2%程度の賃上げを意識して『働きの価値に見合った水準』への引き上げを/JEC連合闘争方針

2021年1月20日 調査部

[労使]

化学・エネルギー関連産業の労組でつくるJEC連合(約11万9,000人、酒向清会長)は1月14日、都内で中央委員会をオンラインとの併用で開き、2021春季生活闘争方針を決めた。闘争方針は、「賃上げの流れを継続し、中小組合や有期・短時間・契約等で働く者の賃金を『働きの価値に見合った水準』に引き上げることを念頭に、連合方針である2%程度を意識したうえで、要求に取り組む」としている。

「将来につながる何らかの成果を勝ち取れるように取り組む」(酒向会長)

冒頭、酒向会長はあいさつで、交渉過程で新型コロナウイルス感染症の影響を受けた昨年の春闘について、「連合方針をもとに賃金の絶対水準にこだわる方針を掲げてスタートしたが、交渉延期やWEB交渉などの影響を受けた組合もあるなか、賃上げ要求は117組合で前年に比べ19組合減り、賃上げ獲得組合は48組合で前年に比べ42組合減と大幅に減少する形となった」などと振り返ったうえで、2021春闘では格差の解消と経済の自律的成長につながる取り組みを追求する姿勢を強調。「厳しい交渉が予想されるが、コロナを理由に労働組合が自らステージに上がらないことがあってはならない。自信を持ってそのステージにたち、将来につながる何らかの成果を勝ち取れるように取り組んでいこう」と訴えた。

「底支え」「格差是正」に重点を置いた取り組みを

方針は、2021春季生活闘争の考え方を、「産業独自の情勢やコロナ禍の影響を踏まえつつ、雇用の維持・確保を大前提に、賃上げの流れを継続し、中小組合や有期・短時間・契約等で働く者の賃金を『働きの価値に見合った水準』に引き上げることを念頭に、連合方針である2%程度を意識したうえで、要求に取り組む」としたうえで、「全加盟組合は、組合員はもとより、企業内で働くすべての労働者を対象に、働き方を含めた労働諸条件の点検を実施し、処遇改善に取り組む」と整理。賃上げ要求は、「定期昇給相当分の確保を大前提としたうえで、社会基盤を強化する観点から、『底支え』『格差是正』に重点的に取り組む」とした。

企業内最賃協定の締結と時給1,100円以上の水準を目指す

「底支え」については、「すべての労働者を対象とした企業内最低賃金協定の締結を行う」とし、締結水準は生活を賄う観点と初職に就く際の観点を重視し、時給1,100円以上を目指す。

「格差是正」の取り組みでは、関連・グループ会社も含めた企業の賃金を点検する。JEC連合は、25~55歳までの5歳刻みでの基本給の「年齢別目標水準」を示し、その到達に向けた賃金引き上げに取り組む方針を示している。具体的な基本給額は、25歳:21万円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:30万円、45歳:33万円、50歳:36万円、55歳:38万円――。点検の結果が、同水準を下回る場合には、格差是正に向けて目標水準に到達する要求を組む。

関連・グループ会社も含めた初任給も点検する。各社の初任給が、 ① 高校(18歳):17万円 ② 大学(22歳):21万円 ③ 修士(24歳):23万円――を下回る場合は、その到達を目指し、要求に取り組む。

男女間の格差是正に関しても、「改正女性活躍推進法にもとづく事業主行動計画策定指針に『男女の賃金の差異』の把握の重要性が明記されたことを踏まえ、男女別の賃金実態の把握と分析を行うとともに、問題点の改善と格差是正に向けた取り組みを進める」としている。

定昇制度のない組合は1万1,000円を要求

方針は、「底上げ」の取り組みにも言及。「定期昇給相当分(賃金カーブ維持相当分)の確保を大前提に、社会全体の賃金を『底上げ』する観点から、連合方針である2%程度の賃上げを意識し取り組む」とした。その際、定期昇給制度を持たない加盟組合は、「平均定期昇給額の5,000円を定期昇給相当分、賃上げ要求額は平均所定内賃金の2%分にあたる6,000円の合計1万1,000円を要求し取り組む」こととする。

一方、雇用問題を抱える組合は、「経営再建に向けた労使協議を行い、政府の雇用支援策や、これまで蓄えてきた内部留保についても協議の俎上に載せ、雇用の確保を最優先に全力で取り組む」とし、「最低でも連合都道府県別リビングウェイジの最低賃金を下回らないように努める」としている。

一時金は、「生活に必要な年収確保の観点」から、ミニマム基準を年間4カ月に設定。一時金の固定部分を持つ加盟組合は、固定部分を4カ月以上に引き上げることを目指す。業績連動型一時金制度を導入している組合は、「企業業績や付加価値が適正に分配されている制度設計になっているか点検・検証し必要に応じて改善を求める」考えだ。

働きやすい職場実現に向けた取り組みも

2021春闘では、働きやすい職場実現に向けた取り組みも進める。長時間労働の是正については、仕事と生活の調査の実現に向けて「年間所定内労働時間1,800時間(1日7.5時間×240日)」となるように取り組む。年次有給休暇は初年度付与日数が15日以上となるよう取り組むとともに、「完全取得を目指し、一人当たり平均取得日数10日未満とならないよう」にする。

時間外労働割増率の引き上げも要求。企業規模にかかわらず、すべての組合で、 ① 1カ月45時間未満の時間外割増率35% ② 特別条項付き協定の締結を前提に45時間超の時間外割増率50% ③ 深夜および休日労働の割増率50%――などの実現に努める。

このほか、テレワークを導入する際の考え方についても言及。 ① 実施の目的、対象者、実施の手続き、労働諸条件の変更等、労使協議を行い、労使協定を締結したうえで就業規則に規定する ② 情報セキュリティ対策や費用負担のルールなどについても明確に規定する ③ 実施にあたり、労働基準関係法令が適用されることから、長時間労働の未然防止策と作業環境管理や健康管理を適切に行うための方策を労使で検討する――ことなどを掲げている。

65歳までの雇用確保は定年引き上げを基軸に議論

なお、中央委員会では、「JEC連合の考える60歳以降の雇用について」の考え方も提起。65歳への定年年齢の引き上げを基軸に議論を行っていくこととした。

要求書は原則、2月26日までに提出。連合・共闘連絡会議の方針に基づき、3月15日~19日を解決に向けた第1先行組合回答ゾーンとし、3月17日を集中回答日とする。これに続く組合は3月22日~26日を第2回答ゾーンとし、遅くとも4月内での決着を目指す。