院内保育所ではコロナ禍で時間外労働が増加/日本医労連調査

2021年12月1日 調査部

[労使]

病院内で働く医療従事者の子どもを預かる院内保育所では、コロナ禍の勤務により、時間外労働が昨年より増加した。また、約7割の施設で、精神的負担があったと回答している――日本医労連(佐々木悦子委員長、約15万1,000人)の「2020年度院内保育所実態調査」結果から、延長保育などを含めた長時間労働に対応しながら、コロナ禍の最前線で働く医療従事者を支える院内保育所の状況が明らかとなった。日本医労連は、医療従事者が子育てをしながら安心して働くことができる環境整備に向けて、院内保育所の必要性を強調するとともに、保育所職員の処遇改善を求めている。

保育士の約半数は非正規職員で構成

調査は毎年実施。日本医労連加盟組織を通じて送付し、今年度は44都道府県の157施設(加盟施設が117施設、未加盟施設が40施設)の回答を集約した。勤務状況については2021年3月1日を基本に2020年4月から2021年3月の1年間の実績に基づいた実績を対象としている。また、今年度は新型コロナウイルス感染症の拡大よる現場の状況を尋ねる項目を追加している。

施設の雇用形態をみると、保育士は正規職員が56.5%で昨年(54.8%)より微増、非正規職員は43.5%で昨年(45.2%)より微減となっている。一方、保育補助は正規職員が16.5%に対し、非正規職員が83.5%、栄養士・調理師でも正規職員が37.8%に対し、非正規職員は62.2%と、非正規職員で構成される傾向が高い。

保護者の迎えがあるまで延長保育を実施する施設が大きく上昇

保育所の主たる開園時間は、「7時~7時59分」が57.3%で半数を超えており、昨年(56.1%)と比べて早朝からの開園を実施する施設が増加している。また、開園前の延長保育を実施する施設は31.2%で、昨年(32.9%)より微減となっている。

閉園後の延長保育を実施する施設は82.2%と、昨年(78.0%)より4.2ポイント増加。実施する施設の延長時間の内訳をみると、特に「お迎えがあるまで」が60.5%で、昨年(48.4%)を大きく上回る結果となった。

時間外労働(2021年2月)については、正規職員で「10時間未満」が63.6%で最も高く、昨年(58.5%)より5.1ポイント増加。「10~20時間未満」も20.0%にのぼり、昨年(15.2%)より4.8ポイント増加している。また、非正規職員でも「10時間未満」は50.0%と、昨年(41.5%)より8.5ポイント上回っている。この状況について、日本医労連は「コロナ禍で、保護者の立場である医療従事者が長時間労働を余儀なくされており、それが院内保育所の働き方にも影響している」と推察している。

約半数の施設で業務負担が増加

コロナ禍の勤務について、施設でどのような負担が生じているかみると(複数回答)、「精神的負担」が109施設・69.4%、「身体的負担」が42施設・26.8%、「人員不足」が19施設・12.1%などとなっている。また、新型コロナウイルスの感染拡大から1年以上が経過しているにもかかわらず、「衛生材料の不足」も17施設・10.8%にのぼっている。

また、労働環境への影響をみると(複数回答)、「業務負担の増加」が72施設・45.9%と半数近くにのぼり、「残業の増加」も11施設・7.0%でみられた。

1割以上がコロナ前と比較して一時金が減少

コロナ前(2019年度)と比較した一時金(ボーナス)支給については、「昨年と同率」が最も高く、102施設・65.0%。次いで「昨年より減った」が16施設・10.2%と1割を超え、「昨年より増えた」は14施設・8.9%となっている。削減率の平均は0.6カ月で、最高は1カ月、最低は0.05カ月。日本医労連は、「平均賃金から計算して1人あたり平均10万円ほどの削減となっている」とみている。

国からの慰労金の支給は約4割にとどまる

政府は、令和2(2020)年度第2次補正予算で成立した新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金により、医療・介護従事者に向けた慰労金の支給を実施している。これについては、院内保育所の職員も、業務によって病院に出入りがあり、陽性者との接触の機会がある職種であるため、申請や支給の有無について調査したところ、「支給された」割合は65施設・41.4%だった。

一方、「該当しない」(48施設・30.6%)と「申請したが支給されなかった」(5施設・3.2%)の合計は33.8%。「不明」と「無回答」の合計も39施設・24.8%となっており、調査結果からは、慰労金制度そのものが、院内保育所には無関係と思っている施設があったことが示唆される。慰労金支給額の平均は13.5万円で、最高は20万円、最低は5万円となった。

医療を支える一翼を担う院内保育所職員の処遇改善が課題

日本医労連は調査の結果を受けて、「医療従事者である保護者やその子どもと直接接する保育所職員も、医療を支える一翼を担っており、手厚い保障があって然るべきと考える」と指摘。「医療従事者が子育てをしながら安心して働き続けるためにも、院内保育所は必要不可欠である」と強調し、そこで働く職員の賃金・労働条件の早急な改善を求めている。