新会長に全トヨタ労連出身の金子氏が就任/自動車総連の第50回定期大会

2021年9月15日 調査部

[労使]

トヨタ、日産、ホンダなどの自動車大手メーカーや、グループの部品・販売企業などの労組が加盟する自動車総連(組合員80万1,000人)は9、10の両日、Web方式を併用して都内で第50回定期大会を開催した。向こう2年間の運動方針を決定し、労働条件の格差是正や適正取引の推進などによる中小企業の体質強化や、絶対額を重視した賃金水準引き上げの取り組みなどを重点項目とした。2期4年、会長を務めた髙倉明氏(日産労連)が退任し、事務局長を務めていた金子晃浩氏(全トヨタ労連)が会長に就任した。

技術革新では産業と政府一体の取り組みを求める

新たな運動方針は、① 将来にわたって持続可能な魅力ある自動車産業の実現 ② 安心して活き活きと働き、生活できる職場と社会の実現 ③ 役割発揮に向けた産別機能の強化と組織の基盤づくり――の3つの活動の柱に沿って、重点項目を設定した。

魅力ある自動車産業の実現に向けては、「自動車関係諸税の取り組み」や「自動車産業の発展に向けた政策の推進」、「中小を含めた産業全体の環境改善、体質強化」などを重点項目に掲げた。自動車関係諸税では、自動車重量税の廃止など、「複雑得かつ過重で不条理な自動車税制の解消を前提」として、「簡素化・ユーザー負担軽減に向けた抜本改革を強く働きかけていく」などとしている。自動車産業の発展に向けた政策については、CASEなどの技術革新を推進し、世界で標準化戦略をリードするなど、「産業全体と政府が一体となった取り組みとなるよう強く働きかけていく」とした。

「変革に果敢に挑戦を」(髙倉会長)

髙倉会長はあいさつで、「今後も自動車産業が、日本で競争力を磨き続け、雇用を維持・創出し、モノづくりを続けていくためには、変化や危機を敏感に察知し、今、起こりつつある変化を後戻りさせず、あらゆる変革に果敢に挑戦していかなければならない」とし、カーボンニュートラル達成に向けた動向については「『脱ガソリン』『脱エンジン』という拙速な議論ではなく、さまざまな可能性も含めた公正な移行・ソフトランディングに向けたオールジャパンでの取り組みが不可欠だ」と強調した。

自動車総連加盟組合の7割を占める中小の体質強化については、「企業収益のバラつきなどにより発生する労働条件の格差是正や、適正取引の推進などの業種別固有の課題に向けた取り組みを推進する」とした。

時短は実態に合わせて取り組む

安心して活き活きと働き、生活できる職場と社会の実現に向けての活動の重点項目としては、「総労働時間短縮に関する取り組み」や「絶対額を重視した取り組みの推進」などを掲げた。総労働時間短縮では、単組・労連、業種の実態に合わせた所定労働時間の短縮、時間外労働の削減、年休取得促進の取り組みを推進するとしている。

賃金の絶対額を重視した取り組みでは、各労連のリーダーシップのもと、賃金データの入手から賃金実態の分析、課題の明確化、目指す要求ポイントの設定などまで、ステップ踏んで取り組みを着実に進めていくとしている。

自動車総連が大会で報告した2021総合生活改善の取り組みの回答状況(9月9日現在)では、個別賃金要求した単組数は、集計した1,043組合のうち662組合。「若手技能職」のポイントでは338組合が、「中堅技能職」のポイントでは627組合が要求した。

一方、回答を引き出した単組は264組合。「若手技能職」ポイントでは48組合が回答を引き出し、回答額の平均は23万1,922円となっており、「中堅技能職」ポイントでは186組合が回答を引き出し、回答額は28万5,950円となっている。

事務局長には日産労連出身の並木氏が就く

産別機能の強化では、選挙への取り組みなどを重点項目とした。第26回参議院議員選挙では、組織内議員の「はまぐち誠」氏が再選をめざす。髙倉会長はあいさつで、「『はまぐち誠』は国民民主党の比例代表候補として戦うが、われわれは当選順位にかかわる個人名での投票に徹底的にこだわり活動を展開する」とともに、「国民民主党の認知度向上にも努力していかなければならない」と述べた。

役員の改選では、2期4年、会長を務めた髙倉氏(日産労連)が退任し、選挙の結果、事務局長の金子氏(全トヨタ労連)が会長に選ばれた。事務局長には、並木泰宗氏(日産労連)が就いた。