大手組合の賃上げ獲得額は前年を292円下回る/金属労協ヤマ場の回答結果

2020年3月13日 調査部

[労使]

2020春闘は3月11日、集中回答日を迎えた。自動車総連、電機連合、JAM、基幹労連、全電線の5産別で構成する金属労協(JCM、髙倉明議長)がまとめた大手組合の最新の回答集計によると、賃上げを獲得した44組合の回答額の平均は1,060円で、昨年を292円下回っている。11日にネット会見を開いた金属労協の髙倉議長は、「景気の底割れを回避するという労使の役割を一定程度、果たすことができた」などと評価した。

一時金の平均は5.10カ月、企業内最賃の平均引き上げ額は1,698円

最新の回答集計(12日12時現在)によると、11日の集中回答日までに回答を引き出して相場形成役を担う56の「集計対象組合」が賃上げを要求しており、全てが賃金構造維持分確保などの回答を引き出している。そのうち、ベア・賃金改善分などの賃上げを獲得したのは44組合で、獲得した賃上げ額の平均は1,060円と前年の獲得額(1,352円)には届かなかった。

一時金は、56組合のうち32組合が要求方式をとっており、全てで回答を引き出している。回答の平均月数は5.10カ月で、こちらも昨年実績(5.29カ月)を0.19カ月下回っている。

企業内最低賃金協定の取り組みでは、43組合が要求を行い、27組合が水準引き上げを獲得。平均引き上げ額は1,698円となっている。

「労使の役割を一定程度、果たすことができた」(髙倉議長)

金属労協は11日、新型コロナウイルスへの対応から、Web会議システムによる記者会見を行った。

髙倉議長(自動車総連会長)は、米中対立の長期化や英国のEU離脱、新型ウイルスの感染拡大による株式市場の混乱等、グローバル経済・国内経済が日々悪化するなかで行われた今次交渉の経過を、「先行き不透明感が増しているからこそ、我が国経済を個人消費がリードし、底支えする強固なものへと転換する必要がある。難局を打破するには組合員の協力・努力が不可欠であり、ともに立ち向かっていくためのメッセージを示すよう経営側に強く求めた。一方、経営側は、従業員の努力と成果に報いることや、『人への投資』の重要性には一定の理解を示し、賃上げの継続に対する社会的な期待への認識は示したが、グローバル経済・国内経済の落ち込みや企業業績の悪化などを理由に、人への投資は賃上げだけでなく多様な選択肢から柔軟に検討すべきと主張するなど、賃上げに対し極めて慎重な姿勢を取り続け、交渉は最後までもつれ込んだ」などと説明。そのうえで、示された賃金の回答について「基本賃金にこだわり各組合がぎりぎりの交渉を行って、非常に価値のある結果を生み出すことができた」と強調。「景気の底割れを回避するという労使の役割を一定程度、果たすことができた」と評価した。