すべての組合で3,000円以上の賃金改善に取り組む/金属労協の2022年闘争方針

2021年12月8日 調査部

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5産別労組でつくる金属労協(JCM、金子晃浩議長)は3日、都内で協議委員会を開催し、来春闘に向けた「2022年闘争の推進」(2022年闘争方針)を決定した。金属産業の業績回復から、昨年よりも賃上げの環境は改善しているとして方針は、すべての組合が賃金構造維持分を確保した上で、3,000円以上の賃金改善に取り組むことを基本とするとした。

金属産業の業績は改善

方針は、金属産業が置かれている状況について、世界的な半導体不足や東南アジアからの部品供給の遅れにより、減産等の影響が出ているものの、「2021年度の金属産業の業績は2020年度を上回り、全体としてコロナ禍前の2019年度を上回る水準まで回復することが見込まれる」などとして、昨年よりも賃上げの環境としては改善しているとの見方を示した。また、DX、カーボンニュートラルへの対応の加速が最重要課題となっていることから、「金属産業はまさに大変革期」にあると指摘。人材の確保・定着、変化への対応力強化に向け、『人への投資』が不可欠と強調した。

基本賃金で「人への投資」を

こうした状況をふまえ、2022闘争での要求の基本的な考え方について方針は、「日本の経済力、そして基幹産業たる金属産業にふさわしい賃金水準の実現をめざすことにより、生活の安心・安定、個人消費を中心とする安定的・持続的な成長、『人への投資』による大変革期を生き抜く『現場力』の強化の実現を図っていく」と述べるとともに、「生産性運動三原則」に基づく賃上げを基軸とした永続的な「成果の公正な分配」に向けて、すべての組合で賃上げの獲得をめざすと強調。さらに、その分配については、「基本賃金の引き上げを基軸とした『人への投資』でなくてはならない」として、基本賃金での水準アップの重要性を強調した。

すべての組合で賃上げに取り組むことが基本

具体的な取り組みの内容をみると、賃金については、「日本の基幹産業である金属産業にふさわしい賃金水準確立に取り組んでいく必要がある」とするとともに、特に賃金の底上げ・格差是正に向けて、「賃金水準を重視した取り組みを一層強化しなければならない」と強調。賃金改善分の獲得組合数と賃金改善分の平均獲得額がともに2019年から減少・低下傾向にあることも意識し、「2022年闘争は、JC共闘として、2014年以降の継続的な賃上げの流れをより確かなものとすべく、賃上げ獲得組合数と引き上げ額の拡大に向けて取り組む」と明記した。

具体的な要求基準は「すべての組合で定期昇給などの賃金構造維持分を確保した上で、3,000円以上の賃上げに取り組むことを基本に、各産業の置かれている状況を踏まえて具体的な要求基準を決定する」と設定。昨年は、定期昇給など賃金構造維持分の確保についてはすべての組合で取り組むこととし、賃金改善については各産別が置かれた状況を踏まえて決定するとの内容としたが、今年はすべての組合で賃金改善まで取り組む内容とした。

協議委員会の開催前に会見した金子議長(自動車総連会長)は、賃上げの取り組みについて「昨年よりも上向いた取り組みにしたい」と意気込みを語った。

絶対額を重視した取り組みも継続

また、賃金の絶対額を意識した取り組みを強めるため、「めざす賃金水準に向けて、継続的な取り組みを進める」とも記述した。なお、めざす個別賃金水準(35歳相当・技能職)の具体額は昨年方針と同様となっており、目標基準が基本賃金33万8,000円以上、到達基準が同31万円、最低基準が到達基準の80%程度(24万8,000円程度)となっている。

初任給については、「人材の確保・定着に向け、積極的な引き上げが行われるよう、産別の方針に基づき取り組む」とした。

賃金制度が整備されていない組合の、賃金制度の確立に向けた取り組みでは、「あるべき賃金水準や賃金制度を検討し、労使合意を図り、計画的に具体化を図る」とともに、産別の指導に基づき賃金制度の確立や賃金構造維持分確保のための仕組みづくりに取り組むなどとした。

全組合で企業内最低賃金協定の締結めざす

企業内最低賃金協定については、協定の全組合締結をめざす。協定は、「高卒初任給準拠を基本」とし、協定額はJC共闘の中期的目標である月額17万7,000円程度(時間当たり1,100円程度)をめざして計画的に取り組むとしている。

このほかでは、今年もバリューチェーンにおける「付加価値の適正循環」構築の取り組みを柱の1つとし、中小労組の交渉環境整備も積極的に支援する。

闘争日程では、大手先行組合の要求提出は2月22日(火)までとし、回答のヤマ場の設定については、連合の拡大戦術委員会と連携しながら、戦術委員会、中央闘争委員会で決定するとしている。

人権デュー・ディリジェンスの考え方を7月までに整理

方針ではまた、金属労協として、2022年7月をめどに、グローバル産業の労働組合としての人権デュー・ディリジェンスに対する考え方を整理することも提起した。

金属労協として、グローバルに事業活動を展開するものづくり産業を組織し、また、日本企業の海外事業拠点における「結社の自由・団結権・団体交渉権」の問題に取り組んでいることなどを理由にあげ、「金属労協として、労働組合としての人権デュー・ディリジェンスに対する考え方を整理し、労働組合による具体的な活動について、方向性を示していくことが重要」と説明。今後、組織内で、人権デュー・ディリジェンスに対する理解を深めるための勉強会を開催したり、考え方を整理する。

考え方は2022年7月に決定し、9月の定期大会で報告したいとしている。