賃上げ獲得額は前年を下回るも、4年連続で中小が大手を上回る/金属労協

2020年4月10日 調査部

[労使]

自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5産別労組でつくる金属労協(JCM、髙倉明議長)は4月2日、Web会見を開き、3月31日までの賃上げ回答状況を公表した。ベースアップや賃金改善などの賃上げ額の平均は前年を下回る1,198円で、2015年以降で2番目に低い獲得水準となったものの、299人以下の組合の平均額は1,331円と4年連続で1,000人以上の組合を上回った。

5年連続で規模の小さい組合ほど高い賃上げ額を要求

31日までの集計によると、JCMを構成する3,207組合のうち、要求を提出したのは2,592組合で、そのうち賃上げ要求を行った組合は2,150組合となっている。賃上げ要求額の平均は3,717円で、昨年同時期の3,940円を200円程度下回った。なお、今次春闘方針での賃上げ要求基準は3,000円以上とした。

賃上げ要求額を規模別にみると、299人以下が3,848円、300~999人が3,550円、1,000人以上が3,223円となっており、5年連続で規模の小さい組合ほど高い要求額となっている。

回答を得た、または回答を集約した組合は1,286組合。このうち賃金構造維持分を確保したのは1,092組合で、さらに、そのうちベアや賃金改善分などの賃上げ分を獲得したのは725組合となっている。回答・集約組合に占める賃上げ獲得組合の割合は56.4%となり、昨年同時期の68.1%と比べると10ポイント以上低下した。

299人以下の賃上げ獲得額が全体平均を上回るのは5年連続

賃上げ獲得額の平均は1,198円で昨年同時期(1,383円)を下回り、2015年以降で2番目に低い獲得水準となった。これを規模別にみると、299人以下が1,331円、300~999人が1,064円、1,000人以上が1,011円で、299人以下が最も高い額となっている。299人以下が全体平均の額を上回ったのは5年連続で、1,000人以上の組合の額を上回ったのは4年連続となる。

一時金については、回答・集約した897組合の平均月数は4.50カ月で、昨年同時期(4.74カ月)を0.2カ月程度下回った。また、JCMがミニマムと設定する4.0カ月に至らなかった組合数が205組合にのぼり、2015年以降で2015年(207組合)に次いで多かった。

髙倉議長は会見で、「6割近い組合が賃上げを獲得しており、賃上げの流れを止めることなく継続させることができた」とコメントするとともに、大手を上回る賃上げを獲得した中小組合の健闘を評価した。

「中小単組の奮闘ぶりが数字に表れている」(自動車総連)

JCMに加盟する自動車総連とJAMは、3月を終えた時点での回答状況をそれぞれ公表している。自動車総連の4月2日現在の回答状況によると、傘下の1,084単組のうち449単組(41.9%)で解決済みとなっている。月例賃金の回答状況をみると、個別賃金では717単組が要求し、85単組が回答を引き出している。平均賃金では、賃金カーブ維持分と賃金改善分を合わせた引き上げ額全体の平均が4,927円となっており、賃金改善分の平均獲得額は1,213円。賃金改善分の平均獲得額を規模別にみると、299人以下が1,440円で、自動車総連では「大手単組平均の1,082円を大きく上回っており、中小単組の奮闘ぶりが数字に表れている」としている。

「中小を中心に取り組んだ成果が表れた」(安河内会長)

JAMの4月6日時点の回答状況をみると、1,532ある交渉単位組合のうち1,513単組が交渉しており、そのうち1,188単組が要求を提出。賃金要求したのは1,119単組となっている。

平均賃金では、1,087単組が要求し、753単組が回答を引き出しており、要求額平均の8,139円に対して、回答額平均は5,047円、妥結額平均は5,161円となっている。比較可能な単組で前年と比べると妥結額は467円減となっている。

個別賃金では、30歳ポイントでの回答・確定水準の平均は24万1,588円(136単組)で、35歳ポイントが27万1,877円(129単組)となっている。

賃金改善分が明確になる700単組のち、回答を引き出しているのは333単組で、改善分の平均は1,269円。規模別にみると、300人未満が1,327円、100人未満では1,387円となっており、両規模とも大手単組よりも高く、また、全体平均よりも高い。JAMの安河内賢弘会長は「中小を中心にしっかり交渉に取り組んだ成果が表れた」としている。