テレワーク等の働き方の実態把握と改善要求を/自治労中央委員会

2021年2月3日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、約76万5,000人)は1月28日、都内で中央委員会を開き、「2021春闘方針」を決めた。方針は、春闘を賃金闘争の1年のたたかいのスタートとする位置づけを改めて明確にしたうえで、2021春闘の主要課題として、 ① 賃金改善 ② 会計年度任用職員等の処遇改善と組織化 ③ 職場からの働き方改革――を提示。働き方改革では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的に応急処置的に進められてきたテレワーク等の柔軟な働き方について、実態把握を行ったうえで改善を求める考えを示している。

「1年のたたかいのスタートは、春闘から」の位置づけを明確に

地方自治体の職員の賃金改定は、人事院勧告を踏まえた都道府県等に置かれている人事委員会の勧告などをもとに年度後半期に決められる。2020年は、人事院が10月7日に一時金の支給月数を0.05カ月引き下げる勧告を行い、10月28日には官民格差が僅かなことから月例給の改定を見送ることを報告した。その後、都道府県・政令市等の人事委員会の勧告では、一部の政令市で月例給のマイナス改定が勧告されたものの、「一時金0.05カ月の引き下げ、月例給改定見送り」が大勢を占めた。

一方、自治労は「1年のたたかいのスタートは、春闘から」との位置づけを明確にしたうえで、傘下の単組に対し、自治労の方針に基づき春闘期に要求書を当局側に提出することを求めている。ただし、春闘時期には交渉が決着しないことも多く、2020年の春闘でも要求書を提出した単組は約7割、交渉を実施した単組は約4割にとどまっている。実際には、人事院勧告や各団体の人事委員会勧告の内容が明らかになった秋以降、賃金確定闘争で再び要求提出を行い、最終的な回答引き出しに向けて当局側との交渉を追い込むことになる。

36協定やハラスメント防止策で前進みられる

その一方で、取り組みを行った単組では、36協定未締結の職場で新たに36協定やそれに準じる文書を締結した単組が25あったほか、56の単組でハラスメント防止策への前進回答を得た。こうしたことも踏まえ、方針は「どのような課題であっても、要求・交渉開始後に直ちに解決できるものではなく、年間の闘争サイクルを通じた交渉の積み重ねが不可欠だ」と指摘。「運動の継続性という観点からも非常に重要であり、春闘期の取り組みが賃金確定闘争をはじめとする統一闘争の取り組みの基盤となることを再度認識する必要がある」として、春闘を取り組みの起点とすることの重要性を強調している。

春闘期に少なくとも『1単組・1要求』を

方針は、 ① 賃金改善 ② 会計年度任用職員等の処遇改善と組織化 ③ 職場からの働き方改革――を2021春闘の賃金・労働条件改善の主要課題に設定している。

賃金改善については、「民間春闘の成果が人事院勧告・自治体確定期へと大きくつながっていくことから、地域の底上げ、中小・地場賃金の底支えの民間春闘に積極的に参画する」としたうえで、「すべての自治体単組が、春闘期には職員の給与実態を十分に把握、分析して、単組として目標とする賃金の到達水準の確認を行うとともに、その実現にむけた具体的な運用改善について、少なくとも『1単組・1要求』を行い、労使交渉に取り組む」考えを示した。

具体的な賃金要求・運用改善につなげるためには、単組ごとに賃金カーブの実態を明らかにする必要があるとして、「全単組で男女別や年齢ごとなど賃金実態の点検を徹底」するとともに、「近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインと比較し、具体的な到達目標を設定するため、モデルラインを作成」することを求めている。

なお、自治労では単組の到達目標として、 ① 30歳・24万8,775円 ② 35歳・29万3,807円 ③ 40歳・34万3,042円――の個別ポイント賃金を設定している。

常勤職員との均等・均衡を基本に給与・諸手当の支給を

地方公務員の臨時・非常勤等職員に関しては、「特別職非常勤職員」「一般職臨時的任用職員」「一般職非常勤職員」の制度区分があるなか、2020年4月1日に施行された改正地方公務員法により特別職と臨時的任用職員の範囲を厳格化する一方、一般職としての「会計年度任用職員」が新たに制度化され、地方自治体で働く臨時・非常勤職員の大半が会計年度任用職員に移行している。

自治労の「賃金・労働条件制度調査(2020年6月1日基準日)」によると、自治体の職員全体に占める会計年度任用職員の割合は全体平均で38.3%にのぼり、「自治体行政運営は会計年度任用職員抜きでは成り立たない」(自治労)状況となっている。一方、同調査によると、会計年度任用職員全体の平均時給は1,084円、平均月給は17万4,000円で、病気休暇や看護休暇等も7割超の自治体が無給としているなど、賃金・労働条件面での課題も浮き彫りになった。

こうした現状を踏まえ、2021春闘では「会計年度任用職員制度の整備状況チェックリスト」を活用して、給料(報酬)や手当をはじめとする労働条件全般の点検・課題の洗い出しを行う。給与および諸手当については、自治労の自治体最低賃金 ① 月額16万5,900円以上 ② 日給8,300円以上 ③ 時給1,070円以上――を最低として、「常勤職員との均等・均衡を基本に支給を求める」考えだ。

テレワークやカスタマー・ハラスメントへの対応も

職場からの働き方改革では、まず、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的に応急処置的に進められてきたテレワーク等の柔軟な働き方について、「勤務時間管理の難しさ、コミュニケーション不足を招きやすいといった点が指摘されているが、労働者のワーク・ライフ・バランスに資する側面もある」として、 ① 導入にあたっては事前に労使交渉を行い、労働条件等の確認を行うとともに、職員の希望を尊重する ② すでに制度を実施している場合は、職員へのヒアリング等で実態を把握したうえで労働条件の改善を求める――必要性を指摘している。

また、「コロナ禍への対応をはじめ、住民サービスを提供する自治体職員に対する一部住民からの度を超した要求・クレームが顕在化している」として、カスタマー・ハラスメント対策への対応をパワー・ハラスメント対策とあわせて行うことも求めている。

鬼木書記長を組織内候補に擁立

中央委員会では、「第26回参議院選挙闘争の推進について」も確認した。2022年の第26回参議院選挙の基本目標を、「国民多数派に対応した『中道』『リベラル』勢力の結集をはかる」としたうえで、取り組みにあたっては、「立憲民主党を基軸とし、広範な市民とも連携する」などと明記。比例代表選挙の取り組みで、自治労本部書記長の鬼木誠氏を同党から組織内候補として擁立することを決めた。