環境変化に対応した組合員の営業活動や働き方を支援/生保労連定期大会

2021年8月27日 調査部

[労使]

生保労連(松岡衛委員長、23万8,000人)は8月23日、都内でオンライン併用の定期大会を開き、2021年度の運動方針を決めた。新運動方針の柱は、① 生保産業の社会的使命の達成 ② 総合的な労働条件の改善・向上 ③ 組織の強化・拡大 ④ 生保産業と営業職員の社会的理解の拡大――の4本となっている。労働条件の改善・向上では、2022春闘に向けた「総合生活改善闘争・基本方針」も提示。統一闘争を積極的に推進するなかで、コロナ禍での「社会環境の変化に対応した組合員の営業活動や働き方の変革を支援する」考えを示している。

感染症拡大に伴う変化が雇用・労働条件に及ぼす影響への対応を

運動方針の1つ目の柱の「生保産業の社会的使命の達成」では、「産業別組合としての責任ある行動が一層求められるなかで、生活保障産業の労働組合である生保労連に求められる社会的役割はさらに高まっている」と指摘したうえで、「健全な産業づくりや生保産業の産業別労働組合ならではの活動・政策提言等を通じて、社会に一層貢献し、生保産業の社会的使命の達成をはかる」ことを強調している。

具体的には、「組合員一人ひとりが自らの会社や仕事により一層の誇りを持ち、将来への希望を持って働くことのできる」経営の健全性向上に取り組む。推進にあたっては、「コロナ禍も相まって多様化・個別化する生保各社の経営戦略・経営状況、中期的方針等を把握し、課題認識の共有をはかる」とともに、「コロナ禍による国内の経済・景気動向、企業業績への影響を注視しつつ、感染症の拡大に伴う営業活動の変化等が、生保各社の事業や業績、組合員の雇用や労働条件に及ぼす影響の把握に努め、必要な対応をはかる」などとしている。

また、国民が安心できる生活保障をつくるための税・社会保障に関する政策の策定・提言を行うほか、政策活動の効果的な推進に向けて支援議員との連携を強化。連合の政策にも生保労連の政策がより反映されるよう意見反映に努める。さらに、生命保険に関連する規制改革や保険商品の募集・勧誘ルールをめぐる動向、郵政民営化への対応など、生保産業の健全な発展をめざす産業政策の取り組みも強化する。

「コロナ禍での対応を組合員の働きがい・生きがいや生産性向上につなげる」(松岡委員長)

松岡委員長はあいさつで、コロナ禍で先の見通せないなかでの社会的使命について、「将来不安を払拭する『生命保険』の意義・重要性はより一層高まっており、生保産業の役割発揮がこれまで以上に求められている」との認識を示したうえで、職場では非対面・非接触での営業活動やテレワークなどの柔軟な働き方が広がりつつありことを紹介。コロナ禍で進んだ業務への対応が「いずれ訪れる『アフターコロナ』を見据えると、これからは感染防止対策の観点にとどまることなく、組合員一人ひとりの働きがい・生きがいや生産性の向上につながるよう、いかに前向きに活用していくかが重要だ」などと訴えた。

統一闘争を通じて総合的な労働条件の改善・向上をはかる

2つ目の「総合的な労働条件の改善・向上」は、「組合員の意識や取り巻く環境が変化していくなか、『人への投資』を通じて安心と働きがいの持てる職場・ルールをつくることが一層求められている」との認識のもとで、「統一闘争を通じた共闘効果の発揮や相場形成、各組合の取り組みに資する情報交換・情報提供などで、組合員の総合的な労働条件の改善・向上をはかる」考え。2022春闘も包含した「総合生活改善闘争」の基本的考え方を踏まえ、年間を通じた全組合参加の統一闘争に取り組む。

社会環境の変化に対応した働き方の実現に取り組んだ21春闘

生保労連では2004年度から、春闘を「労働諸条件全般を見据えた総合的な生活改善闘争」と位置付け、年間を通じた統一闘争を進めてきた。2018年度には、中期ビジョン「チャレンジビジョン2030」を策定し、労働条件の引き上げ・底上げ・安定化に取り組む重要性を再確認している。

21年度も同ビジョンを踏まえ、統一取り組み課題として ① 経営の健全性向上 ② 営業職員体制の発展・強化 ③ 賃金関係 ④ ワーク・ライフ・バランスの実現 ➄ 多様な人材が活躍できる環境整備――の5本柱を設定し、秋季・春季を通じた取り組みを展開。コロナ禍を踏まえ、「社会環境の変化に対応した働き方の実現に向けた取り組みの推進」を全ての加盟組合が取り組む「統一共通課題」に設定して、「生活様式等の変化に対応した働き方の実現」と「『生産性の高い働き方』と『生活時間の充実』の相乗効果をより意識した取り組みの推進」に年間を通じて取り組んだ。

全組合が資格・給与保障等の「下支え」の対応を引き出す/営業職員

大会で報告された「2021春闘の取組みの成果と課題」によると、営業職員では、賃金改善について10組合が取り組んだ結果、全ての組合で収入の確保に向けた資格・給与保障等の「下支え」に関する対応を引き出したほか、「支給規定上の改善」(2組合)、「新契約活動に対する労働評価」(6組合)、「保有・保全活動に対する労働評価」(4組合)、「資格格付基準の緩和」(5組合)「臨時・特別措置の実施」(10組合)、「施策関係」(2組合)などの回答を得た。

