結成10周年に向け組織・運動を改革/UAゼンセンの定期大会

2019年9月13日 調査部

[労使]

UAゼンセン(松浦昭彦会長、176万7,000人)は10、11の両日、愛知県名古屋市で定期大会を開催し、2年間の運動期の後半となる2020年度の活動計画を確認した。「UAゼンセン改革2.0(仮称)」と称して進める組織・運動改革の検討テーマとして、賃金闘争のあり方や中小労組との接点のあり方などを掲げ、結成10周年となる2022年に向けて検討を進める。

200万組織を展望し、9本のテーマを検討

UAゼンセンは2016年に、運動の道標となる「2025中期ビジョン」を確立。① 一人ひとりが希望する働き方を選択でき、能力を発揮し、十分な生活を営める雇用をつくる ② 持続可能で魅力ある産業をつくる ③ 一人ひとりが、心豊かに生きていくために安心を築く ④ 人のつながりや助け合うことを基盤に、持続可能で安心できる地域社会をつくる――という4つの挑戦を実行すると定めた。

2020年度活動では、この「4つの挑戦」に向けて運動方針で掲げた重点運動方針に継続して取り組むとともに、「UAゼンセン改革2.0(仮称)」と称する結成10周年(2022年)と200万人組織の実現を展望した組織・運動改革の検討をさらに進める。

「UAゼンセン改革2.0(仮称)」では、この秋に検討するテーマについて、▽「大会のあり方について」の検討と答申▽政策実現力の向上に向けた「組織内・準組織内議員ネットワーク」の構築▽「賃金闘争のあり方」についての検討▽中小労組の活動とUAゼンセン運動との「接点のあり方」▽組織全体のマネジメント、組織機構の検討――などの9本に絞り込んだ。

「賃金闘争のあり方」についての検討では、「労働条件維持向上に向けて、賃金闘争がより効果を発揮できるよう、要求・交渉の考え方や共闘体制などの改善を検討する」とした。中小労組との接点については、中小労組役員100人にインタビューを実施した結果、「組織が大きくなるにつれてUAゼンセンが遠い存在となってきた」などの意見も見られたこともあり、「今後は、UAゼンセン諸活動と中小労組のつながり、いわゆる『接点』の機会をどのようにつくっていくかについての事例研究・共有をはかっていく」とした。

松浦会長はあいさつで、「組織拡大を積極的に展開する一方で、多様性を活かし総合力を発揮するためには、加盟組合の組織強化にも応分の注力を行う必要がある。そのためにも、こうした多様性ある加盟組合や組合員にとって、UAゼンセン運動がさらに魅力あるものとなっていかねばならない」と述べ、現場の加盟組合員からの積極的な意見の提出を要望した。

300人未満が300人を上回る賃上げ額を要求

この1年間の活動報告では、2019労働条件闘争のまとめを盛り込んだ。今次闘争では、賃金については前年同様、「賃金体系維持分に加え、2%基準で賃金を引き上げる」ことを要求内容とした。

闘争体制をみると、2019賃金闘争に参加した組合の割合は全交渉単位の81%で前年(82%)並みだった。要求状況をみると、正社員組合員については、7月末時点での要求額(ベアなども含む)の単純平均は8,373円(3.48%)で、体系維持分が明確な422組合の「賃金引き上げ分」(ベアなど)は3,814円(1.44%)。前年同時期と比較すると、要求額は99円上回り、「賃金引き上げ分」は99円下回った。規模別に、体系維持分が明確な組合の「賃金引き上げ分」をみると、300人未満が3,933円(1.55%)、300人以上が3,696円(1.34%)となり、額・率ともに300人未満が300人以上を上回る要求状況となっている。

300人未満の半数以上が前年以上の妥結額

妥結状況をみると、7月末時点で妥結した1,500組合の妥結額(ベアなども含む)の単純平均は4,548円(1.83%)で、前年と比較できる1,422組合でみると前年を72円下回った。加重平均では5,746円(2.03%)で前年を170円下回っている。賃金体系維持分が明確な410組合の「賃金引き上げ分」は930円(0.35%)で、加重平均では1,305円(0.45%)となっている。賃金引き上げ率の分布をみると、「昨年と比べ、賃金引き上げが0%となった組合が大幅に増えている」という。

規模別の妥結結果をみると、300人未満の妥結額の単純平均は4,136円(1.75%)で、300人以上は5,570円(2.00%)となっている。前年と比較できる300人未満の組合では、妥結額の単純平均は37円減となったものの、半数以上(57.1%)の組合では前年以上の額で妥結した。

65%の組合が正社員以上の要求を行う

一方、短時間組合員(パートタイマー)の要求・妥結状況をみると、短時間組合員の賃上げ要求を行ったのは400組合(69.1%)で、前年(73.1%)を下回った。要求水準をみると、単純平均は時給で39.3円(4.06%)、加重平均は38.6円(3.97%)で、ともに前年を上回った。正社員と要求の引き上げ率を比較できる373組合でみると、65%の組合が正社員以上の要求を行った。

妥結状況をみると、妥結組合数は360組合と前年(376組合)を下回ったものの、妥結額の単純平均は22.6円(2.39%)、加重平均は24.4円(2.55%)となっており、単純・加重ともに前年を上回った。

賃金闘争以外の取り組みをみると、労働時間は、22組合で短縮が進んだ。年間所定労働時間は平均で19.8時間の短縮、年間休日数は平均1.8日の増となった。インターバル規制は、16組合で制度導入を果たし、2組合が制度見直しで合意した。

均等・均衡処遇に絡む手当関連の見直しでは、通勤手当の見直しを15組合が引き出した。ひとり親の処遇改善の取り組みとして掲げた「短時間組合員への家族手当の適用」では、7組合が改善を果たした。

職場のハラスメント対策では、34組合が改善を獲得し、悪質クレーム対策では13組合が改善の回答を受けた。

「実質賃金の向上を確保したとはいえない」と総括

来季闘争への課題についてまとめは、要求根拠について、「2018年度の物価上昇率0.7%(総合)以上のベースアップを勝ち取った組合は少なく、実質賃金の維持向上が果たせたとはいえない。2014闘争から2019闘争までの6年間を通しても、全体として実質賃金の向上を確保したとはいえない」などとし、「2019闘争では、生産性と物価の過去からのトレンド、予測などを踏まえて要求根拠を論議したが、2020闘争に向け引き続き、より納得性の高い要求根拠の構築を進める必要がある」などと記述した。

大会には政党からの来賓として国民民主党の玉木雄一郎代表が出席した。国民民主党と立憲民主党が衆参両議院での統一会派の結成に合意したことについて松浦会長は、「野党特にかつて民主党であった勢力が連携・協力して対峙することが必要なことは理解している。労働政策などいくつかの政策分野については両党に大きな差異がないことも承知している。しかしながら、国民民主党としての独自政策やスタンスをかなぐりすてて会派を結成することになるなら、私たちはこれを支持することはできない。国民民主党は連合の政策に最も近い政党だ。自信を持って、『この程度の譲歩ができないなら、会派結成も考え直す』くらいの気概で今後の政党間協議を進めてほしい」と注文を付けた。

なお、先の参議院選挙では、組織内候補だった田村まみ氏(国民民主党)は、連合候補のなかでトップの得票を獲得して当選した。