個別要求組合数の大幅増などを評価/自動車総連の定期大会

2019年9月11日 調査部

[労使]

自動車総連(髙倉明会長、78万1,000人)は5、6の両日、都内で定期大会を開催し、向こう2年間の新運動方針を決定するとともに、今春の賃上げ交渉の最終総括である「2019年総合生活改善の取り組み総括」を確認した。総括は、個別ポイント要求した単組数が大幅に増えたことなどから、「取り組みの思いは一定程度果たし得た」などと評価した。

個別要求単組は694単組で昨年に比べ200弱増加

今春の賃上げ交渉では、自動車総連は、すべての単組が自ら設定する「目指す賃金の実現」に向けて賃金引き上げに取り組むとして、方針では個別銘柄での絶対水準要求を前面に掲げた。個別銘柄としては、従来の「中堅技能職」(35歳相当の技能職)に「若手技能職」(30歳相当の技能職)を新たに加え、2点の要求ポイントとした。平均賃金要求では、産別としての要求基準額を示さず、各単組が自らの賃金課題に基づいて設定することとし、結果的に大手メーカーの組合は3,000円以上を要求内容とするところが多かった。

回答状況の最終集計(9月5日現在)によると、個別賃金要求では、集計した1,089単組のうち、694単組が要求した。ポイント別に要求単組数をみると、「若手技能職」が368単組、「中堅技能職」が656単組となっている。2018年は集計単組数が1,095単組で、要求単組数は501単組だったことから、個別賃金で要求した単組が200弱増加したことになる。

個別回答引き出し単組数は若手銘柄が70、中堅銘柄が226

回答引き出し単組数は287単組で、「若手技能職」で回答を引き出したのは70単組。回答額の平均は25万1,339円となっている。回答額を業種別にみると、大手メーカー単組を指す「メーカー」が29万452円、「車体・部品」が25万1,055円、「販売」が24万6,629円、「輸送」が27万9,200円、一般が28万748円。

「中堅技能職」で回答を引き出したのは226単組で、回答額の平均は29万4,256円となっている。業種別にみると、「メーカー」が34万7,777円、「車体・部品」が29万2,393円、「販売」が29万3,533円、「輸送」が31万6,200円、「一般」が28万2,423円。

販売の賃金改善額がメーカーを上回る

平均賃金要求では、平均要求額は「賃金構造維持分+賃金改善分」では7,650円で、改善分だけでみると3,759円となっている。回答状況をみると、改善分を獲得した単組数は835単組(76.7%)で、平均獲得額は「賃金構造維持分+賃金改善分」では4,890円で、改善分だけでみると1,374円だった。改善分の獲得額は昨年(1,479円)を若干下回った。

改善分の平均回答額を業種別にみると、「メーカー」が1,562円(13単組)、「車体・部品」が1,011円(306単組)、「販売」が1,609円(443単組)、「輸送」が1,142円(19単組)、「一般」が1,718円(54単組)となり、「販売」が「メーカー」を上回った。

組合規模別にみると、「3,000人以上」が1,333円、「1,000~2,999人」が1,038円、「500~999人」が1,325円、「300~499人」が1,250円、「300人未満」が1,453円で、昨年に引き続き「300人未満」の賃金改善分が最も高い額となった。

企業内最賃協定率は76.7%に

賃金改善分の獲得額の分布をみると、4,000円以上獲得した単組の割合が3.7%で昨年(2.2%)よりも増加。3,500円~3,999円獲得した単組割合は1.2%で昨年(1.1%)から微増となった。一方、1~499円(11.3%)、500~999円(21.6%)の割合は昨年よりも高くなっている。企業内最低賃金協定の取り組みをみると、2019年に新規締結した単組数は17で、これにより、協定締結単組数は868単組、締結率は76.7%となった。平均締結額は16万779円で、自動車総連基準額(16万円以上)を達成している単組数は508となった。

なお、年間一時金の平均獲得月数は4.49カ月(954単組)だった。

今年の取り組みを深化させて来年に向けて議論

大会で確認された総合生活改善の取り組み総括は、取り組み全般について「中小単組の地力向上、全体の底上げ・格差是正の更なる前進など、取り組みの思いは一定程度果たし得た」と評価しつつ、来年以降に向けて、「絶対額を重視した取り組みをはじめとする本年の取り組みをより深化させていくことを基調に、具体的論議を進める」とした。

個別ポイント賃金要求については、要求単組数は「前年を大きく上回る」(総括)状況となったとする一方、「より多くの単組で要求・回答引き出しが行われるよう加盟単組や経営側への理解促進、労連による中小サポートが必要」とした。

来年に向け髙倉会長はあいさつで、「世界経済の低迷や円高基調に伴う企業業績の悪化、消費税引き上げの影響などを加味した論議がスタートするが、これまでの取り組みの成果と課題を踏まえ、前回から取り組んだ『絶対額を重視した取り組み』を、より力強いものとすることで、中小労組の地力向上および働き方を含めた自動車総連全体の底上げ・格差是正の更なる前進が図れる取り組みにしていきたい」と述べた。

結成50周年に向け「あり方委員会」を設置

運動方針では、取り組みの方向性を、 ① 将来にわたって持続可能な魅力ある自動車産業の実現 ② 安心して活き活きと働き、生活できる職場と社会の実現 ③ 役割発揮に向けた産別機能の強化と組織の基盤づくり――の3つに設定。「安心して活き活きと働き、生活できる職場と社会の実現」に向けた具体的な活動内容としては、重大災害防止などの安全衛生の取り組み強化や60歳以降の働き方に関する取り組み、絶対額を重視した賃上げの取り組みなどを掲げた。

「役割発揮に向けた産別機能の強化と組織の基盤づくり」に向けては、2022年に結成50周年を控えることもあり、今後の自動車総連運動のあり方を検討する「あり方委員会」の設置を提起。自動車産業の将来や総連の果たすべき役割について論議・検討し、2021年の第50回大会に答申するとした。

髙倉会長は、「今一度、(連合や金属労協、産別)それぞれの組織を結成し集結した時の原点に立ち返って、守っていかなければならないことと、変えていくこととを明確に峻別し、今後の運動を再構築していかなければならない」とし、「それぞれの組織が、同じことをやっても非効率であり意味がないので、それぞれの組織の役割と責任を今一度明確にして、連合における自動車総連の役割も踏まえながら、相乗効果が高まる効率的・効果的な運動が展開できるよう、みんなで知恵を出し合いたい」と話した。

大会では役員改選を行い、髙倉会長(日産労連)と金子晃浩事務局長(全トヨタ労連)は再任された。