生保労連では、「各組合は『賃金改善の定義』を踏まえた幅広い内容の要求を行ったことから、着実な成果があった」ことを評価。一方、今後の課題として、「資格・給与保障等の『下支え』については、緊急事態宣言等に伴い実施された特別対応が終了した後の状況を注視するとともに、雇用・労働条件面への影響や実態の把握に努める必要がある」ことなどを挙げている。

環境変化を踏まえた処遇改善の回答引き出しも/内勤職員

内勤職員の賃金改善は、月例給与の引き上げに7組合、臨時給与に12組合、年収制に3組合が要求を掲げたほか、6組合がパート・契約社員の賃金改善に取り組んだ。その結果、月例給与で2組合が「前年同水準の昇給ファンド獲得」を引き出したほか、臨時給与では3組合が「昨年を上回る水準のボーナスファンド獲得」や「現行を上回る支給水準の獲得」等、2組合が「特別対応分を含めた現行水準の維持」の回答を得た。年収制でも、1組合が「現行を上回る支給水準」を獲得。パート・契約社員の処遇改善では、「現行を上回る支給水準」(1組合)などの回答を引き出している。

内勤職員関係では、ほかにも「在宅勤務手当(月額ベース)の支給」「テレワーク手当(一時金ベース)の支給」「全従業員を対象とした特別一時金の支給」「在宅勤務の利用できない従業員を対象とした特別手当の支給」などの社会環境の変化を踏まえた処遇改善の回答を引き出した組合もあったという。

生保労連は、「コロナ禍の影響を受け、社会環境が変化する中での組合員の頑張りを踏まえた最大限の対応が示された」などと評価する一方、「取り巻く社会・経済環境が大きく変化している中、賃金改善の考え方について、一層の定着・浸透をはかる必要がある」などと指摘している。

22春闘でも統一闘争を積極的に推進

こうした結果を踏まえ、大会では2022春闘の基本的な考え方や取り組み課題を含めた「総合生活改善闘争・基本方針」を確認した。前年と同じ5つの統一取り組み課題を設定。「本年度も、組合員一人ひとりが『働きがい・生きがい』を実感できるよう、総合的な労働条件の改善・向上に向けた統一闘争をより積極的に推進する」としたうえでコロナ禍での組合員を取り巻く影響に注視しつつ、「社会環境の変化に対応した組合員の営業活動や働き方の変革を支援する」方針だ。

ワーク・ライフ・バランスや職場ジェンダー平等の取り組みも

なお、総合的な労働条件の改善・向上では、ワーク・ライフ・バランスの実現や職場のジェンダー平等にも言及している。ワーク・ライフ・バランスは、総合生活改善闘争の統一取り組み課題に設定して実現に向けた取り組みを推進する。ジェンダー平等についても、性別を問わず誰もが力を発揮できる職場づくりを進めるために、総合生活改善闘争のなかで積極的な取り組みを展開。「ジェンダー平等推進委員会」を設置して、「現状および女性活躍推進法への対応状況、LGBTに関する取り組み、各組合の課題意識等について意見交換を行うとともに、具体的な推進策の検討を行う」としている。

こうした点について、松岡委員長は「約9割を女性が占める生保産業では、女性の活躍がさらなる産業の発展や組合活動の活性化につながるという基本認識であり、生保産業が労働界や社会全体をリードすべき課題だ」などと指摘。「ジェンダー平等に関しては、総労働時間の短縮や男性育休の取得推進等のワーク・ライフ・バランスの取り組みと密接不可分の関係にある」として、両課題に一体的に取り組むことで相乗効果を発揮していく考えを示した。また、こうした課題の背景に「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が障壁の一つと指摘されている」と述べ、意識改革の推進にも取り組む姿勢を強調している。

価値観や生活様式の変化を踏まえた組織運営を

運動方針の3つ目の柱となる「組織の強化・拡大」では、「各組合・組合員が抱える課題へのアドバイス機能の強化、組合活動への参加の促進、政策実現に向けたネットワークの強化などを通じて、働く仲間との絆・つながりを深め、組織の強化、拡大をはかる」考え。加盟組合との日常的な情報交換や連携強化をはかるなかで、「諸会議・行事の開催にあたっては、各組合のニーズやウィズ/アフターコロナにおける価値観や生活様式の変化等を踏まえた効果的・効率的な運営に努める」ことや、雇用・組織問題を抱える組合への支援を強化するとともに、ユニオンリーダーの養成や組合間の相互交流もはかる。さらに、組合活動の男女共同参画や未組織労働者の組織化、組合活動の「見える化」なども進める。

4つ目の「生保産業と営業職員の社会的理解の拡大」では、「生保産業と営業職員が果たしている役割を対外的に正しく伝え、その社会的イメージを向上させることは、今後も生保産業が発展し、働く者の働きがい・生きがいを向上させていくうえで必要不可欠となっている」として、広報・PR活動の強化や、社会的理解の拡大をはかることなどを掲げている。