制度について、「希望者全員が65歳まで安心して働き続けることができるよう取り組む」としたうえで、「賃金、一時金、福利厚生等の労働条件が60歳以前よりも大幅に落ち込む状況、また雇用と年金の接続を確実に行う観点から、65歳定年延長に取り組む」考えを示した。再雇用制度の場合も、「実質的に定年延長と同様の効果が得られるような制度の検討を行い、将来的な65歳定年延長に向けた検討を行う」としている。

酒向会長は、「高齢者雇用も次のステージに進んできた。65歳までは従来のような老後への繋ぎという考え方ではなく、『現役として高いモチベーションを持って働く時代』に突入した」などと65歳定年延長に向けた基本方針を策定した背景を説明。「60歳以降の働く仲間が、健康で安全に安心して働き続けることができるよう、方針をもとに労使協議を推進して欲しい」と訴えた。

要求書は原則、2月28日までに提出。連合・共闘連絡会議の方針に基づき、3月14日~18日を解決に向けた「第1先行組合回答ゾーン」とし、3月16日を集中回答日とする。これに続く組合は3月21日~31日を「3月月内決着回答ゾーン」とし、遅くとも4月内での決着を目指す。