対面で開催し、9年ぶりに首相も出席/連合の新年交歓会

2022年1月7日 調査部

[労使]

連合(芳野友子会長)は5日、都内で新年交歓会を開いた。対面での開催は2年ぶり。あいさつに立った芳野会長は、社会への参画やすべての働く者の連合運動への参画などを進める決意を披露した。岸田文雄首相が出席し、「低下する賃上げの水準を思いきって反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待する」とあいさつした。

今年は3つの参画を進める

主催者代表としてあいさつした芳野会長は、今年は、① 社会への参画 ② 人々の政治プロセスへの参画 ③ すべての働く者の連合運動への参画――という3つの参画を進めたいと述べた。

社会への参画について、芳野会長は、「連合は誰一人取り残されることのない包摂的な、働くことを軸とする安心社会の実現に向けて、必ずそばにいる存在として、すべての働く仲間の代表として着実に前に進んでいく所存だ」と表明。「弱い立場にある人々から頼りにされ、広く国民の共感が得られる運動体として社会をリードする存在である必要がある」と述べるとともに、連合がすべての働く者のための運動を展開している組織だということをアピールすることで、「社会から共感が得られる運動をつくらなければいけない」と呼びかけた。

緊張感のある政治を

2つめにあげた人々の政治プロセスへの参画については、「新型コロナウイルスによって露呈した社会の脆弱さをただしていくためには、連合の目指す働く者を軸とする安心社会の実現は待ったなしだ」と述べるとともに、「民主主義を大切にし、働く者や生活者、立場の弱い者の声を受け止めて汗をかくことができる政治にするためにも、与党一強状態を打ち破り、2大政党的体制のもとで与野党が切磋琢磨する緊張感のある政治にしないといけない」と主張。「私たちは普通の国民・市民、働く者の感覚を代表する日本最大の組織としてその思いを結集し、すべての働く者の権利と生活を守るため、全力で取り組む」と述べた。

3つめのすべての働く者の連合運動への参画については、「企業の機能分化が進み、雇用形態の多様化や労働組合未組織の会社が増えるなか、組織拡大の取り組みにいっそう力を入れなければならない」と強調。非正規雇用者の組織化の取り組みとともに、新たに始めたフリーランスの課題解決のための取り組みを紹介したうえで、「労働組合、連合運動が接点を持ち得なかった人々との関係づくりにおいて、さらに強化をしていきたい」と意気込みを語った。

このほか芳野会長は、「昨年を表す漢字は『金』だったが、ジェンダー平等の金字塔に向けて大きな一歩を踏み出す年にしたい」と今年の抱負を語った。

首相も賃上げ水準反転に期待

今年は岸田首相も来賓として出席し、あいさつした。連合の新年交歓会に首相が出席したのは、2013年の安倍晋三首相以来、9年ぶりのこと。

岸田首相は、現在、政府が行っている新型コロナウイルス感染対策や雇用対策、経済政策について触れたうえで、「こうした取り組みによって、新型コロナを克服し、その先に目指すのは、経済の再生・成長と分配の好循環を生み出す新しい資本主義の実現だ」と強調。「新しい資本主義では、すべて市場や競争にまかせるのではなく、官と民が、今後の経済社会の変革の全体像を共有しながら、ともに役割を果たすことが大事だ」と持論を語りながら、「成長に向けては、人への投資、デジタル、炭素中立、こうした切り口から、経済社会の変革に向け、大胆に挑戦をしていきたい」と強調。

特に人への投資について、「分配戦略として、中間層への分配に正面から向き合っていく。成長の果実をしっかりと分配することで、経済の好循環が生まれ、次の成長につなげていきたい。これからはじまる春闘では、労使で真摯な交渉をしていただき、ここ数年、低下する賃上げの水準を思いきって反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待する」と結んだ。

「建設的な議論をさらに進めたい」(経団連)

厚生労働行政を代表して来賓あいさつした後藤茂之厚労相は、「人への投資などの政策にしっかりと取り組むとともに、賃上げを可能にするさまざまな労働条件、賃上げの条件を整えていくことが必要だ」と述べるとともに、「所得がしっかりと消費につながっていく、そういう経済のうねりをつくっていくためには、社会保障制度の充実も非常に重要な意味がある。格差が固定化しない、分厚い中間層を形成できる社会をめざす経済政策をしっかりとつくっていかなければならない」と強調。また、雇用維持政策とともに、新たな能力開発施策や非正規労働者のステップアップや正規化、成長産業に向けた労働移動にもしっかりと取り組むと表明した。

経団連の大橋徹二副会長は、今年の春季労使交渉について、「労働側と経営側が、賃金、いわゆるベアだけを議論しているように思われる報道もあるが、実際のところは、たいへん多くの企業で、働き方やすべての項目について議論しているのが実態だ。連合と経団連においてもいろんなテーマを決めながら意見交換しているが、各企業でも自社の経営状況あるいは競争状況を労使で共有しながら、賃金引き上げだけにかかわらず総合的な処遇改善をはじめ、働きやすさ・働きがいを感じられるようなさまざまなテーマについて建設的な議論を重ねている。われわれはこれをますます進めたい」と言及。連合とのトップレベル会談などを通じたコミュニケーションを通じて、「相互理解をこれまで以上に図り、一緒に、ポストコロナの日本の社会をつくっていきたい。共通の課題に取り組んで、わが国全体が新しい明るい未来になることを一緒に進めたい」と述べた。