2%程度の賃上げを意識して『年齢別ポイント基準』への到達を/JEC連合闘争方針

2020年1月22日 調査部

[労使]

化学・エネルギー関連産業の労組でつくるJEC連合(約11万8,000人、酒向清会長)は1月16日、都内で中央委員会を開き、2020春季生活闘争方針を決めた。闘争方針は、「賃金カーブの歪みや加盟組合が重点的に取り組むべき項目を含む『賃金引き上げ』に向け、連合方針である2%程度を意識したうえで、『賃金水準の追及』にこだわる」としたうえで、昨春闘からスタートさせた基本給の「年齢別ポイント基準」への到達に向けた取り組みを進める考えを強調している。

「賃金の絶対水準の追求にこだわる方針を実行し成果に結びつける」(酒向会長)

冒頭、酒向会長はあいさつで、「2019春季生活闘争では、賃金のミニマム基準、年齢別到達基準による『賃金の絶対水準の追求』にこだわる方針のもと、賃金の引き上げでは要求した組合の63.2%が賃金改善を獲得、改善額の加重平均は1,424円と昨年を若干下回る結果となった」などと昨年の春闘を振り返ったうえで、2020春闘も賃金水準重視の取り組みを追求する姿勢を強調。「すべての加盟組合が共闘の精神をもとに実行し、成果に結びつけていこう」などと訴えた。

「年齢別ポイント基準」の到達に向けた賃上げを

闘争方針は賃金引き上げ要求について、「賃金カーブの歪みや加盟組合が重点的に取り組むべき項目を含む『賃金引き上げ』(いわゆるベースアップの取り組み)に向け、連合方針である2%程度を意識した」取り組みを進める。

JEC連合は2019春闘で、25~55歳までの5歳刻みでの基本給の「年齢別ポイント基準」を確認し、その到達に向けた賃金引き上げに取り組む方針を示した。具体的な基本給額は、25歳:21万円、30歳:24万円、35歳:27万円、40歳:30万円、45歳:33万円、50歳:36万円、55歳:38万円――。その取り組みの2年目となる今春闘では、「加盟組合だけでなく、関係会社ならびにグループ会社の点検を含む各社がポイント基準到達となるよう、あらゆる形での賃金引き上げ要求を検討し取り組む」と明記。また、数年かけてこの基準を目指す組合は、「必ず達成目標の年限を交渉において明確化し、その実現に向けて取り組む」としている。

すべての働く者の時給「ミニマム900円」を設定

そのうえで、すべての働く者の時給を「ミニマム900円」とし、さらにそれを上回る地域別最低賃金・業種別特定最低賃金を勘案して「時給1,100円以上」を目指す。なお、JEC連合の説明によると、900円は連合リビングウエィジの最低額から取ったという。

一方、定期昇給制度がない組合は、賃金引き上げ6,000円に定期昇給相当分5,000円を加えた、合計1万1,000円を要求。雇用問題を抱える組合は、経営再建に向けた労使協議を最優先することとし、連合リビングウェイジ・標準生計費などを交渉材料に、現行賃金カーブの維持ならびに生活保障を軸に要求する。

60歳以降の労働条件向上の議論も

また、方針は60歳以降の労働条件向上に向けて、「加盟組合が計画的な取り組みとなるような前向きな議論」の展開を要請。まず、60歳以降の生活維持確保の観点から、定年年齢を含む生活設計と企業の社会的姿勢を問うとともに、「2020闘争にて60歳以降の従業員の賃金引き上げに取り組む」と提起。さらに、再雇用者等の組織化(準組織化)や60歳以降の正社員化を目指した取り組みも模索する。

定年退職金は、ミニマム基準を1,200万円、平均支払総額水準を2,100万円として取り組むほか、2020年4月の法改正によって義務づけられる「同一労働同一賃金」の均等・均衡待遇の点検整備の観点から、「再雇用者を含むすべての働く者の手当や諸制度を点検したうえで、不合理な条件となっている点の改善を強く促す」考えも示している。

全組合が初任給や手当、一時金、時短を点検・検討

方針は、今次闘争で各加盟組合がそれぞれ点検・検討すべき取り組みとして、 ① 初任給 ② 諸手当 ③ 一時金 ④ 労働時間短縮――などについても列記している。

初任給は、各社の人事賃金制度における基準が、 ① 高校(18歳):17万円 ② 大学(22歳):21万円 ③ 修士(24歳):23万円――になるよう点検する。

諸手当は、特殊勤務手当や特殊作業手当などの労働の対価としての手当について、「職種や職場の声を十分反映し労働の対価に見合った制度になるよう再点検も含め取り組む」とともに、住宅手当や家族手当などの生活形成のための手当についても、「各企業の労使が手当としてどのような考えを持っているのかの方向性を確認・検討したうえで維持・向上に取り組む」。

一時金は、「年収水準に大きく影響を与える」観点から、生活保障と年収水準の底上げを目的に、ミニマム基準を年間4カ月に設定。一時金の固定部分を持つ加盟組合は、固定部分を4カ月以上に引き上げることを目指す。業績連動型一時金制度を導入している企業では、「同業他社ならびに内部留保や地域間格差等、充分比較検討したうえで、制度が適正な設定になっているか検証する」。

生産性向上で創出した原資の還元を

所定労働時間と年間総実労働時間の時間短縮の取り組みについては、目指す姿を「年間所定内労働時間1,800時間(月150時間×12カ月)の実現」とし、この目標を計画的に実現できるよう、方向性を検討・協議・要求する。また、年間総実労働時間が2,000時間を超える組合は、「早急な対応が必要」との見解を企業に示したうえで、「罰則付き時間外労働の上限規制」の観点からも、年間総実労働時間の削減に取り組む。

長時間の所定外労働が常態化しないように36協定の点検を行うとともに、適正な労働時間管理が行われているかも確認。みなし労働時間制を導入する事業所では、事業場外労働および裁量労働制の適正運用に向けた点検に取り組む。

時間外労働の割増率の引き上げも要求。企業規模にかかわらず、すべての組合で、 ① 1カ月45時間未満の時間外割増率35% ② 特別条項付き協定の締結を前提に45時間超の時間外割増率50% ③ 深夜および休日労働の割増率50%――の実現に努める。

年次有給休暇に関しても、年間の平均取得日数が10日未満の組合は是正に向けて取り組み、「取得日数5日未満の組合員をなくすよう必ず確認する」。

このほか、時間外労働の削減や所定内労働の効率運用等の働き方の見直しによって創出される、生産性向上分の原資についても言及。「労使で深く議論し、働く者に必ず還元されることを確認する」ことを強調している。

要求書は原則、2月28日までに提出。連合・共闘連絡会議の方針に基づき、3月第2週(3月9日~13日)を解決に向けた第1先行組合回答ゾーンとし、3月11日を集中回答日とする。これに続く組合は3月16日~20日を第2回答ゾーンとし、遅くとも4月内での決着を目指す。