「いのちとくらしと雇用と地域をまもる」運動を強化/全労連評議員会

2021年8月18日 調査部

[労使]

全労連(小畑雅子議長、73万8,000人)は7月28、29の両日、第61回評議員会をオンライン開催し、2020年の大会で決めた活動方針の補強を確認した。補強方針は、「公正な社会へ、いまこそ労働組合 いのちとくらしと雇用と地域をまもろう」を呼び掛け、日常生活を活性化させる組織拡大や、8時間働けば暮らせる社会の構築などを運動の基調に据え、今後1年間の取り組みの強化を訴えている。

ローカルユニオン活性化やSNS等の活用で組織強化・拡大を

補強方針は、① 日常活動の活性化、組織拡大強化 ② 8時間働けば暮らせる社会の構築 ③ 憲法を守り生かし、要求実現可能な政治への転換――を柱に、今後1年間の取り組みを強化するとしている。

組織拡大強化の取り組みでは、昨年の大会で策定した「組織強化拡大4か年計画(第2次新4か年計画)」の2年目として、「既存組合の拡大と地域の未組織労働者の拡大の2本柱を軸に、要求実現をめざすあらゆる活動と組織化を結合させる取り組みを追求する」構え。「すべての地方・地域に単産の旗を立てよう」を合言葉に、単産と地方・地域組織のつながりを強化する取り組みを図る。

既存組織の日常の組合活動の強化や、地方・地域での労働相談からの組織化、上部団体を持たない労働組合への訪問・懇談等の重要性を明記しているほか、「非正規労働者、失業者、年金者、学生、フリーター、請負型の労働者、移住労働者などあらゆる労働者の組織化を視野にいれ、地域未組織労働者の拠り所としてローカルユニオンの活性化をめざす」ことや、「SNS、ツィッター、ホームページなどの活用で労働組合の活動を広く伝え、つながりをつくる」ことも盛り込んだ。

8時間働けば暮らせる社会の構築を

また、補強方針では、ディーセントワークなどの「8時間働けば暮らせる社会の構築」実現に向けた取り組みの具体化も掲げている。

コロナ禍での緊急対応として、いのちと暮らしを守ることを最優先に、「通常のスケジュールにとらわれず、緊急のキャンペーンを随時検討」する。感染拡大防止のための ① 医療・介護・福祉・保育労働者などをはじめ大規模な検査の実施による感染拡大の防止 ② ワクチン接種の促進 ③ 自粛等に伴う補償の確保――を早急に行うよう政府に求めていくとしている。

一方、2022年春の通常国会での全国一律最低賃金制度の法改正を目指す「全国一律最賃アクションプラン2024」の取り組みでは、「貧困と拡大の加速度的な拡大に対応する具体策となる『最低賃金全国一律1,500円』の実現をめざす」考え。「すべての労働者の雇用を守り切る、経営者の責任を明白にさせる職場での運動」の促進や、「技術革新による産業構造の変化のもとで、雇用・労働条件が劣化しないよう職業転換と能力開発の機会を労働者に保障する制度づくり」も求めていく。

ジェンダー平等推進の運動を強化

補強方針は、「コロナ禍で女性の雇用劣化やDV、自殺の急増が浮き彫りになった」ことにも言及。「政治家や管理職などあらゆる意思決定の場に女性等を増やすことはもとより、法律や経済活動の構造に『差別が存在していること』を可視化し、認識するところからやり直す必要がある」として、ジェンダー平等を進める運動を強化する姿勢を鮮明にしている。

具体的には、全労連にジェンダー平等推進委員会(仮)を立ち上げ、① 徹底した学習の強化、要求・政策づくり ② 女性役員比率の向上、大会などの方針決定の場への女性比率の向上 ③ 女性組合員の組合活動の参加、日常の組合活動にすべての組合員が参加しやすいスタイルの確立――などを追求していく。

「最賃引き上げは男女間賃金格差をなくし、ジェンダー平等に向かうためにも重要」(小畑議長)

小畑議長はあいさつで、「コロナ禍において、とりわけ女性労働者や非正規労働者が、生活できないほどの低賃金に置かれていることが明らかになった」ことを指摘。全労連女性部が参加している「女性による女性のための何でも相談会実行委員会」が7月に開いた相談会でコロナ禍での解雇を含めた労働問題の相談が最多だったことを報告しつつ、「低賃金のもとで貯蓄もなく、1カ月の収入の一部が減るだけで生活が成り立たなくなってしまう層が大きな塊としてできていたことがコロナ禍で明らかになったが、それがもう1年半も続いている」などと述べ、労働者一人ひとりが8時間働けば普通に暮らせる構造を作り出していく必要性を強調した。

さらに、最低賃金の取り組みについても触れ、「人間らしい暮らしをするためには、全国どこで暮らしていても、1,500~1,600円必要であることが、『最低生計費試算調査』で明らかになっている」と述べたうえで、「引き上げは、低過ぎる賃金を直接上げる大きな効果をもつものであり、男女間の賃金格差をなくし、ジェンダー平等に向かうためにも重要だ」として、最低賃金の大幅底上げや全国一律最低賃金制度の実現を訴えた。

コロナ後の社会を見据えた問題提起も

評議員会では来夏の定期大会までに議論を深める問題提起「憲法が生きるコロナ後の社会と全労連運動の飛躍へ討議を呼びかける」も確認した。

問題提起は、コロナ禍で「社会的転換の方向をめぐって激しいせめぎ合いが続いている一方で、組織的には主体的な力量の不十分さや弱点の克服に課題を残している」ことを指摘。労働者の要求の前進のためには組織化が決定的な要素になるとして、① 産業別労働組合のさらなる強化と拡充を図る展望 ② 賃金、労働条件の改善へ国民春闘の再構築 ③ 組織強化拡大と学習・教育活動の再構築 ④ さらなる飛躍をめざす要求・政策づくり――について検討を行っていく考えだ。