単組が設定する水準達成を目指す2021賃上げ方針を決定/自動車総連の中央委員会

2021年1月20日 調査部

[労使]

自動車総連(髙倉明会長、約80万1,000人)は1月14日、中央委員会を開催し、今春の賃上げ交渉に向けた「2021年総合生活改善の取り組み方針」を決定した。中央委員会は東京・芝公園にあるメルパルク東京にいる執行部と、各加盟労連とをWEB接続してリモート開催した。2019年春闘から始めた各単組が自ら目指す賃金水準の達成に向けた取り組みを今次賃上げ交渉でも行う。

日本経済の成長には雇用維持とともに賃上げが必要

方針は、日本経済の成長、好循環の実現に、 ① 働く者の雇用の維持・確保 ② 賃上げによる底上げ・底支え、格差是正――が必要な取り組みであるとの考え方は今次取り組みでも変わらないと指摘。コロナ禍であることや、最近は半導体不足の自動車業界への影響が出始めているものの、「だからこそ、職場(産業、社会)のために、雇用を維持し、底上げ・底支え、格差是正に向けて、賃上げなどに取り組む必要がある」と強調した。ただその一方で、中小のサプライヤーなど業績が悪化している組合もあることから、「取り組みにあたっては、各単組の置かれた状況を踏まえ、最大限の取り組みを行う」とも記述した。

単組が参考とする水準指標に「自動車産業プレミア」を追加

具体的な要求方針の内容をみると、「徹底して賃金カーブ維持分の確保」にこだわると同時に、「引き上げ額全体を強く意識した基準内賃金の引き上げに最大限取り組む」とし、また、「これまでの取り組みを踏まえ、自ら取り組むべき賃金水準を設定する」とし、3年連続で絶対額を重視し、各単組が自ら目指す賃金水準の達成に向けて取り組む内容を掲げた。

自動車総連では、各単組が目指すべき賃金水準設定の参考になるよう、「技能職若手労働者(若手技能職)」と「技能職中堅労働者(中堅技能職)」という2つの個別銘柄で、目指すべき賃金水準を示している。今回の方針では、上から2番目に高い水準の指標となる「自動車産業プレミア」を新規追加し、その額を「技能職若手労働者(若手技能職)」で28万2,000円、「技能職中堅労働者(中堅技能職)」で32万8,000円と設定した。

なお、それ以外の指標としては、上から「賃金センサスプレミア」(若手技能職:32万3,200円、中堅技能職:37万円、以下同順)、「自動車産業アドバンス」(25万4,000円、29万2,000円)、「自動車産業目標」(23万9,000円、27万2,000円)、「自動車産業スタンダード」(22万円、24万8,000円)、「自動車産業ミニマム」(21万5,000円、24万円)とした。

企業内最低賃金の取り組みでは、協定未締結の単組は必ず新規締結に向けた要求を行い、取り組みにあたっては締結額の引き上げに積極的に取り組むとし、その基準を16万4,000円以上とした。自動車総連本部の中央委員会での説明によると、締結率は2020年で79.4%となっており、締結額の基準達成率は2020年で43.7%となっている。

年間一時金の要求については、生活の安心・安定と、組合員の努力・頑張りを踏まえ5カ月にこだわるとし、昨年の方針と同様、「年間5カ月を基準とする」とした。

方針はこのほか、産業の変革期やコロナ禍に負けない職場をつくるとして、新たな時代の働き方を実現させることを目指し、この春季交渉中に働き方の改善について経営側と話し合うことも盛り込んだ。

「格差是正の取り組みも道半ば」(髙倉会長)

あいさつした髙倉会長は、今回の賃上げの取り組みの意義について、「自動車総連はこれまでも、日本経済を牽引する基幹産業としての自動車産業の位置づけにふさわしい賃金水準を目指し、取り組みを推進してきた。2014年以降、働く者の賃金水準の底上げ・底支え、格差是正に向けて、賃上げの取り組みを継続し、一昨年の取り組みからは、上げ幅だけではなく、絶対額を重視した取り組みを重要視し、目指すべき賃金水準に向けて大きな一歩を踏み出した。しかしながら、個人消費は依然として力強さを欠き、実質賃金もマイナス傾向であり、働く者の消費マインドの向上につながっていない。また、業種間、企業規模間、雇用形態間などの格差是正の取り組みも道半ばであり、日本経済の自律的成長、そしてすべての働く者の将来不安の払拭に向けては引き続き、賃金の引き上げに取り組む必要がある」と説明した。

また、髙倉会長は「組合員は、自動車産業の将来の生き残りをかけ、自己研鑽に励み、挑戦を重ねるとともに、日々の業務における行動の質、生産性の向上を高めるなどそれぞれの職場で懸命に努力を続けている。今次取り組みにおいても、人への投資による現場力の強化と、安定・持続的な職場の実現に向けて生産性3原則に基づき成果の公正配分を確保することが重要だ」と強調し、経営側に対し、「企業経営が厳しい今だからこそ、最優先すべきは人への投資だ。その方法としては基本賃金の引き上げが基軸であり将来へ生きた投資につながる」と述べて8年連続での賃上げの実現を求めた。