連合方針踏まえ6,000円を基準に「人への投資」を要求/JAMの2020春闘方針

2020年1月24日 調査部

[労使]

金属、機械関連の中小労組を多く抱える産別労組のJAM(安河内賢弘会長、37万5,000人)は17日、都内で中央委員会を開き、2020年春季生活闘争方針を決定した。昨年に引き続き賃金の絶対額を重視した取り組みを追求するとし、「底上げ」「底支え」と「産業内及び企業内の格差是正」をめざし、連合の春季生活闘争方針を踏まえ賃金構造維持分を除き6,000円を基準として「人への投資」を要求するとしている。

2020年は「賃金の社会的変革を進める」

方針は、2020年春季生活闘争を「賃金の社会的変革を進める」と強調。「賃金の『底上げ』『底支え』『格差是正』の取り組みを継続し、情勢も踏まえ、すべての単組が、月例賃金の引き上げを中心とした『人への投資』の取り組みを行う」とし、人材の採用難や人材流出が深刻化しているなかで中堅、中小企業は「企業と産業の持続性の観点から中期的な賃金政策を持って賃金水準の引上げを行う」と主張している。

要求方式については、昨年に引き続き、「個別賃金要求方式の考え方を基本とし、『産業内格差』及び『企業内格差』の是正、社会的水準の確保、30歳または35歳の一人前労働者、標準労働者の賃金水準開示など具体的に取り組む」。具体的な賃上げ要求水準については、「JAM構成単組は、あるべき水準との乖離を確認した上で、『底上げ』『底支え』と『産業内及び企業内の格差是正』をめざし、月例賃金水準の引き上げを中心に、賃金構造維持分を除き、6,000円を基準とし『人への投資』を要求する」とした。

「まずは要求提出を」安河内会長

中央委員会であいさつした安河内会長は、今次春闘を「ここ数年間のベア春闘とは異なり、景気の後退局面での春闘となる」としたうえで、「日本経済の状況をマクロの観点からみれば、経団連が指摘するように賃上げの勢いを止めないことが何よりも重要であり、米中貿易摩擦などに起因する海外経済の減速を内需の拡大で補うことが極めて重要だ」と強調。

さらに、日本の潜在成長率が一貫して微減となっているのは全要素生産性(TFP)が減少しているのが最大の要因だなどと持論を述べながら、「生産性の向上は人への投資の先にしかないという労働組合の信念を改めて経営に問う春闘にしなければならない。そのためには、ぜひ要求書を経営側に提出してもらいたい。要求書を出さないと、労使対等な立場での議論が望めない」「要求書を提出し、これまで同様、人を大切にする経営は変わらないという言質を会社側からとってほしい」と呼びかけた。

一人前ミニマム基準の18歳~25歳を引き上げ

具体的な賃上げ要求基準を個別賃金要求についてみると、各単組が最低でもクリアすべき一人前労働者の賃金カーブの参考とする「JAM一人前ミニマム基準」(所定内賃金)について、18歳:16万4,000円、20歳:17万7,000円、25歳:20万9,000円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:29万5,000円、45歳:31万5,000円、50歳:33万5,000円と設定し、JAMの組合員の対象に行っている賃金調査の結果に基づいて18歳~25歳までのポイントについては昨年から額を引き上げた。

到達基準的意味合いの標準労働者の要求基準については、高卒直入者の所定内賃金で30歳、35歳という2つの年齢ポイントを掲げており、「全単組が到達すべき水準」である【到達基準】では30歳を27万円、35歳31万円、「到達基準に達している単組が目標とすべき水準」である【目標水準】では30歳を29万円、35歳33万円と設定した。これらの設定額は昨年と同額となっている。

年齢別最低賃金基準については、「有期雇用労働者の無期転換や中途採用者の採用時賃金の最低規制として整備が求められており、労働組合の個別賃金水準の一つとして協定化に取り組む」とし、35歳まで、各単組の年齢ポイントの一人前労働者賃金水準の80%を原則とし、高卒初任給を勘案して決定するとともに、これらの考えに基づく「年齢別最低賃金水準」について、18歳:16万4,000円、25歳:16万7,500円、30歳:19万2,000円、35歳を21万6,000円と定めた。

平均要求基準は構造維持分含め1万500円以上

一方、平均賃上げ要求基準については、「連合方針の賃金引き上げ目安を踏まえ、未組織労働者も含めた春闘相場の波及をめざし、平均賃上げ要求基準をJAMの賃金構造維持分平均4,500円に6,000円を加え、1万500円以上とする」とした。

企業内最低賃金協定については、18歳以上企業内最低賃金協定を締結していない単組では協定締結に取り組み、年齢別協定を締結していない単組では標準労働者(一人前労働者)の賃金カーブを基にした年齢別最低賃金協定を締結するとしている。さらに、有期・短時間・契約等労働者も対象とする全従業員の協定締結を目指す。

一時金要求は例年どおり、「① 年間5カ月基準または半期2.5カ月基準の要求とする ② 最低到達基準として、年間4カ月または半期2カ月」としている。

「価値を認めあう社会へ」の取り組みマニュアルを作成

このほかの取り組みでは、高年齢者雇用やパート・有期雇用労働者の処遇引き上げなどを掲げた。たま、企業間取引の適正化をめざす「価値を認めあう社会へ」の実現に向けた取り組みでは、単組や会社が自ら取引条件を点検したり、対応案を参考にできる「対応マニュアル」を本部が作成。マニュアルを活用して、産別全体での取り組みをさらに強化する。

中央委員会ではこのほか、第25回参議院議員選挙中間総括や一般活動報告を確認した。一般活動報告では、2019年3月に結成した「JAMゼネラルユニオン」について、2019年12月現在で18団体・6個人の406人が加盟していることが報告された。