全国一律最低賃金制を目指す「アクションプラン2024」を採択/全労連定期大会

2020年8月5日 調査部

[労使]

全労連(小田川義和議長、約75万5,000人)は7月29、30の両日、都内で定期大会を開き、向こう2年間の運動方針を決めた。大会では、人間らしく暮らせる全国一律最低賃金制の実現を目指す「アクションプラン2024」を採択。組織拡大については、第2次「新4か年計画」を定め、既存組合の拡大と総がかりによる新規結成・加入の取り組みなどを進める。役員改選では、小田川議長が退任し、新議長に全教の小畑雅子委員長が選出された。なお、大会は日程を短縮しオンラインで開催。単産・地方組織が視聴、発言した。

組織拡大強化を最重点課題に

向こう2年間の運動方針は、① 日常活動の活性化、組織拡大強化を最重点課題にする ② S8時間働けば人間らしく暮らせる社会をつくりだす ③ 9条改憲阻止、憲法守れの世論と共同を一層発展させる――ことを運動の基調に据えた。

第1の「組織拡大強化」は、2020年7月までを実施期間とする「新4か年計画」の総括を踏まえた「第2次新4か年計画」を、「組織の総力を挙げて推進する」とした。全労連の集計によると、組合員数は99万4,465人で、前年より2,294人の純減となる。今後は、新4か年計画で行われた取り組みの共有化を図るとともに、産別・地域で計画を持ち寄り、地方・地域単位で最重点計画を練る。SNSを積極的に活用することで、これまでの運動に加えた新しい接近方法も検討する。

第2の「8時間働けば人間らしく暮らせる社会」では、貧困と格差の加速度的な拡大に対応する具体策として、「最賃1,500円」に取り組む。また、新型コロナウイルスの感染拡大で、公務・公共サービスの後退が明らかになったとして、その転換を図るとともに、貧困と格差を是正する取り組みを社会的な賃金闘争と連携させながら展開する。有期雇用の無期転換や派遣労働者の直雇用化に向けた取り組みも強化。労働時間短縮に向け、法定労働時間の短縮も視野に法改正運動を進めていく。

第3の憲法闘争の強化については、「憲法を活かし、国民生活を優先させる国や自治体の責任を明確にする」としたうえで、「公務労働者を増やして国や自治体の役割を発揮するよう求め、社会保障の拡充、公務・公共サービスの充実の実現を迫る」としている。

既存組合の拡大と総がかりによる新規結成・加入の取り組みを推進

方針の重点課題をみると、組織の強化・拡大の取り組みは、「第2次新4か年計画(2020~2023年度)」の推進を軸に具体化を図る構え。同計画は、「既存組合の拡大と総がかりの拡大の2本柱で取り組みを進める」とともに、「組織の強化をはかり、組合ばなれをなくしていく」としている。

既存労働組合の拡大では、「対話なくして拡大は進まない」との考えの下、単産・地方組織ともに対話目標・拡大目標を設定。全労連として対話数の把握を行い、対話した教訓を明らかにしていく。組合員集会や労働組合の見える化などで組合ばなれをなくすほか、単産は各地方組織と協力して空白地方・地域をなくしていくことにも取り組む。

一方、総がかりによる新規結成・加入の取り組みについては、前計画で最重点とした計画等の取り組みを継続。単産や地方組織は、「調整会議で戦略を議論し、地方・地域での重点計画をつくり、全労連の最重点計画にエントリーする」などとしている。

このほか、新型コロナウイルス関連での解雇や派遣切り等が生じているところでは、「当面の間、新型コロナウイルスによる解雇・雇い止め、保障を中心にした労働相談活動に重点を置き、『組合加入や組合づくり』で雇用と生活をまもる活動に取り組む」ことや、学習・教育活動の強化、世代継承を進めて職場単位の役員不在をなくしていくことなどで組織強化を図る方針も掲げている。

実質賃金の引き上げ・底上げや安定雇用の確立も

実質賃金の引き上げ・底上げを目指す取り組みでは、「新型コロナウイルスの感染下だからこそ、賃金底上げ、大幅賃上げが必要」なことを訴え、「政府と経営者に対して、責任を追及する」考え。加えて、大企業に対し、日本経済が困難な時こそ労働者・中小企業に内部留保の活用による還元を求めていく。そのうえで、①最低賃金の引き上げ、全国一律最低賃金制度の確立②公契約適正化③実質賃金の引き上げ④公務員賃金の引き上げ--に取り組むことも明記している。

全労連は2016年の大会で、「全国最賃アクションプラン」を確認。以後4年間、全国一律最低賃金制の導入等に取り組んできた。今大会では新たに「全国一律最低賃金アクションプラン2024(期間:2020年8月~2024年7月)」を採択。「これまでの4年で築いた到達を土台に」、全国一律最賃制の創設や、時間額1,500円を当面の最低賃金水準目標とする広範な合意形成、中小企業支援の抜本的な強化等の目標を掲げた。

安定雇用・ディーセントワークの確立に関しては、新型コロナウイルスが事業と雇用に深刻な打撃を与えているなか、「労働者の権利を守り、労働条件を改善するための労働法制闘争を展開する」として、雇用対策のさらなる拡充やテレワーク等の「あらたな働き方」への対応、労働時間規制の強化運動、待遇格差の解消と非正規雇用労働者の権利擁護、労働安全衛生の改善とハラスメントの根絶、高年齢者雇用の改善、公務労働者の労働基本権の確立などに取り組む考えを打ち出している。

最低賃金の引き上げなど三つの行動に取り組む

大会では「2020年秋季年末闘争方針案」も提起した。闘争方針は、「コロナ禍という未曾有の社会状況のもとで迎える闘争となる」ことに加え、「相次ぐ豪雨災害などの大規模災害が労働者・国民の生活を直撃している」ことを指摘。「すべての加盟組織・組合員が力を合わせて、いのちとくらし・雇用を守るために立ちあがることを呼びかける」とした。具体的には、① 雇用と生活を守り休業補償を勝ち取る ② 医療や行政など公共体制の拡充・強化を求める ③ 賃金・一時金の引き上げ、最賃アクションプラン2024――の三つの行動に取り組む姿勢を示している。

小田川議長は冒頭のあいさつで、「この秋のたたかいで、雇用調整助成金などの活用も含めて政府の役割発揮などを求めながら、全ての雇用を守り抜く取り組み、医療・介護・福祉・教育などの公務・公共サービスの拡充と強化を目指す取り組み、中小企業支援策の拡充も前提とした最低賃金の引き上げで8時間働けば暮らせる賃金の実現、いのちと暮らし、雇用、地域をまもる三つの行動を提起している」と指摘したうえで、「それは格差、貧困の解消に向かうための社会に向かうたたかいをここから始めることの提案でもある」と強調。「要求闘争と制度闘争の一体化、ナショナルセンター規模での統一闘争の再構築等の様々な意味も含めた提案だ」と述べ、積極的な参加を呼び掛けた。

初の女性議長を選出

役員改選では、3期6年務めた小田川議長が退任し、新議長に全日本教職員組合の小畑雅子委員長を選んだ。ナショナルセンターで女性がトップに就任するのは初めて。野村幸裕事務局長も退任し、新事務局長には黒澤幸一事務局次長(日本医労連)が選出された。