ネットワーク会員サイトや新たな組織拡大計画などを確認/連合中央委員会

2020年10月7日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長、約686万人)は10月2日、都内で中央委員会を開催し、フリーランスなどが対象の「連合ネットワーク会員」のサイト開設や、新たな組織化計画である「連合組織拡大プラン2030」に沿った取り組みなどを柱とする2021年度活動計画を確認した。ネットワーク会員サイトの略称を「WorQ」とすることも報告。組織拡大では、2030年で800万組織とすることを目標とする。

フリーランス等を会員とするサイト「WorQ」を開設

今回の中央委員会では、新型コロナウイルスの感染防止対策として、中央委員と役員は会場(都内ホテル)で参加する一方、特別中央委員などはWEB出席した。開催時間を短縮するため、提案資料を事前に配信することで、当日の本部からの提案説明は省略した。

2021年度活動計画に盛り込まれた重点分野の主な活動内容をみると、「曖昧な雇用」で働く就業者の法的保護に向け、すでに中央執行委員会で確認している「『曖昧な雇用』で働く就業者の法的保護に対する連合の考え方」を基本として審議会対応に臨む。

また、「曖昧な雇用」やフリーランスなどの形態で働く就業者とのつながりを狙いとする「連合ネットワーク会員」のサイトの充実を図る。サイトは2日からオープンし、連合はこの日の特別報告で、サイトの名称を「働くWork みんなの連合サポートQ」(略称:WorQ)としたことを説明した。会員には、「曖昧な雇用」やフリーランスの形態で働いている人がなることができ、すでに組合員になっている人や雇用者は会員になれない。サイトでは労働相談事例などを提供。来年10月からは、AIを活用したシナリオ型の自動回答による相談対応を開始する予定だ。

2030年で800万組織を目標、オルガナイザーの育成を支援

新たな組織拡大計画の「連合組織拡大プラン2030」に基づき、オルガナイザー(組織拡大専任者)の確保・育成に向けた具体的な施策を検討・実施する。同プランでは、2030年までの10年間で、拡大実績の上積みと組合員の減少の歯止めを図り、2030年での800万組織を目標とする。プランでは、構成組織(産別)と地方連合会が主体的に取り組んでいくことを基本とし、連合本部は産別・地方連合会の組織拡大やオルガナイザーの育成を支援する。地方連合会は特に中小・地場の組織拡大を地方の構成組織と連携して取り組む。

賃金・労働条件では「あらゆる格差」を是正する

新型コロナウイルス感染症対応として、すべての働く者・生活者の命と雇用と暮らしを守るために連合「雇用対策本部」を設置する。

賃金・労働条件の向上に向けた取り組みでは、「春季生活闘争や通年労使協議を通じて、『賃上げ』『すべての労働者の立場に立った働き方の実現』の実現とあらゆる格差(企業規模間、雇用形態間、男女間、地域間)の是正とをはかるとともに、社会横断化を促進する」とするとともに、「最低賃金を労働の対価としてふさわしい水準に引き上げ、社会的セーフティネットとしての機能を強化する」と盛り込んだ。

「政労使の社会対話による認識の共有が不可欠」(神津会長)

中央委員会であいさつした神津会長は、賃上げについて「雇用の問題と賃上げも二律背反でとらえるべきではない。90年代半ば以降の20年余りの間に、日本の経済社会は雇用も劣化させ、平均賃金も低下させてしまったことはご承知のとおりだ。私たちは今、雇用も賃上げも、しっかりとしたものに反転させる、その正念場に立たされている」と強調。

「最低賃金はもとより、賃金の引き上げは、一人ひとりの生活を支えるためにも、そして経済の持続性を確保するうえでも、大変重要な意味を持つことは言うまでもない。新型コロナウイルスの見えない感染リスクと日々闘っている働く仲間においても、切実な思いがある。そもそもこの20年余りの間に、大きく後れをとってしまった日本の賃金構造に抜本的な改革をはかっていかなければならない」と述べたうえで、「そのためには、政労使あるいは公労使での認識合わせが不可欠だ。経済の好循環に向けた政労使会議が2013年と翌年の秋に持たれたにも関わらず、それ以降議論の深掘りがなされないまま途絶えてしまったことが、いわゆるアベノミクスを掛け声倒れに終わらせてしまったことの根本原因だ。賃上げを、あまねく日本全体に拡げ、格差の是正をはかっていくことがなければ、コロナショックとともに日本の社会は本格的に沈んでいってしまうのではないか」と危機感をあらわにした。

そのうえで来年に向け、「連合として月例賃金にこだわり、分配構造の転換につながる賃上げに取り組むことの重要性に変わりはないが、これを、すべての働く仲間が得られることのできる成果にしていくためには、学識経験者の知見を取り込みつつ、政労使の枠組みでの社会対話により、認識を共有していくことが不可欠であり、その重要性を重ねて強調しておきたい」と述べた。

JAMが格差是正の強化・継続を要望

2021年度活動計画に関する討議では、ものづくりの中小労組を多く抱えるJAMが来年の春季生活闘争について発言。「組織内には、厳しい企業の状況を訴える単組もあるが、『雇用か賃上げか』ではなく『雇用も賃上げも』というスタンス取り組んでいくことが重要であり、格差是正の取り組みを強化・継続していくべきだ」と要望した。答弁した連合本部の冨田珠代・総合労働局長は「社会基盤を支える人たちの処遇を引き上げるためにも格差是正の流れを止めてはならない」とし、底上げ、底支え、格差是正を継続することを前提に構成組織と議論を積み上げていくと述べた。このほかでは、航空業界をカバーする航空連合が、雇用調整助成金の特例措置の延長や政府要請などに引き続き取り組んで欲しいと要望した。