「組織拡大新4カ年計画」の最終年の取り組みを強化/全労連評議員会

2019年8月2日 調査部

[労使]

全労連(小田川義和議長、約76万4,000人)は7月30、31の両日、都内で第58回評議員会を開催し、2018年の定期大会で決めた向こう2年間の運動方針の補強を決めた。補強方針は、「組織拡大新4カ年計画」(2016~2019年)の最終計画年の取り組みの強化、2020年に全国一律最低賃金制度の創設を目指す「全国最賃アクションプラン」の具体化、「働き方改革関連法」の規制緩和の見直しなどを柱としている。

組織強化・拡大の取り組みを最重点課題に

補強方針では、組織強化・拡大の取り組みを最重点課題と位置づけ、2020年の定期大会を増勢で迎えるため、「組織拡大新4カ年計画」の最終年の取り組みに総力をあげて取り組むことを求めている。

「新4カ年計画」では、「150万全労連」の早期達成に向け、「総がかりによる新規加入促進」と「組織内の拡大」を取り組みの柱に掲げている。

補強方針のなかでは、「総がかりによる新規加入促進」については、組織拡大のための「総がかり推進委員」の年間1,000人の登録を目指す。また、「組織内の拡大」については、職場で多数派を維持・形成するとともに、非正規労働者の100%組織化を目指して運動を進める。

そのほか、① 全労連運動の世代交代を図るため、次世代育成とともに、機関会議や役員への女性参加、② 地域労連(約470カ所)の組織・運動の強化、③ 労働相談を組織化につなげるため「全国労働相談員・オルグ養成交流集会」の年内開催――なども盛り込んだ。

「組織減勢に歯止めを打つ議論を」(小田川議長)

あいさつした小田川議長は、「残念ながら、この1年でも、連続した組織人員の減少に歯止めを打つことができていない」と指摘。その一方で、構成組織が非正規雇用労働者や関連する職場の労働者への組合加入の働きかけ、労働相談を通じた組織化の取り組み等で一定の成果をあげていることなどにも触れながら、「実人員の純増に結びついていないのはなぜなのか。組織減に歯止めを打つ議論を、この評議員会でも大いに深めあっていくことが必要だ」と強く呼びかけた。

全国一律と特定最賃の二本立てで、1,500円を求める

一方、全労連は、2020年の全国一律最低賃金制度の創設に向け、「全国最賃アクションプラン」(2016~2019年)を進めてきた。

補強方針では、来年の通常国会における最低賃金法の改正を目指し、10万人学習運動、法改正署名、自治体決議、中小企業経営者との合意づくり、国会議員への要請を強化していき、超党派の国会議員による議連の設立で法案提出を目指す具体的な道筋を示している。

法案成立後は、5年程度の経過措置を設け、段階的に地方最低賃金制度を廃止して、最終的に全国一律最低賃金と特定最低賃金の二本立てを想定している。全国一律最低賃金の時間額については、全労連が実施した「最低生計費試算調査」の結果をもとに、都市部でも地方でも月額23~24万円、時給に換算すると1,500~1,600円が必要だとして、時間額1,500円を求めている。

そのうえで、最賃引き上げに伴う中小企業支援策に関しては、① 直接的な資金支援、② 使いやすい融資制度、③ 社会保険料と税の負担軽減、④ 下請け単価の切り下げ規制などの公正取引ルールの確立、⑤ 実効性のある公契約条例の確立、⑥ 地域における雇用や仕事の確保――などを列記している。

「8時間働けば人間らしく暮らせる社会」の実現を

そのほか、補強方針では、「8時間働けば人間らしく暮らせる社会」を実現するため、「働き方改革関連法」の規制緩和の見直しなど、労働法制度の改革の強化を要求。具体的な取り組みとして、高度プロフェッショナル制度の廃止、残業上限規制の引き下げと適用猶予・除外の廃止、裁量労働制の拡大反対と規制強化、解雇無効時の金銭解決制度の反対、雇用類似の働き方の保護法制の実現、兼業・副業における「労働時間の通算制度」の割増賃金の適用除外の反対などを盛り込んだ。

このうち、労働時間関連では、「時間外労働の上限規制と36協定についての調査」を傘下の組合に7月から実施している。8月末には、産別と地方組織で集計を開始。10月に結果をとりまとめ、今後の労働法制度の改革の運動につなげる考えだ。

また、正規と非正規の不合理な格差是正については、来年4月のパート・有期法の施行を見据え、「非正規差別NG」運動を、7月から6月まで展開するとしている。職場における不合理な格差を把握する「職場点検」を実施するとともに、不合理な格差がある場合、事業主に説明を求めるなど、要求実現を通じて、非正規の組織化につなげていく方針だ。

押しつけではない組織拡大の働きかけを

質疑・討論では、直前に行われた参議院選挙の野党統一候補の闘いぶりとともに、組織強化・拡大についての報告が目立った。

産別や地方組織からは、組織拡大に向けた具体的な取り組み事例が報告されるとともに、組織現勢については、「11年連続の増勢は達成できなかった」(日本医労連)、「3年連続増を目指しているが、人手不足もあり、若干の減少になりそう」(生協労連)などの減勢を伝える報告が出る一方、「新入職員など44人の組織拡大となり、今は勢いがある」(検数労連)との声もあがった。

総括答弁に立った野村幸裕事務局長は、組織拡大・強化については、「自ら運動を作って、自ら動いて、自ら組織拡大の働きかけをしていく。我々の押しつけではなく、自主的につくる。選択ができる。そういう労働組合をつくっていくことが重要」などと説明した。