正社員の賃上げ回答は昨年を超える水準/UAゼンセンのヤマ場回答

2020年3月13日 調査部

[労使]

繊維、化学、小売・流通や食品などの業界をカバーするUAゼンセン(松浦昭彦会長)では、12日午前10時時点で、正社員組合員は113組合、パートタイム組合員は73組合、契約社員は23組合が妥結した。正社員組合員について、ベアや賃金改善分など「賃金引き上げ分」の妥結額平均(単純)をみると2,147円(0.75%)で、昨年同時期の水準(1,977円)を上回った。パート時給引き上げでは、制度昇給も含めて妥結額平均が33.7円(3.29%)などとなっており、5年連続で正社員を上回る引き上げ率となっている。

ドラッグストアと家電量販店で1,000円以上の引き上げ

UAゼンセンは11日を最初の回答のヤマ場と設定。正社員組合員について、113組合の賃上げ全体での妥結額平均(単純)をみると、7,298円(2.49%)。これを規模別にみると、300人以上が7,118円(2.44%)、300人未満が8,084円(2.69%)で、300人未満の方が、妥結水準が高い。

前年と比較できる110組合の妥結結果を前年と比べると、6割強が前年以上の妥結額を獲得し、単純平均では前年を619円上回った。

賃金体系維持が明確な69組合の「賃金引き上げ分」の単純平均は2,147円(0.75%)で、これについても前年と比較可能な66組合で前年と比べると、単純平均では前年を468円(0.18%)上回った。業種別にみると、ドラッグストア(9組合妥結)と家電量販店(6組合妥結)がそれぞれ、昨年比で1,000円以上の増加となっている(それぞれ1,099円プラス、1,053円プラス)。

パートの賃上げ率が5年連続で正社員を上回る

一方、パート組合員の妥結状況をみると、時給引き上げ(制度昇給、ベアなど込み)の妥結額の単純平均は33.7円(3.29%)で、前年と比較できる66組合の単純平均は前年比4.0円(0.34%)プラスとなった。

パートタイム組合員と正社員組合員ともに妥結した組合は49組織あるが、正社員を上回る賃上げ率を獲得した組合の割合は約78%(38組合)で、前年同時点(74%)よりも高い割合となっている。また、組合員一人あたりの平均引き上げ率(制度昇給、ベアなど込み)をみると3.07%となっており、正社員の2.44%を超え、パートの引き上げ率が正社員の率を超えたのは5年連続となっている。

賃金以外の要求項目をみると、定年制度改定では、エディオン労働組合が2020年4月から段階的に65歳定年に引き上げることで合意に至り、これで、2017年闘争以降で65歳以上の定年延長を実現した組合数は計32組合となった。

均等・均衡処遇については、家族手当(子女手当)について、パートタイマーや契約社員などについて正社員同等の子女手当を支給するなど5組合で改善が図られた(全ヤオコー労働組合、イオングループ労連まいばすけっと労働組合、小田急商業労働組合連合会小田急百貨店労働組合、トリドール労働組合など)、通勤手当では、パートタイマーの上限を撤廃するなど10組合で改善が図られた(全ヤオコー労働組合、トリドール労働組合、全木曽路労働組合、ジョイフル労働組合など)。

このほか、慶弔休暇や確定拠出年金の新設などで獲得事例があった。

「しっかり賃上げして労使が新型ウイルスに対応も」(松浦会長)

12日に本部で会見した松浦会長は、「第一のヤマ場の全体感としては、ほぼ前年並みの水準を確保できており、パートについても昨年以上に高い水準で妥結できている。新型コロナウイルスの影響で職場レベルでは厳しい状況にあるが、妥結の数字そのものは前年よりも高い」と同日までの回答結果を評価した。本部では、新型コロナウイルスの問題については賃上げ交渉と切り離して協議することを加盟組合に指示していた。松浦会長は「外食など影響が出ている業種もあるが、しっかり賃上げして、労使が1つになって新型コロナウイルスの問題に対応していこうという様子が感じられる」などと述べ、妥結水準への影響は否定した。

個別組合の妥結内容をみると、製造産業部門の化学素材では、旭化成グループ労働組合連合会が引き上げ分1,580円、全東レ労働組合連合会が同1,300円、帝人労働組合が同1,500円などとなり、1,000円を超える水準を獲得している。流通部門では、ケーズホールディングスユニオンが9,136円(体系維持分込み)で9日のヤマ場前に妥結。トリドール労働組合は17,627円(体系維持分込み)で満額決着した。