組合員の幅広い参画の機会を設定し組織強化を掲げる/自治労定期大会

2021年9月1日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを主に組織する自治労(川本淳委員長、76万5,000人)は8月25、26の両日、都内でオンラインと併用の定期大会を開催した。向こう2年間の新たな運動方針では、組合員の幅広い参画の機会を設定し、ともに支え合い、育て合う組織づくりなどを柱に据えた。役員改選を行い、これまで3期(6年)、委員長を務めてきた川本氏(北海道本部)が再選された。

人事院勧告での一時金引き下げに「極めて残念」と言及

あいさつした川本委員長は冒頭で、8月10日に人事院が国家公務員の給与等に関する勧告を実施したことについて言及した。人事院勧告は地方自治体の職員の給与にも大きな影響を与え、人事委員会が置かれている地方自治体では、人事委員会が人事院勧告の内容を勘案した給与勧告を行っている。また、地方自治体の人事委員会の勧告は、人事委員会をもたない自治体の給与改定にも影響する。

川本委員長は、「本年度の勧告は、コロナ禍もあって各市町村において、民間企業の支給月数が下がっていることから、一時金は極めて厳しいものであることも当初から想定されていた。さらには月例給についても直前までマイナス改定も十分にありえるのではないかとされていた」とし、「早い段階からの各レベルでの交渉を積み上げ、組合署名などに取り組んできた」とこれまでの取り組み経過を説明した。

一時金について0.15月の引き下げ、月例給については現状維持となった勧告の内容について川本委員長は、「一時金が昨年に引き続いて引き下げとなったことは、コロナ禍で住民のために懸命に奮闘する現場の状況を考えると極めて残念」と述べるとともに、「一時金のマイナス部分が期末手当を対象としていることは、スタートしたばかりの会計年度任用職員には勤勉手当が支給されていない実態があることを考えれば問題」だと強調。格差解消の取り組みを強固にすることとともに、関係法令の改正の必要性を主張した。

賃金改善などに取り組む2021秋季年末闘争については、「今回は地方でもマイナスの改定が予想されるなかで、コロナ禍にありながら奮闘している組合員の気持ちを当局に理解させる、さらに労働組合が闘う姿を組合員に示していくことが大切」と強調した。

公共サービスの重要性を発信する

新運動方針は、公共サービスと人員の削減が続くなかでの組織のあり方を懸念しており、今後の運動で基軸とすべき課題について、① 地域公共サービスの復権 ② 組合活動の原点への回帰 ③持続可能な組織体制の回復――の3点を掲げた。

地域公共サービスの復権では、はじめに、重層的なセーフティネットの構築について記述。「地域のセーフティネットを相互につなぐ取り組みは、自治体が主体となることによって、自治体首長や議員といった要求を訴える先も、各種法人や市民団体といった参加する層も、重層的になりえる。さらに、予算配分や人員配置の重点化といった課題への関与も可能であることから、実効性・実現性も高めることができる」などとしている。

また、公共サービスのあり方を議論する土台づくりに向け、コロナ禍などで公共サービスに対する市民の関心が高まっていることを受けて、「『すべての人が平等に恩恵を享受するための質の高い公共サービス』『公共サービス労働者の賃金・労働条件の改善』を今まで以上に自信をもって訴えていく必要がある」と記述。2021春闘で展開した「公共サービスにもっと投資を!」キャンペーンを発展・強化しながら公的サービスの役割と労働者の処遇改善を内外に力強く発信することを目指すなどとした。

そのほか、「公助」の強化や「共助」の促進も重要になると指摘。「充実した公的サービスを幅広く実施していくことを目指すとともに、その裏付けとなる『強い財政』が必要」として、研究機関などと連携した共通認識の基盤づくりや、拡充していくべきサービスの具体的内容と工程表を明らかにすることの必要性などを提示している。

職場・現場からの働き方改革の実現を

2つ目の組合活動の課題については、はじめに人員確保について、「賃金・労働条件の改善は当然ながら、多様化する業務に対する圧倒的な人員不足は、組合の重要課題にあげられるようになってきた」と記述。相次ぐ大規模自然災害やコロナ禍の影響も踏まえ、緊急時における体制確保も含めたリスク管理の面からも十分な人員の確保の重要性を強調している。

また、「健全・安全で働きがいのある職場づくりのためには、長時間労働の是正、年休・代休の取得促進、人員確保を一体と捉えた、職場・現場からの働き方改革が不可欠」としている。

非正規労働者の処遇改善と組織化については、2020年4月からスタートした会計年度任用職員について、「任用の回数制限の設定は、積み重ねられた業務経験を失うものであり、質の高い公共サービスを提供していくことに対する重大な損失」として、任用回数の上限撤廃に向けた早急な取り組みの必要性を主張している。

運動の積み重ねと仲間意識の醸成が重要に

3つ目の組織体制の課題については、単組役員の負担感の増加や交渉経験の不足、組合活動の低調さなどにより「組合の存在意義が見えにくくなり、それが新規採用者を含めた組織率の低下につながり、結果として、さらに組合の担い手不足を招く」状況に陥りつつあることを指摘。「性差・性意識、年齢差、雇用形態差を超えた幅広い層の組合員に、活動への参画の機会を確保することで、これまで認識されにくかった課題の発見につなげることが可能となる」として、その課題解決に向けた運動の積み重ねと仲間意識の醸成の重要性を強調した。

ほかにも、組合活動をサポートするために県内単組間の横の連携の強化や、県本部間の交流を促進する仕組みを検討するなどとしている。

川本委員長は、「小さなことでも組合員の要望や悩みをくみ上げ、そのなかから何かを変えることができれば、確実に仲間意識を強め、組織が強まることになる」と強調した上で、「交渉をはじめとした労働組合としての取り組みの積み重ね以外に、処方箋はない。組合はみんなでつくるものという意識をいかに共有できるかということが大切」と述べた。

川本委員長体制が4期目へ

政治情勢について、川本委員長は、支持する立憲民主党に対し「野党第一党として野党間の連携をしっかりと強め、今日の厳しい環境のなかで苦闘する国民が求める政策を示して総選挙で闘ってもらうことを強く求めていきたい」と発言。来年度の参議院議員選挙において、職場・組合員の声を直接国会に反映させるために、組織内候補である鬼木誠・書記長の勝利を目指すとした。

役員改選では、3期(6年間)委員長を務めた川本氏(北海道本部)が再選された。書記長は、鬼木誠氏(福岡県本部)にかわり、山形県本部の伊藤功氏が就任した。副委員長は、青木真理子氏(島根県本部)、藤森久次氏(三重県本部)、書記次長は木村ひとみ氏(大阪府本部)という顔ぶれとなった。