コロナ禍でも賃上げの流れが継続と評価/連合の2021春季生活闘争中間まとめ

2021年6月2日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長、約689万人)は1日、オンラインで中央委員会を開催し、2021春季生活闘争の中間まとめを確認した。中間まとめは、妥結内容が確認できる組合の半数近くが賃金改善分を獲得していることなどから、「コロナ禍においても賃上げの流れが継続していると受け止める」と総括。平均賃金方式での賃上げ率は最新の集計時点で1.81%と前年同時期を下回るものの、中小の賃金改善分の引き上げ率が全体平均を上回っていることなどから、格差是正についても「前進している」と評価した。

賃金改善分を獲得した組合の割合は48.6%

中間まとめによると、5月6日時点で、月例賃金の改善(定期昇給・賃金カーブ維持含む)を要求したのは5,361組合で、妥結済みの組合は3,111組合となっている。妥結内容が確認できるのは、そのうちの2,006組合で、このなかで賃金改善分を獲得した組合の割合は48.6%と半数近くに及んだ。

平均賃金方式で要求・交渉を行った組合のうち、3,205組合が回答を引き出しており、加重平均の定昇相当分込みの賃上げ額は5,347円、率では1.81%となっている。前年同時期と比べると、額・率ともに低下した(前年同期比336円減、0.12ポイント減)。

賃金改善分などの賃上げ分が明確に分かる1,213組合で、賃上げ分の加重平均をみると、額は1,635円、率は0.56%。規模別にみると、300人未満が1,379円・0.57%で、率では中小が全体平均を上回る結果となっている。

一方、有期・短時間・契約等の労働者の賃上げでは、時給が加重平均で21.88円、月給が4,442円で、ともに前年同期を下回ったが、賃上げ率にすると時給は2.13%、月給は2.03%となり、一般組合員の賃上げ率を上回っている。

大手追従・大手準拠の転換も前進と評価

こうした結果から中間まとめは、「コロナ禍においても賃上げの流れは継続していると受け止める」とし、平均賃金方式での賃上げ率が3月以降ほぼ維持されていることから、「『大手追従・大手準拠などの構造を転換する運動』がさらに前進している」とした。

また、「中小の『自らの賃金水準』を意識した取り組みがさらに前進し、有期・短時間・契約等で働く者の賃上げは、一貫して一般組合員を上回る」として、「分配構造の転換に向けて、格差是正と『働き方の価値に見合った賃金水準』を意識した動きが前進しているものと受け止める」と評価した。

あいさつした神津会長は、こうした成果があった一方で「コロナ禍の影響を大きく受けている業種・業態においては、賃上げ要求を見送らざるを得なかった組合も少なくない」と指摘。「私たちは、当該分野における各組織が展開している、将来に向けた展望を確保するための懸命な取り組みを、しっかりと支えていかなければならない」と強調するとともに、「成果を社会全体に広げていくことが重要であるということを改めて強調したい」と述べた。

新たなジェンダー平等計画は2030年まで

中央委員会ではまた、労働運動への女性の積極的な参加を進めるための新たな計画である「ジェンダー平等推進計画」のフェーズ1の内容を最終確認した。計画期間は、今年の10月1日から2030年9月30日までで、2024年9月30日までをフェーズ1、それ以降をフェーズ2としている。

今回確認したフェーズ1の計画は、「重要なのは組合民主主義の観点から、連合本部・構成組織・単組・地方連合会それぞれの組織における女性組合員比率に応じた“意思決定の場”への参画機会を確保すること」だとし、「このことを改めて周知し、追求する」と強調。

スローガンとしての「運動目標」を掲げたうえで、必ず達成しなければならない「Change(チェンジ)!達成目標」と、推進すべき「Challenge(チャレンジ)!推進目標」を設定した。

2024年9月末までに連合の上3役に女性を

達成目標では、連合本部、構成組織・単組、地方連合会は2021年10月以降、組合員の男女比率を毎年調査し、把握すると設定。構成組織・単組は2024年9月末までに、女性役員(会計監査を除く)を選出する、としている。

また、連合本部、地方連合会は2024年9月末までに、執行機関への組合員比率に応じた女性の参画機会を確保するとし、連合本部は同時期までに、上三役と言われる会長、会長代行、事務局長に女性を常時登用し得る環境整備に、より主体的に取り組んでいく、とのハードルを設けた。

一方、推進目標では、連合本部、構成組織・単組、地方連合会は、大会や中央委員会等の議決機関への組合員比率に応じた女性の参画機会を確保する、とし、構成組織や単組は執行機関への組合員比率に応じた女性の参画機会を確保するなどとしている。