会計年度任用職員制度も含めた総点検を/自治労中央委員会

2020年2月5日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを組織する自治労(川本淳委員長、約77万4,000人)は1月30、31の両日、千葉県市川市で中央委員会を開き、「2020春闘方針」を決めた。方針は、「1年のたたかいのスタート、春闘から」との位置づけの下、2020春闘の主要課題として、① 賃金改善 ② 会計年度任用職員等の処遇改善 ③ 人員確保と職場からの働き方改革――を提示している。会計年度任用職員等への対応について方針は、「同じ自治体で働く常勤職員との均等・均衡を基本として、制度の改善を行う」必要性を強調。川本委員長は、「処遇改善に大きな社会的責任を有していることを再度自覚し、課題の解決にあたっていこう」と訴えた。

「1年のたたかいのスタートは、春闘から」

地方自治体の職員の賃金改定は、人事院勧告を踏まえた都道府県等に置かれている人事委員会の勧告などをもとに年度後半期に決められる。2019年は人事院が8月7日に、月例給・一時金とも6年連続で引き上げる勧告を実施。その後、都道府県・政令市等の人事委員会は順次、勧告・報告を行った。給与表の改定について、都道府県ではプラス改定が44県、改定なしが3県(東京都、三重県、鳥取県)。政令市等ではプラス改定が15市、改定なしが6市(札幌市、さいたま市、名古屋市、堺市、岡山市、広島市)、マイナス改定が1市(特別区)となった。

一方、自治労は「1年のたたかいのスタートは、春闘から」との位置づけを明確にしたうえで、傘下の単組に対し、自治労の方針に基づき春闘期に要求書を当局側に提出することを求めている。ただし、実際には春闘時期に交渉が決着しないことも多く、人事院勧告や各団体の人事委員会勧告の内容が明らかになった秋以降、賃金確定闘争で再び要求提出を行い、最終的な回答引き出しに向けて当局側との交渉を追い込むことになる。

要求提出、交渉実施、妥結合意でそれぞれ前年を上回る

2019自治体確定闘争総括によると、2019闘争で要求書を提出した単組は1月14日現在で1,432単組86.6%と、昨年(1,294単組79.2%)を上回った。労使交渉を実施したのは1,273単組77.0%(昨年1,085単組66.4%)、合意(妥結)に至ったのは982単組59.4%(同888単組54.4%)と、要求提出で7.4ポイント、交渉実施で10.6ポイント、妥結合意で5ポイント前年を上回った。

総括は、こうした状況を「一定の成果だ」と評価する一方で、1割強の単組が要求書を提出せず、2割強の単組で交渉未実施となっていることにも言及。「要求・交渉を通じて結果を引き出し、組織強化につなげていくことは基本的かつ不可欠な取り組みだ」として、交渉サイクルの確立に向けて取り組みを強化する姿勢を強調した。

年齢ポイント賃金の到達目標を設定

方針は、2020春闘の基本設計として、 ① 賃金改善 ② 会計年度任用職員等の処遇改善③人員確保と職場からの働き方改革――を賃金・労働条件改善の主要課題に設定している。

賃金改善については、「民間春闘の成果が人事院勧告・自治体確定期へと大きくつながっていくことから、地域の底上げ、中小・地場賃金の底支えの民間春闘に積極的に参画する」と強調。「すべての自治体単組が、春闘期には職員の給与実態を十分に把握、分析して、単組として目標とする賃金の到達水準の確認を行うとともに、その実現にむけた具体的な運用改善について、少なくとも『1単組・1要求』を行い、労使交渉に取り組む」とした。

具体的な賃金要求・運用改善につなげるためには、賃金カーブの実態を明らかにする必要があるとして、「全単組で男女別や年齢ごとなどの賃金実態の点検を徹底」するとともに、「近隣自治体・同規模自治体との昇給・昇格ラインと比較し、具体的な到達目標を設定するため、モデルラインを作成」することを求めている。

なお、自治労では単組の到達目標として、① 30歳・24万8,775円 ② 35歳・29万3,807円 ③ 40歳・34万3,042円――の個別ポイント賃金を設定している。

常勤職員との均等・均衡を基本に制度改善を

地方公務員の臨時・非常勤等職員に関しては、「特別職非常勤職員」「一般職臨時的任用職員」「一般職非常勤職員」の制度区分があるなか、2020年4月1日に施行される改正地方公務員法により特別職と臨時的任用職員の範囲を厳格化する一方、一般職としての「会計年度任用職員」が新たに制度化された。任用や勤務労働条件は、関係する職員団体や労働組合との協議を経て、議会で成立・決定することになっており、各自治体で関係条例等の改正が行われている。

方針はこの動きについて、「法改正の趣旨を十分踏まえていない場合が多くある」と指摘。「同じ自治体で働く常勤職員との均等・均衡を基本として、制度の改善を行うことが必要だ」として、「組織化と並行して当事者の声を集めながら交渉・協議を行うなど、2020春闘期以降も継続して取り組みを進める」としている。具体的には、チェックリストに基づき、「『同一労働同一賃金』『職務給・均衡・権衡・平等取扱い等の緒原則』の観点から、給料(報酬)や手当、休暇制度をはじめとする労働条件全般について、会計年度任用職員制度の検討状況も含めた総点検を行う」構え。給与および諸手当については、自治労の自治体最低賃金 ① 月額16万5,900円以上 ② 日給8,300円以上 ③ 時給1,070円以上――を最低として、「常勤職員との均等・均衡を基本に支給を求める」考えだ。

川本会長はあいさつで、「条例化はほぼ全ての自治体で終わっているが、詳細の労働条件等について未確定となっている自治体も多いのが実態。制度の趣旨を全く理解せず、同一労働同一賃金という社会的な要請に背を向けているとしか言えない当局による各種労働諸条件の切り下げも各地で起きている」などと説明。「新制度に関わる賃金・労働条件が未確定な自治体、内容的に不十分な自治体にあっては、制度発足前、最後の労使間の交渉、協議が行われなければならない」として、「各県本部、単組は、非正規を含めた自治体職員の処遇改善に大きな社会的責任を有していることを再度自覚し、課題の解決にあたっていこう」と呼び掛けた。

定年延長の実現やハラスメント防止の取り組みも

このほか、人員確保と職場からの働き方改革では、36協定または36協定に準ずる書面協定の締結による時間外労働の縮減や、定年延長の実現と再任用制度の改善、ハラスメント防止等に取り組むとしている。