80万組織への回復をめざす組織化討議案を提示/自治労の中央委員会

2019年6月5日 調査部

[労使]

地方自治体の職員などを主に組織する自治労(川本淳委員長、約78万5,000人)は5月29、30の両日、都内で中央委員会を開催し、当面の闘争方針を決定するとともに、今夏の定期大会で確立する新たな組織化計画の討議案を示した。討議案は、単組活動を活性化させることで、80万人組織への回復をめざすとしている。

組合員数が80万人を割り込む

2015年9月~2019年8月までの4年間の組織化計画である「第4次組織強化・拡大にむけた推進計画」では、① 次代の担い手育成 ② 新規採用者の組織化 ③ 非正規労働者10万人の組織化――を最重点課題として取り組んだ。しかし、現状をみると、自治労発表ベースの組合員数は2015年~17年の2年間で1万8,000人減少し、80万人を割り込んだ(自治労の2017年調査)。自治体単組の新規採用者加入率は66.2%で、未加入者は2年間で2万3,000人増加した。自治体正規職員でみた組織率は68.2%で、1994年から維持してきた7割を割り込む状況となっている。

低迷する新規採用者の加入率

こうした状況を踏まえ、総括は3つの最重点課題ごとに現状と課題を整理。「次代の担い手育成」では、単組の状況として、採用抑制の結果、管理職登用の若年化が進み、その影響で「経験が乏しい若年層が組合役員を担う状況」がみられると指摘。組合活動への消極的な姿勢など若手役員や若年層組合員の組合活動に対する認識ギャップなども課題としてあげた。

「新規採用者の組織化」では、県職(県庁の職員)の加入率が56.0%にとどまっており、県職の労組や政令市の労組など大規模単組では、組織の大きさから「声かけが十分に行えていない」ケースがあるとした。

「非正規労働者10万人の組織化」では、臨時・非常勤等職員に対して組合加入を呼びかけていない単組が少なからずあるなどと指摘。組織化が進まない理由として、「雇用形態の違いから臨時・非常勤等職員を『仲間』として受け入れることができていない」ことなどをあげた。

県本部や本部の単組へのサポートも強調

こうした第4次計画の総括をうけて、本部は2019年9月以降の計画である「第5次組織強化・拡大のための推進計画」の討議案を提示した。討議案は、単組役員が置かれた環境のもとで組織拡大を進めるためには「シンプルでわかりやすく、単組で具体的な行動に結びつく計画と目標を設定すること、日常の単組活動の強化と組織拡大を一体的に取り組むことが必要」との認識を示し、県本部や本部のサポートの強化の必要性も強調した。

組織拡大の目標について、「単組活動の活性化を通じて『4年間で80万人自治労の回復』をめざす」と宣言。今まで通りの取り組みでは実現は不可能だとして、2020年4月からスタートする会計年度任用職員制度(現行の臨時・非常勤等職員制度を改変)を見据え、「正規職員、非正規職員問わず、同じ職場で働くすべての者を対象に組織化に取り組むことが必要」だと強調した。

単組では組合員との対話を重視

具体的な取り組みとしては、① 組合員の参加と声を集める活動に集中 ② 単組活動の活性化を担う担い手の確保と育成 ③ 単組状況を把握する受信力の強化――の3つを目標として設定し、単組レベルでは、組合員との対話を重視して要求づくりや交渉を強化することや、職場委員会・分会活動の活性化などに取り組むとしている。また、若年層や女性組合員の参加と活動を単組全体で支援する。

県本部では、単組との信頼関係の強化を図り、地域ブロックでの単組間の情報共有や意見交換を図ることで単組課題を解決する。単組課題をテーマとした学習会なども開催するとしている。

本部では、単組に「見える」自治労運動の推進に取り組むとし、オルグ強化のほか、人材育成プログラムの策定などを掲げた。

自治労全体で80万人を回復する取り組みに関しては、新規採用者対策として、非正規職員も含めて最低でも70%加入をめざすとし、70%が難しい場合には現状の加入率より5%アップをめざすとした。

県本部に組織強化・拡大チームを設置

体制面では、県本部レベルでも「組織強化・拡大行動計画」を策定。重点ターゲットに臨時・非常勤等職員、病院職場を明確に位置づける。また、「組織強化・拡大チーム(仮称)」を設置して、単組との連携を図るなどとしている。

あいさつした川本委員長は「単組活動を改めて活性化させることを通じて『80万自治労』の回復をめざしていきたい」とし、「労働組合にとって『数は力』、その前提には単組が活動していることが必要だ。春闘で要求書を出せないなどの単組が増えている状況において、大規模単組や本庁職場を中心に組合離れ・組織の弱体化が進んでいる。本部は県本部オルグにより、県本部は単組オルグを通じて、単組・県本部・本部間での課題を共有することの重要性を再認識し、取り組みを強化していくことが必要だ」と強調。さらに、「組合員が理解し、組合に結集することが組織の強化につながる、この原点に戻って活動しなければならない」と呼びかけた。

春闘期での要求割合は昨年から低下

中央委員会ではこのほか、今夏の定期大会までの当面の闘争方針を決めた。2019人事院勧告期の闘争(人勧期闘争)の取り組みなどが柱となっている。

また、一般経過報告では、2019自治労春闘中間総括もあわせて確認した。自治労では「1年のたたかいのスタートは、春闘から」として、自治体単組に対して春闘期での要求提出を要請しているが、2019春闘で要求を提出した自治体単組の割合は63%で、2018春闘(69%)を下回った。労使交渉実施割合(43%)も2018春闘(47%)から低下した。

働き方改革関連では、労働時間の上限規制について、人事院規則の原則である1月45時間・1年間360時間を上限として条例・規則化を要求した単組は730単組(44%)。36協定または36協定に準ずる書面協定の締結、改定を要求した単組は733単組(29%)だった。