パートの賃上げ率、5年連続で正社員を上回る/UAゼンセン

2020年4月10日 調査部

[労使]

繊維、化学、小売・流通や食品などの業界をカバーし、組合員の半数以上をパートタイマーが占めるUAゼンセン(松浦昭彦会長)は4月3日、2020年労働条件闘争の4月1日時点での妥結集約状況を発表した。正社員組合員のベースアップなどの賃金引き上げ分の単純平均は1,862円(0.70%)と、前年同時期よりも300円以上高くなっている。パートの賃上げ率は5年連続で正社員を上回った。

流通部門の正社員の7割は昨年を上回る

妥結集約によると、正社員の賃金については338組合(約30万人)、パートタイマーについては169組合(約56万人)、契約社員については62組合(約2万人)で妥結した。

妥結状況をみると正社員は、制度昇給とベアなどを合わせた全体の賃上げ額の単純平均は6,546円(2.41%)で、前年を408円(0.16%)上回った。UAゼンセンでは「全体で6割程度、特に内需中心の流通部門で7割近くの組合が昨年を上回る妥結を勝ち取っている」としている。

賃金体系維持が明確な組合(161組合)の賃金引き上げ分(ベアなど)の単純平均は1,862円(0.70%)で、前年同時期の1,510円(0.54%)を上回った。前年と回答を比較することが可能な組合(156組合)で前年と比較すると、367円プラスとなっている。

賃金引き上げ分の単純平均を規模別にみると、300人以上が1,896円(0.66%)、300人未満が1,811円(0.77%)となっており、額は300人以上が高いが、率では300人未満の方が高くなっている。

パート時給引き上げ額は単純平均で30円台に乗る

パートタイム組合員の妥結状況をみると、169組合の時間当たり賃金の妥結額(制度昇給、ベアなど込み)の単純平均は30.3円(2.99%)で、前年同時期の28.8円(2.93%)を上回った。加重平均でみると、28.7円(2.87%)となっており、正社員の賃上げ率の加重平均である2.39%を上回った。正社員の賃上げ率を上回るのはこれで5年連続。パートタイマーと正社員の両方について妥結した127組合のなかで、パートタイマーが正社員を上回る賃上げ率(ベアなど)を獲得した組合は約69%にあたる(前年同期は64%)。

契約社員組合員の妥結状況をみると、制度昇給とベアなどを合わせた賃上げ額の単純平均は5,770円(2.70%)で、比較可能な58組合について前年と比べると1,397円(0.70%)と高い水準となっている。

「事業継続に汗を流す組合員の努力への重要なメッセージ」(松浦会長)

こうした妥結状況について松浦会長は、「新型コロナウイルス問題に関して、労使一体となって従業員・組合員の安全・安心を図ることはもちろんのこととしつつ、賃上げにおいてはこの突発的な事象を影響させるべきではないとの姿勢で交渉を進めてきた。事態の収束がなかなか見通せない中にあって、状況の深刻さを受け止めざるを得ない交渉となった組合も一部あったが、大半の組合ではUAゼンセンの考え方に沿った交渉を進め、全体としては正社員組合もパートや契約などの短時間組合員も前年を上回る妥結結果となった。この妥結結果は、先の見えない不安と闘いながら急激な環境変化に対応し、事業継続に汗を流す仲間の組合員の努力と貢献に対する重要なメッセージであると同時に、社会的にも大きな意義のあること」としている。

なお、賃金以外の処遇項目では、定年制度改定、家族手当、退職金・企業年金、パートへの一時金、通勤手当、職務・役職手当、時間外割増率、休職・休暇制度、定年後再雇用・高齢者雇用、育児・介護、福利厚生、均等・均衡処遇に向けた制度整備などで、具体的な成果を獲得する組合が目立っている。