単組の組織強化などが柱/JAMが2022・2023運動方針を決定

2021年9月1日 調査部

[労使]

金属・機械関連の中小の労働組合を多く抱えるJAM(安河内賢弘会長、36万6,000人)は8月26日、定期大会をWEB方式で開催し、向こう2年間の運動方針を決定した。単組の組織強化や個別賃金要求の取り組みなどが柱。役員改選では、安河内会長と中井寛哉書記長は再任となった。

労働協約の点検・整備を

運動方針では、向こう2年間の具体的な課題と目標を、① 職場に関する取り組み ② 組織に関する取り組み ③ 社会に関する取り組み――に分けて示した。

職場に関する取り組みでは、包括的労働協約を締結している単組の割合が66%(1,057単組)で、このうち事前協議制を定めている単組が5割弱となっており、「最近では十分な労使協議がなされないままに雇用調整等が行われる」事例が目立つとして、集団的労使関係の強化に向け、労働協約の点検と整備・拡充の取り組みを強調した。

雇用維持・確保に向けては、「経営情報の開示」と「労使協議の場の確保と徹底」が重要となることから、決算書の開示と分析を通じた組合の立場からの提言活動の重要性も指摘している。

以前から掲げているブラック企業対策では、「悪質な企業・経営者、社労士に対して毅然と立ち向かい、労働者の権利を守るため、組織の総力をあげて取り組む」とした。闘争の長期化にも対応できるよう、単組内の闘争積立資金の強化を呼び掛けるとしている。

なお大会では、大阪で長期の労使紛争となっていた単組からの報告があった。2020年6月に現社長の決断によって和解が成立し、労使関係が改善したものの、大株主(33.4%保有)であり組合に敵対的な親グループが、今年、経営陣の退陣を求める株主提案を株主総会で行ったという。ただ結果は、33.4%をもつ株主の提案ながらも否決されている。

個別賃金はさらなる前進を

賃金・労働条件に関する取り組みでは、個別賃金要求の取り組みの「さらなる前進」を図るとし、最低賃金については、最低賃金協定の締結数がJAM全体で3割程度に過ぎないことから、拡大の必要性を強調。また、特定最賃の「労働協約ケース」への早期転換を図り、各地方での審議会を優位に進めていくなどとしている。

地協オルグが単組の組織強化をサポート

組織に関する取り組みでは、全17地方・105地協に専任のオルガナイザーを配置し、全体の8割を占める中小組織への世話活動を展開しているが、単組機能が低下し、組織の解散・離脱も目立つことから、地協役員と地協担当オルガナイザーが単組の組織強化をサポートする。

組織拡大では、2019年までに50万人組織の達成を目指したが、この5年間での組織拡大は「87単組・1万199人」にとどまった。そのため、① 有期契約労働者 ② JAM加盟単組の関連組織 ③ 未組織事業所および未組織労働者の組織化 ④ 産別未加盟組織、業種別共闘に結集する中立組合 ⑤ 「中小ものづくり産業」を結集軸とする産業別組織――の「5つの領域」を念頭に入れた取り組みを展開する。

なお、一人でも入れる組合として、2019年に設立したJAMゼネラルユニオンは、これまでに26単組延べ428名の組織拡大を行った。現在は、12の職場拠点(企業・事業所など)で組織化に向けた取り組みを展開しているという。

価値を認めあうためイメージ動画を活用

社会に関する取り組みでは、働く者が作りだしたモノやサービスにふさわしい「価値を認めあう社会へ」の実現に向けた取り組みなどを柱に掲げた。「価値を認めあう社会へ」のイメージ動画を活用し、社会にアピールするほか、引き続き、職場での取引環境の実態把握に努め、労使の意見を集約して提言をまとめる、としている。

最終的な賃金改善獲得額は1,300円

2021春季生活闘争の最終総括を確認した。6月下旬までにデータ提出があった単組での、賃金改善分の平均獲得額は1,300円で、前年(1,269円)をやや上回った。300人未満の中小が1,350円となり、300人以上の大手・中堅の1,130円を上回った。中小が大手・中堅を上回るのは6年連続のこと。平均賃上げでの妥結額は4,734円で、同一単組による前年比ではマイナス103円となった。

個別賃金水準の開示件数は、現行水準に関しては、30歳ポイントが前年比4組合減の511、35歳ポイントが同7組合減の499で、前年並みとなった。要求水準の開示件数も、30歳ポイントが302、35歳ポイントが295と、それぞれ前年を下回った(30歳、35歳ともに27組合減)。

春季生活闘争に関しては、安河内会長があいさつのなかで早くも来春闘について言及。「生まれた利益を賃金上昇に繋げられなければ、内需はますます低迷し、これまでにないような危機的状況に陥る。よって、次の春闘の重要性は増している」と強調するとともに、大手企業の賃金がすでに高い水準にあるといった経営側からの主張に対して「そうではない」と反論。世界のなかでみれば賃金水準は高くなく、韓国企業と比べても低いことを紹介しながら、「堂々と賃上げを主張していくべきだ」と訴えた。

参院選出馬予定候補、基幹労連と政策協定を締結

政治関係では、当面の国政選挙への対応方針を確認した。JAMは、来年に実施される第26回参議院議員比例代表選挙で、基幹労連が組織決定した候補予定者である村田きょうこ氏を、組織内候補者と同様の扱いで支援することにしている。

方針は同選挙に向けては、職場の組合員一人ひとりとの直接対話を活動の柱にしながら、村田氏の理解と共感を得る取り組みを展開するほか、個々面談を通じて投票の呼び掛けを徹底することなどを盛り込んだ。第49回衆議院議員総選挙に向けては、JAMが推薦する「小選挙区の候補名」と「比例代表選挙の政党名」を組合員に周知することなどを掲げた。

大会では、参議院議員選挙に向け、村田氏、基幹労連、JAMの3者による政策協定セレモニーが行われ、村田氏、安河内会長、基幹労連の神田健一委員長が政策協定書にサインした。

役員選挙が行われ、3役は以下の顔ぶれとなった(敬称略、任期は2年)。会長:安河内賢弘(本部)、副会長:菊地栄男(クボタ)、芳野友子(JUKI)、水口雅文(グンゼSOZ)、谷口和雄(NTN)、林典子(不二サッシ)、渡邊雅也(コマツ)、書記長:中井寛哉(本部)。