要求指標は据え置きも昨年以上に強く賃上げを求める/連合の2022春季生活闘争方針

2021年12月8日 調査部

[労使]

連合(芳野友子会長)は2日、中央委員会をWEB方式を併用して開催し、2022春季生活闘争方針を決定した。賃金改善分の獲得組合数が2019年以降、低下傾向にあることも意識し、今回の方針は、すべての組合が月例賃金の改善にこだわる姿勢を強調。賃上げ要求指標は昨年と同様、定期昇給相当分を含めて4%程度としたものの、コロナ禍だった昨年とは状況が異なるとして、昨年以上に強く賃上げを求める姿勢を示す。

「未来づくり春闘」を打ち出す

方針は、2022春季生活闘争の意義と基本スタンスについて、「コロナ禍にあっても『働くことを軸とする安心社会』の実現に向け、働く仲間が共闘し未来への一歩を踏み出そう」と切り出している。

経済指標については回復基調にあるとし、GDP水準は2021年度末にはコロナ前の水準をほぼ回復すると指摘。一方、勤労者家計は長期にわたり低迷し、有期・短時間労働者などが深刻な影響を受けていると言及するとともに、中小企業やコロナ禍の影響が大きい産業で働く労働者も厳しい状況があり、また、男女間賃金格差も固定化しているなどとも強調。その根っこには、「分配のゆがみ」があるとし、「今こそ、『働くことを軸とする安心社会』の実現に向けて、働く仲間の力を結集し現状を動かしていくべき時である」と主張している。

方針はさらに、「それは主体的に未来をつくっていく労働運動の社会的責任でもある」と強調。「われわれは、経済の後追いではなく、経済・社会の活力の原動力となる『人への投資』を積極的に求める『未来づくり春闘』を展開していく」として、過去1年間の経済情勢や企業業績にとらわれない春闘を展開してく決意をアピールしている。

賃金低下反転に向け全体での継続的賃上げが必要

各取り組みの内容をみると、賃金要求では、賃上げの考え方について、「実質賃金の長期低下傾向を反転させるには、賃金水準を意識しながら、全体で継続的に賃上げに取り組むことを強化する必要がある」とし、傷んだ労働条件を回復させ「人への投資」を積極的に行うことこそ、「経済の好循環を起動させ、経済を自律的な回復軌道にのせていくカギになる」との考えを示した。

また、超少子・高齢化のなか、「将来にわたり人材を確保・定着させるためには、賃金水準を意識して『人への投資』を継続的に行うことが必要」とし、特に「中小企業や有期・短時間・契約等で働く者の賃金を『働きの価値に見合った水準』に引き上げることをめざし、『分配構造の転換につながり得る賃上げ』に取り組む重要性を認識しなければならない」と強調。これらの考え方の下に、2022闘争は「すべての組合が月例賃金の改善にこだわり、それぞれの賃金水準を確認しながら、『底上げ』『底支え』『格差是正』の取り組みをより協力に推し進める」とした。

賃金改善要求は昨年と同じ2%程度

具体的な要求目標をみると、「底上げ」の指標としては、「それぞれの産業における最大限の『底上げ』に取り組む」としつつ、「賃上げ分2%程度、定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度の賃上げを目安とする」と設定した。賃金改善分が2%程度である点は昨年と変わらない。

底支えでは時給1,150円以上をめざす

規模間格差是正の目標水準は、35歳:28万9,000円(前年28万7,000円)、30歳:25万9,000円(同25万6,000円)とし、最低到達水準は35歳:26万6,250円(25万8,000円)、30歳:24万3,750円(同23万5,000円)とするとともに企業内最低賃金協定の引き上げ額を前年から50円積み増して1,150円以上と設定した。

一方、雇用形態間格差の目標水準としては、昇給ルールを導入することなどに加えて、水準として「勤続17年相当で時給1,750円・月給28万8,500円以上となる制度設計をめざす」と明記。なお、これらの額は、賃金センサスのフルタイム労働者の平均的な所定内賃金を参考にしてまず時給額を設定し、月給はそれを月額換算した。最低到達水準としては、「企業内最低賃金協定1,150円」とした。

「底支え」のための指標では、企業内のすべての労働者を対象に協定を締結するとともに、締結水準で「時給1,150円以上」をめざすとした。1,150円については、連合が作成する連合リビングウェイジなどのデータをもとに設定した。

「労使で5年後10年後の未来の姿を描く」(芳野会長)

あいさつした芳野会長は、「日本の賃金は1997年がピークで、そこからほとんど伸びておらず、いまでは先進国の中で低位に置かれてしまっている。生産性の伸びにも追いついておらず、労働者に適正な分配が行われてきたとは言い難い状況だ」とし、「この状況を変えていくためには、まず、労働組合が『人への投資』を積極的に求めていく必要がある」と強調。闘争を取り巻く環境については、「2年続けてコロナ禍の中での闘争となるが、産業によって依然厳しい状況におかれているところもあるとは言え、昨年とはかなり状況が異なると認識している」との認識を示した。

「未来づくり春闘」を掲げた理由については、「労使がともに、自らの企業の状況や雇用・労働のあり方について、まずは現状を認識し、その上で5年後10年後の未来の姿を描き、そこに到達する道筋を考えていくことを通してこそ未来はつくられる、との思いからだ」と説明した。

中小の要求指標は昨年から変わらず総額1万500円以上

中小組合の取り組みに関しては、すべての組合が賃金カーブ維持相当分確保した上で、自社の賃金と連合が示す社会横断的な水準などと比較したうえで、その水準の到達に必要な額を加えた総額で賃金引き上げを求める」とともに、今年は「獲得した賃金改善原資の各賃金項目への配分等にも積極的に関与する」ことも記述。具体的な賃上げ要求指標は昨年方針と同様、「賃金カーブ維持分(4,500 円)の確保を大前提に、連合加盟組合平均水準の2%相当額との差額を上乗せした金額6,000 円を賃上げ目標とし、総額10,500 円以上を目安に賃上げを求める」とした。

男女間格差に向けて賃金を「見える化」

芳野会長が就任以降、力を入れたいと述べている男女間の賃金格差、雇用形態間の賃金格差の是正について方針は、「男女別の賃金実態の把握と分析を行うとともに、問題点の改善と格差是正に向けた取り組みを進める」とし、具体的には、① 賃金データにもとづいて男女別・年齢ごとの賃金分布を把握し、「見える化」(賃金プロット手法等)をはかるとともに、賃金格差につながる要因を明らかにし、問題点を改善する ② 生活関連手当(福利厚生、家族手当等)の支給における住民票上の「世帯主」要件は実質的な間接差別にあたり、また、女性のみに住民票などの証明書類の提出を求めることは男女雇用機会均等法で禁止されているため廃止を求める――とした。

ヤマ場は3月15日(火)~17日(木)

取り組みの日程については、要求提出を原則として2月末までに行うとした。

中央委員会後に「共闘連絡会議」の第1回全体代表者会議を開き、先行組合回答ゾーンを3月14日(月)~18日(金)とし、ヤマ場について3月15日(火)~17日(木)とすることを確認した。