「格差是正の動きが前進」とする2020春季生活闘争まとめを確認/連合

2020年7月22日 調査部

[労使]

連合(神津里季生会長)は16日に開いた第8回中央闘争委員会で、「2020春季生活闘争まとめ」を確認した。平均賃金方式での最終的な賃上げ回答平均は、額で5,506円、率で1.90%と、ともに前年を下回った。ただ、規模が小さい組合になるほど、前年と比べた減額・率の幅が小さくなっており、また、短時間等の労働者の時給引き上げが前年を上回ったことから、闘争まとめは「賃金水準を意識した取り組みと格差是正の動きが前進」などと総括した。

緊急事態宣言があっても妥結率は昨年を上回る

今年の春季生活闘争では、連合は、賃金の産業相場や地域相場を引き上げる「底上げ」、企業間や雇用形態間などの格差を是正する「格差是正」、そして、産業相場を下支えする「底支え」を、賃上げの取り組みの3本柱に据えた。

そのうえで、「底上げ」に向けた賃金要求の指標を「定期昇給分(定昇維持相当分)を含め4%程度とする」と設定(ベア・改善分が2%程度)。「格差是正」では、雇用形態間格差を是正するために短時間労働者などの昇給ルールを導入することや、勤続17年で時給1,700円を目指す制度とすること、「底支え」では「時給1,100円以上」での企業内最低賃金協定を締結することなどを具体的な指標とした。

連合がまとめた最終回答集計(7月2日時点)によると、要求を提出した組合は6,742組合で、このうち月例賃金改善(定昇維持含む)を要求した組合は5,376組合(昨年同時期比164組合減)だった。

妥結済組合は4,773組合(同312組合減)で、賃金改善分を獲得した組合は1,636組合(同260組合減)。賃金改善獲得率はほぼ昨年並みの34.3%(同3ポイント減)となっている。

妥結進捗の経過をみると、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が発出されたことにより、4月末の妥結率は71.8%と過去5年間で最も低い率となったが、5月以降は挽回し、6月末では98.0%と昨年同時期(93.3%)を上回る状況となっている。

ベアや賃金改善などの賃上げ分も昨年を下回る

回答額などをみていくと、平均賃金方式で要求・交渉を行った組合のうち、4,807組合が回答を引き出し、加重平均での回答額は5,506円、率は1.90%で、昨年同時期比を491円、0.17ポイントそれぞれ下回った。規模別にみると、1,000人以上は昨年同時期比613円減、0.20ポイント減だったのに対し、100人未満は223円減、0.11ポイント減となり、規模が小さい組合の方が、マイナス幅が小さかった。

ベアや賃金改善などの賃上げ分が明確に分かる1,958組合の賃上げ分の加重平均は1,470円(0.50%)で、昨年同時期を額で90円、率で0.06ポイント下回った。300人未満の中小組合(1,213組合)でみると、1,426円・0.58%となっており、率では全体平均を上回った。

今年の方針では、すべての構成組織が月例賃金にこだわり、到達目標の実現など「賃金水準の追求」に取り組むとしたが、個別賃金要求を行ったり、新たな目標水準を設定するなど「賃金水準の追求」にこだわって要求した組合は3,271組合だった。

時給引き上げは7年連続で前年比プラス

一方、有期・短時間・契約等の労働者の回答水準をみると、時給では加重平均が27.11円(昨年同時期比1.20円増)、単純平均が25.18円(同0.95円増)となり、ともに7年連続での昨年同時期比プラスとなった。

「感染対策がありながらも成果を獲得」(神津会長)

闘争まとめはこれらの回答について、「交渉環境はまだら模様であったが、賃上げの流れは継続。特に、中小組合や有期・短時間・契約等労働者の賃上げが健闘を見せており、賃金水準を意識した取り組みと格差是正の動きが前進」と評価。また、同一労働同一賃金に関する法改正への対応やハラスメント対策なども前進が見られたとして「多様な雇用形態や働き方に応じた職場環境の改善も前進」と述べた。

16日の会見で神津会長は「新型コロナウイルス感染への対策がありながらも、こうした成果獲得となっている。各構成組織が相当がんばった結果だ」と話すとともに、賃上げ額・率が前年を下回ったものの、賃上げが行われたこと自体を前向きに評価する考えを示した。