中小が大手を上回る賃金改善分を獲得する流れが継続/金属労協の3月末までの回答状況

2021年4月7日 調査部

[労使]

金属労協(JCM、髙倉明議長)がまとめた3月末現在の回答集計によると、賃金改善分を獲得した組合数は昨年に比べ減少したものの、平均獲得額は1,254円と昨年をやや上回る水準となっている。中小労組の改善分の獲得額が大手を上回る傾向は今年も維持されており、中小単組が多いJAMでは、300人未満の平均獲得額が6年連続で300人以上を上回った。

賃金改善分の要求組合数は減少

3月31日現在の回答集計によると、JCMを構成する3,180組合のうち、今次闘争で要求を提出しているのは2,518組合。そのうち、賃上げ(賃金改善分)の要求を提出しているのは1,815組合(要求組合比で72.1%)で、賃金改善分の平均要求額は2,958円。前年同時期と比べると、要求提出組合は前年(2,592組合)と大きくは変わらないが、賃金改善分を提出している組合数は335組合減少。要求額は759円減少している。

回答をすでに受けているか、集約中の組合数は1,296組合で、うち、1,068組合が賃金構造維持分を確保。賃金改善分を獲得したのは498組合(賃上げ要求組合比で27.4%、回答・集約組合比で38.4%)で、賃金改善分の平均獲得額は1,254円だった。前年同時期と比べると、賃金改善分の獲得組合数は227組合減少したが、賃金改善分の平均獲得額は56円上回った。

300人未満の改善分は平均1,400円で大手上回る

賃金改善分の平均獲得額を組合規模別にみると、「1,000人以上」が923円、「300~999人」が1,130円、「299人以下」が1,400円と、規模が小さい組合ほど高い獲得額となっている。

年間一時金については、要求方式の組合が1,980組合、業績連動方式が239組合で、回答・集約組合数は897組合となっている。平均月数は4.34カ月と前年同期(4.50カ月)を下回ったものの、前年実績を上回った組合数は201組合と前年(153組合)を上回った。

2日にリモート会見を行った髙倉議長(自動車総連会長)は、「規模が小さい組合になるほど賃上げが高くなっており、中小が大手を上回る構図が定着した」と評価した。浅沼弘一事務局長は、回答・集約組合に占める賃上げ獲得率の38.4%について、「40%を下回ったのは(賃上げが復活した2014年以降で)初めて」と厳しい交渉環境を示唆する一方で、「299人以下の平均獲得額1,400円は大手より3割高い水準であり、評価できる」と述べた。

自動車では5割、電機では7割が改善分を獲得

リモート会見には、JCMを構成する各産別のトップも参加し、それぞれの最新の回答状況を報告。自動車総連の状況について髙倉会長は、2日午前9時の時点で全単組の50.9%にあたる524組合で回答を引き出しており、平均賃上げ額全体の平均額は4,603円で、約50%にあたる263組合で賃金改善分を獲得していると話した。また、規模299人以下の賃金改善分の平均額が大手を上回っていることも報告した。

電機連合の神保政史委員長は、約半数の組合で集約済み・集約方向となっており、7割で賃金体系維持分を確保するとともに水準改善分を獲得したと報告。「統一闘争の狙いである波及効果の最大化が図れている」と述べた。

基幹労連の神田健一委員長は、1日までに270組合が要求を提出し、163組合が回答を得たと説明。規模別の賃金改善分獲得額は1,000人以上が1,394円、300~999人が1,278円、299人以下が1,036円と中小が大手を上回る状況にはなっていないものの、「大手が賃金改善分に取り組まないなかで、改善分という観点での努力が見える結果」と評価した。

全電線の佐藤裕二委員長は、3月23日までにすべての組合(34組合)で妥結し、賃金構造維持分の実施はすべての組合で確認したと報告した。賃金改善分は31組合で要求し、18組合で獲得。改善分の平均は537円で前年(670円)を下回ったものの、規模別にみると中小が大手を上回る結果となっていると説明した。

JAMは6年連続で300人未満の獲得額が300人以上を上回る

機械・金属関連の中小単組を多く抱えるJAMの安河内賢弘会長は、JCMでのリモート会見だけでなく、同日に本部でも会見を開き、3月末時点の回答状況を説明した。交渉単位である1,521単組のうち、賃金について要求を提出しているのは1,089単組で、回答を受けたのが684単組、妥結したのが515単組(進捗率45.0%)となっている。妥結の進捗ペースは「昨年と同じ」(安河内会長)。

賃金構造維持分を明示して要求した781単組のうち、賃金改善分の要求を行ったのは606単組。そのうち、改善分を獲得したのは229単組で昨年同時期(276単組)を下回ったものの、改善分の平均額は前年(1,272円)を上回る1,332円となっている。

改善分の獲得額を規模別にみると、「300人未満」が1,392円、「300~499人」が1,485円、「500~999人」が1,069円、「1,000~2,999人」が963円、「3,000人以上」が943円となっており、おおむね規模の小さい単組ほど獲得額が高い。JAMによれば、「300人未満」の平均獲得額が6年連続で「300人以上」の平均を上回った。

安河内会長は、「(先行して交渉する)大手が100円玉を積み上げる交渉を重ね、ベアの流れを継続させたことが大きく、中小労組を勇気づけた」とその要因を語った。