6,000円を基準として「人への投資」を要求/JAMの2021春闘方針

2021年1月22日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長、36万6,000人)は19日、リモート方式で中央委員会を開催し、2021年春季生活闘争方針を決定した。賃金の絶対額を重視した取り組みを追求すると同時に、単組の課題を積み上げ、6,000円を基準として「人への投資」を要求するとしている。

闘争準備期間の取り組みも強化

方針は、今次闘争に向けた基本的なスタンスについて、「2021年春季生活闘争では『賃金の社会的変革を進める』取り組みを継続する」として、中小の賃金水準の引き上げや大手との格差是正の取り組みなどを継続する構えを強調。また、「『春季生活闘争準備期間の取り組み』を強化する」として、各組合が要求策定に向けた職場集会・研修会などの組合員との対話活動を早期に開始することによって、組合員との闘争の役割に関する意識を共有したうえで要求策定することを打ち出した。

さらに、「一日8時間以下の労働時間で、ゆとり豊かさのある生活ができる賃金水準を確保し、消費を喚起し得る所定内賃金の改善を行う」として、社会的水準の確保、「産業内」・「企業内」の格差是正に向けて、今年も個別賃金要求方式の考え方を基本として要求・交渉にあたるとしている。

6,000円基準は昨年方針と同様

賃金要求の考え方では、「すべての単組は、賃金の『底上げ』『底支え』『格差是正』に向け、賃金の絶対額を重視した取り組みを追求する。自らの賃金水準のポジションを確認した上で、JAM一人前ミニマム基準・標準労働者要求基準に基づき、あるべき水準を設定し要求する」と述べるとともに、連合方針を踏まえ、「JAM構成単組は、あるべき水準との乖離を確認した上で、アフターコロナの時代に向けた分配構造の転換を進める観点から『底上げ』『底支え』と『産業内及び企業内の格差是正』をめざし、賃金構造維持分を確保した上で、所定内賃金の引き上げを中心に、単組の課題を積み上げ、6,000円を基準とし『人への投資』を要求する」とした。

一人前ミニマム基準は 35歳では27万円

具体的な要求基準の内容をみると、絶対額の改善につながる個別賃金要求の基準では、各単組が最低でもクリアすべき一人前労働者の賃金カーブの参考とする「JAM一人前ミニマム基準」(所定内賃金)について、18歳:16万4,000円、20歳:17万7,000円、25歳:20万9,000円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:29万5,000円、45歳:31万5,000円、50歳:33万5,000円と、昨年と同額に設定。

到達基準的意味合いの標準労働者の要求基準については、高卒直入者の所定内賃金で30歳、35歳という2つの年齢ポイントを掲げているが、「全単組が到達すべき水準」である【到達基準】では30歳を27万円、35歳31万円、「到達基準に達している単組が目標とすべき水準」である【目標水準】では30歳を29万円、35歳33万円と設定した。これらも昨年と同額となっている。

年齢別最低賃金基準については、「有期雇用労働者の無期転換や中途採用者の採用時賃金の最低規制として整備が求められており、労働組合の個別賃金水準の一つとして協定化に取り組む」とし、35歳まで、各単組の年齢ポイントの一人前労働者賃金水準の80%を原則とし、高卒初任給を勘案して決定するとともに、これらの考えに基づく「年齢別最低賃金水準」について、18歳:16万4,000円、25歳:16万7,500円、30歳:19万2,000円、35歳を21万6,000円と昨年方針と同額にした。

平均賃上げ要求基準については、「連合方針の賃金引き上げ目安を踏まえ、未組織労働者も含めた春闘相場の波及をめざし、平均賃上げ要求に取り組まざるを得ない単組の要求基準はJAMの賃金構造維持分平均4,500円に6,000円を加え、『人への投資』として1万500円以上とする」とした。

大手との格差広がる一時金は5カ月基準

企業内最低賃金協定については、18歳以上企業内最低賃金協定を締結していない単組では協定締結に取り組み、年齢別協定を締結していない単組では標準労働者(一人前労働者)の賃金カーブを基にした年齢別最低賃金協定を締結するとしている。さらに、有期・短時間・契約等労働者も対象とする全従業員の協定締結を目指す。

一時金については、企業の業績の状況に合わせて回復してきたものの、大企業と中小企業との格差は広がっており、今年も「① 年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする ② 最低到達基準として、年間4カ月または半期2カ月」とした。

日程については、統一要求日を2月24日(水)とし、統一回答指定日は3月16日(火)および17日(水)とした。

あいさつした安河内会長は今次賃上げ交渉に向け、「コロナ後の世界に向けてV字回復を図っていくために、個人消費を冷やさない、賃上げのモメンタムを消すことない春闘をどうすればできるのかということを労使全体で話し合う必要がある」などと強調した。

立憲民主党基軸を確認

中央委員会ではこのほか、第20回定期大会(2018年)で支持・協力政党として確認した旧「国民民主党」が解党したことから、支持・協力政党に関する新たな考え方を確認。「現時点の判断」としたうえで、「『立憲民主党』を基軸とし、連合が支援する政党を『JAMと支持・協力関係にある政党』に位置づける」とした。ただ同時に、連合が支援する政党には国民民主党が含まれることや、共産党を含む共闘には与しないことなども確認した。