スーパーなど流通部門では昨年を上回る賃上げ額/UAゼンセンのヤマ場回答

2021年3月24日 調査部

[労使]

スーパーなど流通部門では昨年を上回る賃上げ額/UAゼンセンのヤマ場回答

流通・小売、外食、化学・医薬品など幅広い業種の労働者をカバーし、組合員の半数以上をパートタイマーが占めるUAゼンセンでは、主要組合が17日までに先行回答を引き出した。スーパーマーケットやドラッグストアの労組が所属する流通部門では、正社員の賃上げの妥結平均額が前年の水準を上回った。また、パートタイマーの時給引き上げ率が、正社員の引き上げ率を6年連続で上回った。

正社員組合員の賃上げ平均額は前年比331円増

UAゼンセンは、17日を主要組合が先行回答を引き出す「第一のヤマ場」に設定した。18日10時現在での妥結状況をみると、正社員組合員については99組合が妥結。制度昇給とベアなどの賃金改善分を合わせた賃上げ額全体の単純平均は6,935円(2.43%)となった。前年と比較できる組合は91組合あるが、前年と比べると妥結額は331円、率では0.13%上回った。

賃金体系維持分が明確な68組合のベア・賃金改善分などの「引き上げ分」の単純平均は2,197円(0.75%)で、前年の「第一のヤマ場」終了時の結果(2,147円、0.75%)と比べると50円上回った。

流通部門では約7割の組合が前年同額以上

UAゼンセンでは、化学・繊維、医薬などを「製造産業」、流通・小売、百貨店などを「流通」、外食、専門店、食品などを「総合サービス」という三つの部門に分けて組織運営と賃上げ闘争を行っている。部門別に妥結結果を前年比較すると(同組合比較)、「製造産業」では賃上げ額全体の単純平均は6,133円(2.19%)で、前年差マイナス112円(マイナス0.05%)。「流通」では7,013円(2.48%)で、前年差プラス752円(プラス0.29%)。「総合サービス」では7,762円(2.55%)で、前年差マイナス754円(マイナス0.28%)となっている。

UAゼンセンによると、「流通」では、約7割の組合で前年同額以上の妥結額となったという。業種別にみると、食品スーパー(26組合で妥結)が前年比970円プラス、総合スーパー(同7組合)で915円プラスの額を獲得した。

規模別にみると、300人未満の組合の賃上げ額全体の加重平均が、300人以上の組合を上回った。

スーパーやドラッグストアでは2,000円を超える引き上げを獲得

個別組合の妥結状況をみると、繊維素材では、東洋紡労組が「引き上げ分」900円、カネボウ労組が同650円、日清紡労組が同650円、ユニチカ労組が同550円で妥結。全東レ労働組合連合会は、賃金水準が部門の到達水準をクリアしているため、勤務間インターバル制度の導入や在宅勤務制度の拡充など働き方に関する制度改善への原資投入で妥結した。旭化成グループ労働組合連合会も同様の趣旨で、育児・介護等両立支援策の拡充や単身赴任帰宅制度の改定などへの原資投入を獲得。帝人労組は交替手当の改定や通勤手当(車)距離算定方法の見直しなどへの原資投入で妥結した。

スーパーマーケットでは、万代ユニオンが「引き上げ分」4,371円、マルエツ労組が同2,200円、いなげや労組が同2,012円、セブン&アイ労連ヨークベニマル労組が同3,724円などで妥結。ドラッグ関連では、ウエルシアユニオンが「引き上げ分」2,612円、ツルハユニオンが同5,999円、富士薬品ユニオンが同1,664円などで妥結した。

「スーパー、専門店で先行妥結進んだ」(松浦会長)

18日の記者会見で松浦昭彦会長は「今回の妥結状況をみると、前年より妥結組合数は減っている。コロナの影響を受けたり、影響が深刻な業種で妥結組合数が少なくなっている」とし、その一方で、「総じて言えば、スーパーや専門店などで先行しての妥結が進んでいる」と説明。「それぞれの業種で置かれた環境の違いや、多少の厳しさはあっても前年並みの引き上げにこだわろうとの思いを共有した」と話した。

パート時給の平均引き上げ額は24.8円

短時間(パートタイム)組合員の妥結状況(52組合)では、制度昇給とベアなどを含む時給引き上げ全体の妥結額の単純平均は24.8円で、率にすると2.42%。組合員一人あたり(加重平均)の引き上げ率では2.48%で、正社員の引き上げ率である2.38%を上回った。パート組合員の時給引き上げ率が正社員の賃金の引き上げ率を上回るのは、これで6年連続となった。

松浦会長は、今年度の地域別最低賃金の改定額は小幅にとどまったが、「コロナ禍のなかで事業運営を支えたのはパート従業員も変わらない」ことから、「正社員と同程度の賃上げを確保しようという考え方をベースに交渉にあたった」と説明。「おおむね考え方を踏まえた結果で第一のヤマ場は来ることができた」と評価した。

個別組合の制度昇給とベアなどを含む時給引き上げ全体の妥結額をみると、ドラッグ関連ではウエルシアユニオンが30.3円(3.15%)、家電関連ではデンコードーユニオンが31.2円(3.03%)、スーパーマーケットではイオングループ労働組合連合会のイオンビッグ労組が52.2円(4.92%)などとなっている。