単組の奮闘で賃金改善の流れが継続と評価/JAMの2021春季生活闘争中間総括

2021年6月2日 調査部

[労使]

機械、金属関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長、約37万人)は5月28日、オンラインで中央委員会を開催し、2021春季生活闘争の中間総括を確認した。最新の集計では、賃金改善分の獲得額の平均は1,306円となっており、中間総括は「厳しい企業状況の中においても、単組の奮闘が賃金改善の流れを継続した」と評価している。

賃金改善分の獲得額は増加

賃上げ交渉の進捗状況をみると、交渉単位組合(1,521組合)に占める回答・妥結した組合の割合は、5月上旬で68.1%(1,036組合)となっている。

賃金構造維持分を明示している組合で回答を受けた組合は727あり、そのうち賃金改善分を獲得したのは、中間総括がまとめた時点で333組合。賃金改善獲得額の平均は1,306円となっている。前年同時期と比べると、賃金改善分の獲得組合数は約60組合減ったものの、獲得額は前年の1,254円を52円上回っている。賃金改善分の獲得額を規模別にみると、300人未満が1,358円と全体平均を上回った。

平均賃上げの状況をみると、要求額の平均7,335円に対し、回答額の平均が4,736円、妥結額の平均が4,763円となっている。同一単組で前年と比べると要求額で624円、妥結額で88円低下している。

個別賃金水準の開示状況は横ばい

JAMが注力する個別賃金の取り組み状況をみると、個別賃金の水準が開示されている単組数は、30歳現行水準で500組合、35歳現行水準で487組合などとなっており、前年同時期とほぼ同数となっている。

到達状況をみると、JAMがミニマム達成基準として示している「JAM一人前ミニマム基準」(30歳が24万円、35歳が27万円)に現行水準が届いていない組合の割合は、30歳で58.2%、35歳で59.3%と6割弱に及ぶ。ともに到達基準を超えている単組は1割程度となっている。

一時金の回答月数は前年同時期から若干の低下にとどまった。企業内最低賃金(18歳以上対象最賃協定)については、協定額の平均が16万4,417円となり、昨年(16万3,150円)より高い水準となっている。

「単組の奮闘が賃金改善の流れを継続した」と評価

今次闘争結果の特徴点について中間総括は、「厳しい企業状況の中においても、単組の奮闘が賃金改善の流れを継続した」とし、「コロナ禍による一時休業の実施や残業の減少は、 所定内賃金の低さを浮き彫りにし、賃金水準の維持・向上に繋がった。さらに、事業活動の 継続に対する組合員の協力 、労働力不足の中における人材の確保・定着の課題も寄与している」と述べた。

前年を上回った賃金改善額について、「賃金改善要求の根拠として、各種手当、時間短縮 、 継続雇用者、中途採用者の水準是正など、賃上げ原資確保に向けて、単組課題を積み上げる 工夫がなされた。また、先行する単組の賃金改善・是正額の獲得は、全体の流れに寄与した」と、その要因を分析した。

個別賃金移行は継続的に拡大が鍵

今後の課題について、まず、JAMが移行に注力する個別賃金要求については、「格差是正の核となる個別賃金の推進には、地方JAMにおける単組サポート強化、組合員賃金全数調査の継続と拡大、30歳、35歳の賃金水準の開示などを継続する必要がある」とし、「めざすべき水準への到達闘争であることから、一時的な経済、企業状況の悪化に関わらず継続的に拡大出来るかが課題である。水準にこだわった賃金要求への転換をはかるためには、男女間差、雇用形態間差、世代間差、中途入社と直入者の差、業務負荷、業務レベル、時間外労働の差、仕事と賃金の分配など様々な視点で分析を行い、一人前労働者の設定や納得性の高い賃金構造に向け 職場討議による合意形成が必要である」と強調した。

また、平均賃上げ要求から個別賃金要求に転換していくには、「一定の時間が必要となる」ことから、「通年の取り組みとし 継続した組合活動が出来るかが課題」だと指摘した。

残業代を含まない賃金水準にこだわった取り組みを

賃金水準を上げていくうえでの課題については、残業代を含めた月収ベースと区別するために、「労働時間規制と合わせた賃金の絶対水準にこだわる取り組みをいかに進めるかが課題」とし、「コロナ禍の休業実施や時間外労働の減少から、毎月の手取り額が減少したことにより、所定内賃金の水準の低さが浮き彫りとなった。生活不安や企業の魅力を損なわないよう、あるべき水準の議論を進めることも重要である」と言及した。

あいさつした安河内会長は「先行する大手組合が賃上げの流れを止めない状況をつくり、中小が週40時間で飯を食える賃金の絶対額にこだわる結果を引き出した」と評価した。